元宝塚・音月桂×真彩希帆インタビュー「現役時代だったらかなわなかった共演」『山里亮太の宝塚男子になってもいいですか?』

特集・インタビュー
2022年06月24日
『山里亮太の宝塚男子になってもいいですか?』に出演する真彩希帆、音月桂

6月25日、7月30日(土)放送の『山里亮太の宝塚男子になってもいいですか?』(BSスカパー!)にゲスト出演する宝塚歌劇団・元雪組トップスターの音月桂さん、元雪組トップ娘役の真彩希帆さんにインタビュー。宝塚の魅力や印象的だったエピソードなどを語っていただきました。

◆番組に出演した感想をお願いします。

音月:宝塚は「敷居が高い」「見に行くまで勇気いる」「どうせ、チケット取れないし…」とネガティブなイメージを持たれていると思うんです。でも、そういう方も一度観劇すると面白いくらいに宝塚という沼にハマるんじゃないでしょうか。山里(亮太)さんもおっしゃっていましたけど、きっかけは話のネタに「宝塚を見に行ったんだよね」でいいんです。宝塚を体感していただけたら、そこにはすごくすてきな世界が広がっているので、「舞台はちょっと」「生では…」という方は、まずはこの番組で私たちの人となり、舞台上とは違う彼女(真彩)の良さとかを知っていただいて、最終的には劇場に行ってもらえたらいいなって。

真彩:今の宝塚はいろいろな作品をやっているので、「面白そうだな」という公演内容があったら、A席、B席といった座席であればチケット代もお手頃で手に入りやすいと思うので、一歩勇気を出して来ていただけたら。男性の方でも、奥さんが宝塚好きだったらぜひ奥さんと一緒にとか、劇場へ行くきっかけになってくれたらいいですよね。

音月:この番組、楽しいから、皆さんのきっかけになってくれそう!

真彩:現役のジェンヌさんもOGさんも皆さん本当に個性豊かで、真っすぐに宝塚と向き合ってこられた魅力的な方ばかりなので、ぜひごひいきさんを見つけて楽しんでいただきたいですね。

◆番組内で男役あるある、娘役あるあるが出てきましたが、在団中にコンビだった相手役さんに当てはまったことなどありましたか?

音月:お稽古場で男役の服に合わせてスカートの色をそろえたり、役に合わせて髪形を変えていたと知って、娘役はすごいなって感心しました。自分で本番用のイヤリングや飾りを作ることもあって、きっとそれには指定もあるだろうし、男役よりも圧倒的にやることが多いと思うんですよ。相手役にも「合わせて」って呼ばれたら、合わせないといけないだろうし。当時は私もいっぱいいっぱいになっていて、(舞羽)美海にあまり優しい言葉をかけられていなかったんじゃないかなと反省しました…。そうやって一番そばにいて、支えてくれるのが相手役で、そういった支えがあったからこそ、今の私があるんだなって思うと、あらためて美海に感謝の連絡をしなきゃいけないですね。

真彩:胸が痛い…♡

音月:どうしよう、既読無視されたら(笑)。

真彩:しないですよ!

音月:「いきなりどうした」ってなるかもしれない(笑)。当時の自分に「もうちょっと優しくしてあげて!」「自分のことだけじゃなく、相手役のことも見てあげて」って言ってあげたくなりました。

真彩:私は男役さんあるあるにびっくりするというよりは、「そうですよね!!」という感じです! 当時、穴が開くほど相手役さんのことを見て、「何この子!?」って思われたこともあったかもしれないのですが(笑)。ずっと一緒に舞台を作る相手役として、体調の変化であったり、調子を見ることで、“邪魔にならないように”というよりも、その中で自分がどうあったらいいのか、お役に立てるのかを常に考えていました。それは、何も無駄なことではないですし、ずっと一緒にいるからこそ見えてくるものがあって。ですが、一番はお客さまからどう見えているか。相手役さんのファンの方からお手紙を頂くことがあったのですが、「いいコンビだね」「相手役さんが一緒にいるとすごく温かい気持ちになるんです」というお言葉を頂けた時はすごくうれしかったです。退団してもトップコンビというものは切れるものではないというか。一緒にいろいろ懸命にその時を作り上げてきた仲間なので、すごく尊いなと思います。

◆もしもお2人がトップコンビを組むとしたら、どんな演目をやってみたいですか?

音月:どうする?

真彩:私はもし可能であったら、ひたすらに音月さん演じるお役に恋する役をやりたいです。

音月:どの役でも恋するじゃん!

