清水尋也&磯村勇斗インタビュー『カメの甲羅はあばら骨』での声優共演は“神頼み”で実現!?「なるべくしてなった配役です」

特集・インタビュー
2022年10月27日

清水尋也&磯村勇斗インタビュー『カメの甲羅はあばら骨』

動物たちの体の構造について、人体を同じように変形させることで分かりやすく解説した話題の図鑑『カメの甲羅はあばら骨』が劇場アニメ化され、10月28日(金)より全国公開される。シュールな世界観はそのままに、冴えない高校生の“カメ人間”カメ田と、その親友の“カエル人間”カエル川を中心に描く王道の学園青春ストーリーだ。カメ田の声を演じた清水尋也さんとカエル川の声を演じた磯村勇斗さんが本作の魅力を語ってくれました。

◆原作は、話題の動物図鑑です。

清水:特にお子さんの間で人気だと聞いて、「そんな図鑑があるんだ」と。最近は図鑑を読む機会もなかなかないので、純粋に興味を引かれました。実際に手に取ってみると、生物学に基づいていてすごく勉強になりました。子供たちと「学び」の架け橋にもなりますし、そういう側面から見ても存在意義のある作品だなと思いました。

磯村:とてもシュールですよね。最初の衝撃がものすごかったです。「面白そう!」という好奇心から、この作品にもっと奥深く触れてみたいと思いました。図鑑が映画になるって、“その手があったか!”と思いましたね。

◆映画では、高校が舞台の物語として描かれています。

清水:「あの図鑑からこんな物語を思いつくんだ!?」と驚きました。でも学校という場所は多用性を表現するにはもってこいですよね。

◆クラスの中にヒエラルキーがあったり、友達とちょっとしたことで仲違いをしたり。青春ドラマとして楽しめますよね。

清水:そうなんです。ちゃんと「青春」してますよね。キャラクターがみんなインパクトのある見た目なので、きっと突拍子もないことやありえないことばかりが起こるんだろうと想像している方もいらっしゃると思うんですけど、そんなことはなくて。

磯村:映画を見たら「こういうときあったな」「こういう男子いたな」って、皆さん共感してくださるんじゃないかと思います。そういう意味では、本当に王道の青春ストーリーです。

清水:僕自身も最初はどんな作品になるんだろうと思いました。正統派青春ドラマとしてのメッセージと、ちょっと異端な作風が合わさったときに、どんな化学反応が起こるんだろうと。でも蓋を開けてみたら、それが絶妙にマッチしていました。

清水尋也&磯村勇斗インタビュー『カメの甲羅はあばら骨』

◆ご自身の役柄にはどんな印象を持ちましたか?

清水:カメ田はいわゆる“陰キャ”。陽キャと呼ばれる人たちに嫉妬や羨望などを抱いていて。最初は彼らを下に見たり、斜に構えたり、そういうちょっとひねくれたところがあるんですけど、学校生活でいろんな出来事があり、素直な気持ちが出てくる。でも、それをうまく伝えられないんです。それは彼の悪いところでもありますけど、かわいらしいところでもあるなと思いました。要は不器用なヤツなんです。自分も学生時代、不器用であるが故に人を傷つけて後悔したこともありますし、自分のしたことが返ってきて痛い目を見たこともあります。だから、すごく共感できました。

磯村:カエル川はカエル人間だけあってピョンピョン跳んでいて、言葉にも重みがないというか。本当に軽くて、その場のノリで生きているようなヤツです(笑)。僕自身はちゃんと重みを持っているつもりなので、あまり共感はできませんでした(笑)。ノリは分かりますけどね。学生時代の、男同士でちょっかいを出し合うような感じとかはすごく理解できます。それにカエル川ってただ軽いだけじゃなく、弟分みたいな愛嬌やかわいらしさがあって親しみやすいんです。正義感も持っていて、優しいキャラクターだなと思います。

◆それぞれのキャラクターを演じる上で意識したことや大切にしたことは?

