瀬戸康史「不安なことやつらいことも多いけれど、その分小さな幸せに気づける」『男コピーライター、育休をとる。』

特集・インタビュー
2021年07月09日

7月9日(金)配信・放送開始のドラマ『男コピーライター、育休をとる。』(WOWOWプライム/WOWOWオンデマンド)で、男性の取得率がいまだ7%に止まっているといわれる“育休”を取得する会社員を演じる瀬戸康史さんにインタビュー。瀬戸さんが撮影を通して知った、育休のリアルとは?

◆本作のオファーを受けた時の心境はいかがでしたか?

台本を読んで、新感覚な作品だなと思いました。1話約15分という尺の見やすさもあり、やってみたら楽しいだろうなと思う部分がたくさんあったので受けました。あとは自分の年齢的に33歳という役者として育児をする父親役も相応な年齢になり、勉強したいという気持ちもありました。

◆瀬戸さん演じる魚返洋介は、広告会社に勤める実力派のコピーライターという役どころ。どのようなことを意識しながら演じましたか?

コピーライターという職業についてはあんまり関係なかったです。それよりも人間性というか、魚返はダメな部分もあるけれど(笑)、本当に素直な人なので。子供のような新鮮なリアクションをしようと意識していました。ダメキャラを演じるのも楽しかったですよ。僕自身、面倒くさがりだしダメなところもあるので、魚返も憎めないキャラクターにしたいなと思いました。共感してくれる人も多いのではないでしょうか。

◆監督から「こう演じてほしい」という要望はありましたか?

その都度ではありましたが、基本的には自由な感じでした。監督自身もやりたいプランはしっかりある方なんですが、役者陣をちゃんと見てくださっていて。動きに合わせて柔軟にカット割りを考えてくれたりして、愛を感じました。なので僕も監督の仕上げたいものに近づきたいなと思えたし、お互いを信用して楽しみながら作品作りができました。

◆共演者の方とのチームワークはいかがでしたか?

(魚返の妻・愛子を演じる)瀧内(公美)さんは壁を全然作らない方で、こちらが引く前に入ってきてくれるので、すぐに打ち解けられました。人間力がすごいんですよ。今回初めて共演したんですが、ずっと前から知っていたような感じで、本読みの時からテンポ感ができていましたね。ちょこちょこアドリブシーンもあったのですが、彼女のおかげで自然体にできました。(魚返の上司・浜崎を演じる)村上淳さんとも初共演でしたが、撮影前に会社の同僚役のみんなに「俺はこうするから〜」と話しかけに行って、演出をしてました。一回だけ、村上さんが間違えたのに僕のせいにされたことはありましたが…(笑)。

◆本作を演じる前と後で、育休・育児に対するイメージは変わりましたか?

演じる前は、育休に対しては幸せなイメージしかなかったんです。育休を取得している人は偉いし、夫婦仲も良くなるし、赤ちゃんと一緒にいる時間も増えてうれしいだろうなと。ですが、今回演じてみて、とにかく育児はつらい! と気づきました(笑)。大変なことはいっぱいあるんですけど、中でも「思いどおりにならない」っていうのが一番つらいことだと思いました。例えば赤ちゃんが泣いていても、「ミルクをあげれば必ず泣き止む」みたいなマニュアルはないじゃないですか。これは一人では相当大変だなと思いましたね。家族でも友達でも、誰か頼れる人に支えてもらわないと、身がもたないな…と。今回は監督含め、子育て真っ最中の方や経験者の方など、先生がいっぱいいたので、撮影中も分からないことはすぐに聞けて、やりやすかったんですけどね。疑似体験でこんなにつらいんだから、実際は相当(大変)だろうな、と感じました。でも、その知っていると知らないとでは大きな違いがあると思うので、今回、演じてよかったなと思います。

◆逆に、育児の楽しさは?

いや、本当に「つらい」が大部分を占めるんですよ(笑)。だからこそ「赤ちゃんが自分の抱っこで寝てくれた」とか「笑ってくれた」とか、そういう小さな幸せを、いつもより感じられるようになるのはいいところかなと思いました。

◆瀬戸さんは魚返を演じられて、あらためて仕事と育児のバランスはどのようにしたらよいと思いましたか?

なるべく効率よくいきたいですよねぇ。子供が生まれたら絶対にスケジュールどおりに動いてくれないことは、今回作品を通じて気づけると思うので。そうなると生活の中で子供が一番優先になると思います。本当にパートナーや両親との支え合いですかね。育児ってガッツだけでは無理で、助け合いながら頭を使わないといけないんだなと知りました。

◆撮影現場では実際に赤ちゃんも出演していましたが、どのように接していましたか?