真彩:私、意外と素直に恋するお役が少なかったので、ラブラブな感じの役をやってみたいです(笑)。ひたすら、男役・音月桂さんのそばにいて、「私はあなたが大好きです」と言いたいなと。番組の中でも言ったんですけど、音月さんの笑顔が本当に大好きなので、私も笑顔いっぱいで、ハッピーな感じの演目がいいですね。

◆ 音月さんはどんな演目をやりたいですか?

音月:真彩ちゃんの歌声、本当にすてきだから『ロミオとジュリエット』の「AIMER」(劇中歌)を一緒に歌ってみたいな。ジュリエットの「逝ってしまったのね…」という歌を耳元で聞けたら私もそのまま穏やかに逝けそうな気がする(笑)。私は青年的な笑顔いっぱいの役が多かったんです。だからだいもん(望海風斗)と2人の作り出す大人の関係みたいなコンビって、私と美海のコンビとは全然カラーが違うから、そういうコンビもいいなーって。

真彩:では!そのようにいきましょう!大人の駆け引きをする感じにして…。私、気合を入れて美しく体も鍛えます!

音月:妄想が広がっちゃうね(笑)。

真彩:音月さんのために美しいドレスもしっかり着こなせるようになりたいと思いますし、娘役のおよよよ芸も気合を入れてやりますよ!

音月:稽古場からキラキラしていそうだ(笑)。

◆宝塚を離れてから、宝塚にいてよかったなと思ったエピソードはありますか?

音月:培われたなと思うのは、舞台に対する姿勢、マナー。音楽学校の時に、上級生の方から教えてもらったことが舞台に対する思い、姿勢につながっていて、実際に宝塚の舞台を見ていると心地がいいんです。推しの方を見るのはもちろんなんですけど、全体で見た時にすごく気持ちのいい舞台だなと思うんです。この間雪組を観に行ってきたんですけど、卒業してから10年もたつと、一ファンとして「あ、すごい!宝塚の華やかなこの世界好き!」みたいになるんですよね。きっとファンの方もそうだと思いますし、劇場にいるスタッフの方にいたるまで、すごく温かい方ばかりなので、どっぷりつかって観てもらえたらいいですね。

真彩:宝塚でしか勉強できないことって、いろいろあると思うのですが、一番に思うのは同じメンバーで舞台に立った時に、そこで生まれる信頼関係や、自分という人がどういたらいいのか、周りを見る力を勉強できたことかなと。私は退団してから1年ちょっとしかたっていないのですが、どのカンパニーとご一緒しても、「気遣いと周りを見る力がすごいですね!」と言っていただくことがありがたいことに多いので、これは絶対的に宝塚で勉強させて頂いたことだなと。そして、今日あらためてこうして音月さんとお話させていただく機会を頂いて、宝塚に合格しジェンヌさんになったとことで宝塚にいた人同士でつながれるってすごいことだなと感じました。私は音月さんと舞台をご一緒したことはないけれども、思いなどをたくさん伝えることができて、それを受け止めてくださるその温かさは、タカラジェンヌのOGさんあるあるというか…ならではのことなんじゃないのかなって思います。

◆そんな魅力たっぷりの宝塚ですが、ファンの方が布教したくなる理由は何だと思いますか?

音月:私、実はファン歴が浅くて…。初めて宝塚の舞台を観たのは中学生の時だったんですが、その時ちょうど授業で落ち込むことがあったんです。でも、宝塚の舞台を観て帰る時にはすごく元気が出て、笑顔になって、「なんじゃ、この世界は」と驚いていました。その衝撃に、私は観るよりも舞台に立っていろんな人に元気になってもらったり、笑顔になってもらいたいと思ったんですよね。下級生から上級生にいたるまで、愛を持って命を削りつつ作品に取り組んでいて、特に宝塚はそういったエネルギーを受け取って帰ってもらえるような場所な気がします。それは私の原点でもありますし、これからの舞台でもずっと心掛けていきたいことで、観てくれる人が少しでも「来てよかった」「明日も頑張ろう!」と、そういうエールを送れるような環境っていうのが魅力なのかなと思います。

真彩:私も周りに宝塚が好きな子がいたかと言われると、全然いなかったですね。初めて宝塚の舞台を見に行ったのは、体調を崩されたお知り合いの方の代わりだったので…。

音月:何がきっかけになるか分からないね!

真彩:家族誰も宝塚を見たことがない状況での観劇で、私が宝塚を好きになったということで、両親がCDを買って何回も聞く機会を与えてくれたんです。今もし自分がファンだったら、「見に行こうよ!」って言って誘っていたかもしれないですけど、その当時の自分は、誰かと見に行くというよりは自分自身の中で「すてきだったな」と思い返すタイプでした。なので、山里さんみたいに発信するエネルギーがある方って本当にすごい!そこから見に行ってみようかなっていう方もいっぱいいるだろうし、実際に見てみたら紹介してくださった方よりもさらにファンになった!という方も多いと思うんです。それだけハマるエネルギーを宝塚は持っているので、「誰々さんすてきだったよね」とか「この作品見に行ってよかったよ」と、そのすごく大きくて、深いエネルギーがどんどん広がっていってほしいです。

◆長期間の舞台に立たれていたわけですが、コンディションをキープするために工夫されていたことはありますか?