清水:発声ですかね。僕はプロの声優ではないので、滑舌に気をつけてちゃんとせりふを言うという、そういう最低限のベースの部分にはとことん気をつけました。

磯村:僕は監督との打ち合わせでカメ田との差をつけたいという話になって。高めの声質で、多少舌足らずな感じの方が面白いんじゃないかということになり、あえてそういうしゃべり方にしました。

◆動物の体の特徴を人間に置き換えたインパクト大なビジュアルは、役作りに影響しましたか?

清水:どうでした?

磯村:カエル川はジャンプしながらしゃべるので、僕も毎日跳んでいました。収録現場に行くときもそうですし、そのときのG(重力)に対する反発は体にどうかかるのか。それによって声質はどう変わるのか。日々研究しながら臨みました。

清水:テキトーですね(笑)。

磯村:まぁ冗談ですけど(笑)。でも、跳びながらしゃべるとどうなるのかなと、試しましたね。

◆さすがにジャンプしながら演じたりは…?(笑)

磯村:それはやらなかったですね(笑)。

清水:でもそれ見たかったなー! それこそリアルじゃないですか。

磯村:いや、床を蹴る音が入っちゃうし(笑)。それに、カエル川は跳びながらしゃべっても息切れしないけど、俺は息切れするから。そうなったら収録できなくなっちゃいます(笑)。カメ田は自分のあばら骨を木琴みたいにたたくじゃない? あれは自分のあばら骨で試さなかったの?

清水:やらなかったですね(笑)。確かに僕も結構あばら骨出てますけど。カメ田は本音をあばらの中に隠すという特性があって、それがナレーションで心の声として描かれているんです。現実の声と本音が交互に流れるシーンもあって、そこのギャップを声の出し方やトーンでどう表現するかは考えながら演じました。

清水尋也&磯村勇斗インタビュー『カメの甲羅はあばら骨』

◆この作品で共演すると聞いたときはどう思いましたか?

清水:めっちゃうれしかったです!

磯村:僕もうれしかったです。カメ田役が尋也君だったからこそ、カエル川役をやらせていただきたいと思ったので。

清水:スタッフさんから「カエル川役は磯村さんにオファーしています」と聞いてはいたものの、どうなるか分からなかったので、(両手を合わせながら)ずっとこうしていました(笑)。

磯村:神頼み?(笑)

清水:そうそう(笑)。親友役なので知っている人の方が絶対いいものができるでしょうし、磯村君と一緒にお芝居をしたかったので。どうかこのまま決まってほしいと願っていました。

磯村:その念が伝わったんでしょうね。祈ればかなうってことだね。

清水:なるべくしてなった配役ですね。

◆実際に共演してみて、いかがでしたか?

清水:やっぱりやりやすくて、楽しかったです。

磯村:僕も楽しかったです。最初から息もぴったりで、掛け合いをしながらいいところを見つけていった気がします。

清水:他のキャストで唯一一緒に収録できたのが、磯村君なんです。カメ田とカエル川がじゃれているところは監督から「自由にやってください」と言われて。そのときは、二人で探り探りやりましたよね?

磯村:そうだね。監督が僕らに任せていろいろトライさせてくださったので、やりがいのある現場でした。次は向かい合っての芝居もしてみたいです。それが目標ですね。

◆例えばこの作品が実写化されて、そこで共演という可能性もあるかもしれませんね(笑)。

磯村:いやー、それはどうでしょうね(笑)。この作品を実写で演じるとなったら相当大変ですよ?

清水:演じる側の人間だからこそ軽いことは言えないです(笑)。

磯村:ただ、もし誰かが演じるとなったら、ゴールデンタイムのドラマでも十分イケると思います。だから…月9とかいいんじゃないですかね。恋愛要素も入れて。

清水:あれ、急に他人事じゃないですか(笑)。

磯村:僕はそれを視聴者として楽しみたいです(笑)。

『カメの甲羅はあばら骨』
『カメの甲羅はあばら骨』

◆モリ・マサ監督からは他にどんなディレクションがありましたか?

