行平あい佳インタビュー「人ってこうやって家族になっていくんだなと思いました」

特集・インタビュー
2021年05月15日

◆左半身が動かなくなったスギちゃんのもどかしさや、サキが献身的に介護をすればするほどつらくなる気持ちも分かる気がしました。サキの献身的な態度がスギちゃんにとっては押しつけがましい行為になりかねないなと。

サキの表現はとても難しいと思いました。それこそ一歩間違えたら、サキの行動がおしつけがましくなるなと思ったんです。介護の経験がない私が「介護ってこういうものだよね」という感覚で演じたら、あまりにも上っ面で押しつけがましく、それが美徳であるように見えてしまったら嫌だなと思っていたので、そのさじ加減や介護の現場でどういうことが行われているか、きちんと表現しなければと思いました。

◆介護の表現をする上でどんな準備をされたのですか?

スタッフの中に介護の経験のある女性がいて、逐一教えてもらえる環境だったことがとても助かりました。私がいくら下調べしても、経験がある方のお話には絶対にかなわないので。スギちゃんのように後発的に動けない体になってしまったら、介護される側によりつらく当たってしまうだろうなとも思いました。スギちゃんがサキに甘えて、サキが甘やかしている方向に見せることもできたと思うんです。でもそれは絶対に嫌でした。2人が共依存に見えてしまったら成り立たないお話だと思ったので。

◆自分より体が大きい男性を介護するシーンは物理的にも大変だったのではないですか?

どこに手を入れて、どこを持つかを教えてもらいました。気を使いすぎてしまうと、一緒に連れ添っている感じも全くなくなるので、そこが難しかったですね。最初は痛いかなって考えたりしましたけど、「いくぞ!」と決めて思い切りやらないといけないなと思いました。荻田さんも「グッてやっていいから。もっと普通に持ち上げて大丈夫。痛くないから」と言ってくださったので、恐る恐るやっていたのは最初だけ。現場で教えていただきながらできたので、本当に助かりました。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4