「圧倒される世界観」椎名桔平インタビュー『連続ドラマW メガバンク最終決戦』主演

特集・インタビュー
2016年02月10日

国際経済の裏表を知り尽くした“伝説のファンドマネージャー”波多野聖による経済エンターテインメント小説『メガバンク最終決戦』をWOWOWがドラマ化。日本国債の暴落で一夜にして巨大負債を抱え、機能不全に陥った巨大銀行=メガバンクを舞台に、辣腕ディーラーでもある専務と総務部員がバディを組み、史上最大の買収合戦に挑んでいく。この辣腕ディーラーを演じ、また連続ドラマW初主演となる椎名桔平さんに、役についてやバディを組む桐谷健太さんとのエピソードをお伺いしました。

桂という役は不思議な存在

――今回のドラマの役どころについて聞かせてください

4つの銀行が合併した、行員が4万人いるメガバンクが舞台で、僕が演じる桂は割合でいうと2番目に大きい銀行の出身者。だから本流じゃない。
本流じゃないが、為替を主体にやっていた、ある種専門職というところで、桂はディーラーをやっていた人です。そんな彼が経営陣に入っているというのは非常に珍しいことなんじゃないかと思っています。
専務でいながら、ディーリングルームの長であり、いまだにディーリングルームで為替をやったり、だけど経営のことも関わっている、非常に不思議な存在なんです。
そういう人をどう演じようか、というところから始まって、経営者然としたあり方だけはやめようと思いました。
ディーラーという世界でずっと戦って生きてきたという側面を、ちゃんとキャラクターに生かさなければいけないな、ということを考えながら演技をしていました。



――今回の役を演じるにあたって、何か特別な役づくりはされましたか?

撮影が始まる前に実際に投資をしましてね。あっ、嘘ですけどね(笑)。
僕はあんまり賭け事をしないので、投資というのはどういうことなのかなと、本やネットで勉強しました。
そこで想像上で“ここの株を買ったらこうなるのかなぁ”とか、頭の中でシミュレーションしたりしていました。

原作者の方は実際にディーリングをやっている方で、脚本、原作自体がすごくリアリティのあるものでした。
そういう世界観を自分の中に取り入れて、あとは自分の知り合いの銀行に行って、支店長の方とお話させていただきました。支店長では、頭取や経営陣の詳しいところまではなかなか接点がないようでしたが、でもその中で、いろいろ見聞きしたお話を聞かせていただきました。

――銀行員と聞くと冷静なイメージがありますが、桂はどんな人物だと思いますか?

最初の登場のシーンなんかはわりと冷徹というか、クールな印象のあるキャラクターです。
このドラマは6話までありますが、だんだん桂が変わってくる、というわけではないけれど、今まで見えなかった桂が出てくる気がします。人間味のあるほうが役として魅力的だな、と僕は思ったので、普段は表に出していない内面をすごく考えました。

桐谷くんは、会った瞬間好きになりました

――桐谷健太さんとは初共演ですが、どんな印象を受けましたか?

桐谷くん? 浦ちゃん? 人に好かれやすい性格というか、明るいし、素直だし、僕は会った瞬間好きになりましたね。最初は距離感のある役柄だったし、お互いそれぞれのシーンを撮影していたこともあって、あまり会う時間も多くなかったけど、中盤から連日一緒にいるようになって。
現場では桐谷くんからプライベートの話をいろいろ聞いてきたり、その話が盛り上がって終わらなくなったり。撮影中なので、「ちょっとここで止めておこう」とか「集中していこう」って話しながら(笑)。相性が良いんでしょうね。

宇都宮にロケに行ったときは、プロデューサーも監督も含めてご飯を食べて、ある種親睦会的な感じでカラオケにそのまま流れたんです。で、せっかくマイクがあるし「そういや今なんか歌ってるよね? あれって一番とか二番とか、ちゃんとあるの?」って聞いたら「あるんですよ」って。「あぁ、じゃあ聞きたいな」って、聞かせてくれました。一生懸命歌ってくれて、こちらはCMを見ているような感じでした(笑)。「本物だ! 浦ちゃんだ!」って(笑)。

ドラマの桐谷くんは二瓶という、ちょっと悲しいところのある役どころで。家庭のシーンが多く、台本を読んだだけでもぐっと苦しくなるような場面もあって。行員の持つ家庭の世界もこのドラマの見どころの1つです。

圧倒される世界観ができているんじゃないかと思います

――金融の世界は世相を映すと聞きますが、以前銀行員役を演じられた時と違いは感じましたか?