清水:監督の演出で、現場で台詞が足されていきました。「こことここのせりふの間に、こういう感じのせりふを入れてもらっていいですか」みたいな。監督自身の中でのアイデアもあれば、収録中の僕たちの掛け合いを見た上での提案もありましたね。

磯村:監督のセンスがすごいんですよ。

清水:うん、絶妙なシュール具合というか。

磯村:ラーメンを食べるシーンがあって、そのときに「食べ終わったら『机うめえ』って言ってください」と言われたんです。もちろん机を食べるわけじゃないんですよ? でもそのせりふを追加するセンスがすごいなと。それは僕たちからでは絶対に出てこないですから(笑)。

清水:出てこない、出てこない(笑)。

磯村:そういうことが多かったですね。

◆そういうシュールな世界観は、お二人としてはいかがでしたか?

清水:僕は好きです。ストーリー自体も一貫してテンポよく進むわけではなく、途中で「ん?」と引っかかるような、あえて“抜いた”ところがあって。その絶妙なテンポの狂わせ方が面白かったです。

磯村:僕も好きです。こういう作品だからこそ出演させていただいたというくらい、好きな世界観ですね。

◆ちなみに、作品にちなんで“自分自身にこの動物のこういう特徴がほしい”と思うことはありますか?

清水:ナマケモノしか思い付かないですね。ナマケモノみたいに怠けたいです(笑)。

磯村:いいね。ナマケモノって木の上でずっとボーッとしてるんでしょ?

清水:そうです。でもデメリットの方が多いかな。何かあったときに逃げ遅れそうですし。…野性で生活する前提の話になっていますけど(笑)。

磯村:あれ、そうだね?

清水:もし人間生活で考えると…。

磯村:家でダラダラしているだけだよ(笑)。

清水:やばいですね(笑)。

磯村:僕は…うさぎの耳って大きいけど、耳いいのかな?

清水:いいんじゃないですか?

磯村:だったら、うさぎの耳がいいな。人間の耳には届かないような、いろんな声を聞いてみたいです。遠く離れたところにいる人の陰口とかも。「うわぁ、悪いこと言ってるわー」って(笑)。

清水尋也&磯村勇斗インタビュー『カメの甲羅はあばら骨』

PROFILE

清水尋也
●しみず・ひろや…1999年6月9日生まれ。東京都出身。O型。最近の出演作は、ドラマ『となりのチカラ』『おかえりモネ』『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』、映画「さがす」「スパゲティコード・ラブ」など。映画「東京リベンジャーズ2」が来年公開予定。

磯村勇斗
●いそむら・はやと…1992年9月11日生まれ。静岡県出身。A型。最近の出演作は、ドラマ『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』、映画「さかなのこ」「異動辞令は音楽隊!」など。Netflixシリーズ『今際の国のアリス』シーズン2が12月22日(木)に配信。

作品情報

『カメの甲羅はあばら骨』

劇場アニメ
「カメの甲羅はあばら骨」
2022年10月28日(金)全国公開

<STAFF&CAST>
原作:川崎悟司
監督:モリ・マサ
脚本:田中眞一、モリ・マサ
アニメーション制作:タイプゼロ
声の出演:清水尋也、磯村勇斗、江口拓也、上國料萌衣(アンジュルム)、野津山幸宏、栗田航兵(OCTPATH)、四谷真佑(OCTPATH)、森本晋太郎(トンツカタン)、坂本慶介、でんでん ほか

●photo/田中和子(CAPS)text/佐久間裕子 hair&make/須賀元子(清水)、佐藤友勝(磯村)styling/Shohei Kashima(W)(清水)、笠井時夢(磯村)
©2022 カメの甲羅はあばら骨製作委員会 ©川崎悟司 / SB クリエイティブ