以前、ドラマ『透明なゆりかご』で産婦人科の院長役を演じていたので、赤ちゃんと接することには多少慣れていたんです。赤ちゃんを取り上げるシーンもあって、最初はめちゃくちゃ怖かったんですが、産婦人科医の先生に「こっちがオドオドしてると赤ちゃんにも伝わる」と教わって。本作でもオドオドする演技はしつつも、中途半端にならないように心掛けていました。あと、赤ちゃんがいることで現場に一体感が生まれたのもよかったです。赤ちゃんって泣かないでってところで泣いたり、寝ていてほしいシーンでなかなか寝てくれなかったりするんですけど、それは当たり前なので。みんなで赤ちゃん待ちしながら、小声で「今、チャンス!」とか「やっと寝たから早く来て!」みたいに声を掛け合って。みんなで同じ方向を向いて作っている感じで楽しかったです。でも、いろんな赤ちゃんに出演してもらったんですけど、どの子もみんないいお芝居してましたよ(笑)。

◆他に、撮影で大変だったことはありますか?

撮影している途中で場面が急に飛んだり、カメラ目線になったり、普段あまりやらないような演出が多かったので、最初は切り替えが難しかったです。心の声のシーンも多かったので、その場では言ってないけど言ってる感じを出すのが難しかったりとか…。撮影3日目くらいで長回しのシーンがあったんですが、それも舞台っぽいというか、テレビではなかなかやらない演出で。僕と愛ちゃんが監督になって、モニターの中の「理想の育児スケジュール」みたいなものを見ているんだけど、現実は全然違って…みたいな、劇中劇のようなシーンなんですが。僕というよりも場を回すADさん役の石田剛太さんが、一人でたくさんの人とタイミングを合わせて演じないといけなくて、大変そうでした。言葉じゃ説明が難しいので、ぜひ本編を見てください(笑)。

◆ところで、物語の中で魚返は「コピーライターとして、映画などをたくさんインプットしたい」という不純(?)な動機で育休取得を決意しますが、もしも瀬戸さんご自身が今、長いお休みをもらえるとしたら、何をしたいですか?

自然が好きなので、どこか自然に触れられるところに行きたいですね。キャンプとかしてみたいです。キャンプ用品のお店に行って、いろいろグッズを見るのも好きなんですよ。見るだけじゃなくて買えよって話ですけど(笑)。でも、今はなかなかご時世的にも行けるような状況ではないので…。家の中で自然に触れられるように、たくさん植物を育てています。名前も分からないような植物が家にたくさんあるんですよ(笑)。

◆最後に、作品の見どころについて教えてください。

本作に出てくる人たちはみんな完璧ではなくて、特に魚返は全然完璧ではないんですが(笑)、だからこそ、見ている方にも共感していただけるシーンがたくさんあると思います。現在、育児をされている方はもちろん、そうじゃない方でも、少しずつ成長していく登場人物と自分を重ね合わせて、自分も頑張ろうって思っていただけるんじゃないかなと。コロナ禍で今まで当たり前だったことが当たり前ではなくなって、極端なことを言うと、次の日を当たり前に迎えられるだけで幸せだと感じるじゃないですか。育休も、それとちょっと似ているなと思ったんです。不安なことやつらいことも多いけれど、その分、足元にある小さな幸せに気づける。見ている人たちに、そんなプラスなエネルギーを与えられる作品になっているので、ぜひたくさんの方に見ていただきたいです。

PROFILE

瀬戸康史
●せと・こうじ…1988年5月18日生まれ。福岡県出身。A型。2005年デビュー。2017年に舞台「関数ドミノ」で文化庁芸術祭演劇部門新人賞を受賞。主な出演作にドラマ『透明なゆりかご』『私の家政夫ナギサさん』、映画「寝ても覚めても」「事故物件 恐い間取り」など。今後は、出演作に「劇場版 ルパンの娘」(2021年10月15日(金)公開)、主演舞台「彼女を笑う人がいても(仮題)」(2021年12月上演)がある。

作品情報

WOWOWオリジナルドラマ『男コピーライター、育休をとる。』
2021年7月9日(金)後1100スタート(全6話)

(STAFF&CAST)
原作:魚坂洋平
脚本:細川徹
監督:山口淳太
出演:瀬戸康史、瀧内公美、赤ペン瀧川、福地桃子、少路勇介、池田成志、村上淳ほか

(STORY)
同名のノンフィクションエッセーを映像化したハートフルコメディ。広告代理店に勤めるコピーライターの魚返洋介(瀬戸)は、妻・愛子(瀧内)に妊娠を告げられ、男性として社内でも未踏の領域となる6か月の育児休業取得を決意する。娘の誕生に感激するのもつかの間、保活、パパ友、育児分担など、次々と襲いかかってくる難題。不器用な苦闘を経て、育休を終えた魚返の前に広がっていた景色とは…。

●photo/金井尭子 text/井上明日香 hair&make/須賀元子(星野事務所) styling/小林洋治郎(yolken)衣装協力/VIKTOR&ROLF、BARNSTORMER

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