銀行員役は「金融腐食列島呪縛」という映画以来。あの時から変わったかもしれませんね。「世相を映す」、まさにそういうことかもしれません。映画の時も、今回のドラマも株主総会のシーンがクライマックスですが、映画では総会屋が堂々と来ていたけれど、今回の総会屋はあまり表立ってこないというか、そういう印象を受けました。時代がちょっと変わったんでしょうね。

――最後に、ドラマの見どころを教えてください。

骨太で社会派な作品に仕上がっていると思います。今の時代に合わせて、その時代の映し鏡的なところもあるし。いつ実際にこういう事件が起こってもおかしくないという、リアリズムを組んだエンターテインメントになっているんじゃないかと思います。メガバンクが買収される、何兆円ものお金が動くスケールの大きな展開がある世界って少ないですからね。日本一のメガバンクを通して、政界・海外の大きなファンドとの攻防というものが、このスケール感の中で圧倒される世界観ができているんじゃないかと思います。

 

PROFILE

椎名桔平●しいな・きっぺい…1964年7月14日生まれ。三重県出身。B型。
1993年の映画「ヌードの夜」で注目を集め、以降多数の作品に出演。映画「金融腐食列島呪縛」では、日本アカデミー賞優秀助演男優賞など、数多くの賞を受賞。主なテレビドラマとして『Age,35恋しくて』『Sweet Season』『アンティーク~西洋骨董洋菓子店~』『警官の血』『銭ゲバ』など。


作品情報

日曜オリジナルドラマ『連続ドラマW メガバンク最終決戦』(全6話)
2016年2月14日(日)スタート WOWOWプライム毎週日曜夜10・00~(第1話無料放送)

●ストーリー
東西帝都EFG銀行(TEFG)は、帝都銀行を中心に東西銀行、EFG銀行が金融庁主導で合併して誕生したメガバンク。合併以来、帝都銀行出身者が主導権を握り、行内では出身銀行ごとのヒエラルキーが強く残る。
そんな中、辣腕ディーラーの桂光義(椎名桔平)は、帝都銀行出身ではないものの、手腕を買われて為替部門の専務にまで上り詰めていた。
いっぽう、EFG銀行のさらに前身の銀行であり、TEFG内で“最下層”と位置づけられている名京銀行出身の総務部、二瓶正平(桐谷健太)は、そんなヒエラルキーには屈せず、生真面目に仕事にまい進していた。
ある日、TEFG上層部と金融庁官僚との密談で行われた超長期国債の購入と、同時期に生じた日本国債暴落により、突如TEFGは破綻の危機に陥る。会社存続のため、桂は二瓶とともにTEFG買収を狙う外資ファンドや、陰謀をたくらむ官僚たちに立ち向かう。史上最大の大勝負に挑む彼らの行方は!?

●キャスト
椎名桔平 桐谷健太
大石吾朗 利重剛 緒川たまき 音月桂 袴田吉彦 音尾琢真 小柳友 日野陽仁
益岡徹・左とん平/石橋凌ほか

●スタッフ
原作:波多野聖『メガバンク最終決戦』(新潮文庫刊)
監督:古澤健、佐和田惠
脚本:杉原憲明
音楽:大間々昴
公式サイト…(http://www.wowow.co.jp/dramaw/megabank/

 

ヘアメイク=反町雄一
スタイリスト=宮本まさ江
衣装=Paul Smith
取材=田代良恵