真彩:私、お披露目公演の時に、今後歌えなくなるかどうか分からないぐらいまで喉を壊してしまったんですね。トップ娘役として長期間の公演で、自分のエネルギーをどれだけ出していいかが計算ができていなくて。お披露目公演で痛めてしまったっていうことが自分の中でものすごく後悔しましたし、なんて勉強不足なんだろうと。東西合わせて3か月、お稽古場合わせたら4か月半くらいをどうやってすごしたらキープできるか、全体を見たり、必要な筋肉をつけたり、ひたすらに自分の声帯と相談しながらいろいろと試しました。

◆一番効き目があったものは何だったんでしょうか?

真彩:やっぱり睡眠ですね。

音月:間違いないね。

真彩:全部筋肉なので、その回復にアミノ酸をとって、睡眠をとることが一番。トップ娘役の時はなかなか睡眠をとれなかったんですけど、それでも公演中は頑張って12時までに寝る、お風呂はシャワーじゃなくて、絶対湯船に浸かると決めていました。

◆音月さんはいかがでしょうか?

音月:実は私も喉はかなり酷使していて。それこそ、先ほどお話をした「エリザベート」の時に演じたルキーニで壊したんですけど、叫ぶのが一番くるんですよね。その時に初めて喉を傷めるという経験をしてからはトップになってからも声がかすれたり。小さい劇場の時に初めて舞台上に出たら一声も声が出なかったことがあって…、結構メンタルが大事なんですよね。声が出なくなった時に、「次、声が出なかったらどうしよう」「声がかすれたらどうしよう」と不安になると、声帯も固くなって本当に声が出なくなるので、一番は睡眠やリラックスすること、そして自分をストイックに追い込み過ぎないこと。リラックスさせたり、緩めるということをしていくうちに、よいバランスが分かって、自分でコントロールできるようになってきました。先日「陰陽師」という舞台で叫ぶことの多い役だったのですが、一回も喉を傷めなかったですし、舞台の上で叫んだり、大声を出したりすることに抵抗がなくなったので、本当にメンタルが大事なんだなと思いました。ここに怖い、やり過ぎかなという邪念が入ると、一発で出なくなりますからね…。病は気からって言うけれども、本当にそうだなと、そういう意味では宝塚は観に来ると免疫力アップすると思うので(笑)。一に笑顔、二に笑顔、三四がなくて、五は宝塚かなといつも思っています。

◆ちなみに、音月さんのリラックス方法はどんなことでしょう?

音月:コロナ禍で自転車を買ったので、少し時間が出来た時に、自転車に乗って、自然のマイナスイオンを感じたり。この間はドライブも楽しみました。空いている時になるべく自分を充電しています。あと甘いものが好きなので、おいしいもの食べたりして、自分にご褒美をあげてかなり甘やかしています(笑)。

◆宝塚の皆さんとファンの皆さんとの結びつきがすごくすてきだなと思うのですが、お2人のファンの方で印象的な方はいらっしゃいますか?

音月:今でこそないんですけど、客席降りをしてファンの方とハイタッチする機会があったんです。そうしたら、ハイタッチしたファンの方から、当時、私がつけていた香水をプレゼントしていただいたことがありました。私は身長が高い方ではないし、キザった男役というより中性的な役が多かったんです。だから、ショーの時はバリバリにキザりたいっていうのもあって、男役でいる10何年間はメンズの香水しかつけなかったんですよ。ある日、香水を変えて、みんなのところへハイタッチした時の出来事だったので、ハイタッチしたその瞬時に匂って分かったの!?と驚きましたね。私のファンの方っていうよりも、宝塚のファンの方だと思うんですがが「つけていた香水、消耗品だと思うんでどうぞ」といったお手紙と一緒に頂いて。以前つけていた香水は何かで言っていたかもしれないんですけど、新しく変えた香水で公言してなかったので…。

真彩:「音月さんはこの匂いか!」って匂いを頼りに、その香水にいきついたんですね!

音月:ハイタッチした時の手を洗いたくないっていうファン心理もあるんでしょうけど、それには感動しましたね。目や耳だけじゃなくて、嗅覚でも好きでいてくれている、五感を使って感じてくれているんだって。

◆真彩さんのファンの方には、どんな方がいらっしゃいますか?

真彩:コロナ禍になってファンの方と交流できる時間がすごく減ったんですよ。それこそ、客席降りもなくなりましたし、お手紙を差し入れしてくださることも減ってしまいました。その中で、公演が止まってしまった時に、劇団にお手紙をくださったり、私のファンクラブ宛てに、「会えない時間ができても離れることはないです。再開を待ってます」というものすごく温かい言葉をたくさんの方がくださって。自分たちが不安になっている時もファンの方は常に信じてくれていて、再開した時は誰よりも喜んでくれて、「お客様がいるから、ファンの方たちがいるから自分は舞台に立てているんだ」っていうことをあらためて感じました。私のお茶会に幼稚園生ぐらいのころから参加してくれて、今はもう小学生っていうファンの子がいるのですが、お茶会に来るたびにどんどん大きくなっているのを感じて。最初はお話もたどたどしかったのに、今や「ご自愛ください」って、お手紙に書けるようになっていて。

音月:かわいい♡

真彩:そのお手紙もつたないひらがなから、漢字が使われるようになって、「お元気でいらっしゃいますか?」って気遣ってくれて。しかも、その子が今、娘役を目指しているみたいで!退団公演のショーで「続く誰かの道になろう」っていう歌詞を先生が書いてらっしゃったんですけど、それって宝塚がずっと続いていくよねっていうこと、誰かが誰かの夢になるっていうことなのかとすごく染みて…。私も音月さんの姿を見て宝塚に入りたいと思ったことが、自分も誰かの道になっているんだとファンの女の子に教えてもらったことがすごく印象的です。

◆最後に、視聴者へのメッセージをお願いします。

真彩:この番組に呼んでいただいて、すごく熱量が上がってしまって、個人的な趣味みたいな感じになってしまったんですが、宝塚を愛する方、タカラジェンヌさんを愛する方は、皆さんきっと熱を持って愛してくださる方がたくさんだと思います。なので、真彩希帆も宝塚ファンの1人なんだなと温かく見ていただけたら(笑)。私のファンの方は、私が音月さんのことが大好きで、目指して入ったってことはご存知のことだと思うので、きっと私がうれしくて興奮している姿に、「良かったね」と親のような目線で見てくださるんじゃないかな。自分が舞台に立てていることが、自分の楽しみというより、自分の姿を見て元気になったとか、エネルギーをもらって明日を迎えられるっていう方だったり、皆さんの源になれたらいいなというところで舞台に立っています。今日はそんな舞台に立つエネルギーとはまた違ったエネルギーを発していたので、そこでも「真彩ちゃんがこんなに元気だったら私も元気になるわ」みたいなものを受け取っていただけたらありがたいです。

音月:それこそ現役時代だったらかなわなかった共演。違うトップコンビの男役と娘役がこういうふうに共演することは、ほぼないと思うんです。今回本当にお初なので、そういうレア感は、この番組ならではですね。私もすごくオンエアが楽しみだし、安心していろいろと話せました。一番は生で舞台を見ていただくのがうれしいのですが、観劇の予習復習としてスカパー!さんを見ていただいて、「こういうふうに見えたけど、実はこうだったんだ」といった見方もできるんじゃないかなと。逆に、「映像では見られなかったけど、この角度だとこうなんだ!」みたいな楽しみ方もあると思うんです。そういった楽しみ方を皆さんもそれぞれ見つけていただいて、私もこの番組を楽しみに拝見させていただきたいです。

PROFILE

音月桂
●おとづき・けい…1980年6月19日生まれ。埼玉県出身。愛称、KEI、キム。元雪組トップスター。1998年、第84期生として宝塚歌劇団に入団。宙組公演「シトラスの風」で初舞台。その後雪組に配属。2010年、雪組トップスターに就任。2011年、「ロミオとジュリエット」で大劇場トップお披露目。2012年「JIN-仁/GOLD SPARK!」で退団。現在は女優として活躍しており、開場25周年記念公演「レオポルトシュタット」(2022年10月)が控えている。

真彩希帆
●まあや・きほ…7月7日生まれ。埼玉県出身。愛称、まあや、きぃちゃん、きーやん、なっちゃん、まあやきぃ。2012年、98期生として入団。宙組公演「華やかなりし日々/クライマックス」で初舞台。2013年組まわりを経て花組に配属、翌年星組へ組替、2017年雪組トップ娘役に就任。「ひかりふる路/SUPER VOYAGER!」で大劇場トップお披露目。入団6年目にして5組全組への出演を果たす。2021年「fff/シルクロード」で退団。オリジナルミュージカル「流星の音色」(2022年8月2日~)が控えている。

番組情報

『山里亮太の宝塚男子になってもいいですか?』
BSスカパー!
毎月最終土曜 午前10時30分~11時

公式HP:https://www.bs-sptv.com/takarazuka-danshi/

●text/田中ほのか