戸塚純貴、春日俊彰を熱演で「“春日化”してきている自分がいて…」日曜ドラマ『だが、情熱はある』インタビュー

特集・インタビュー
2023年05月28日
『だが、情熱はある』オードリー・春日俊彰役の戸塚純貴
『だが、情熱はある』オードリー・春日俊彰役の戸塚純貴

オードリーの若林正恭さんと南海キャンディーズの山里亮太さんの半生を描く、実話に基づいた感動の人間ドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系 毎週日曜 午後10時30分)。髙橋海人さんが演じる若林さんとコンビを組む春日俊彰さん役の戸塚純貴さんに、役作りなどについて聞きました。

◆オファーを受けたときの心境を教えてください。

最初にお話を頂いたときは不安しかなかったです。実在する方で、現在活躍されていらっしゃる方でもありますし。見た目やラジオで聞く印象からも、自分とは遠い存在だなと思っていたので。今まで演じた中で一番難しいなと思いました。

◆放送されての周囲の反響は?

面白がってくれているなと感じます。オードリーのお二方も、ラジオなどでお話をしてくださって優しいなと。ただ演じる側としては、物語の展開が早いのでついていくのに必死です。“この時期のお二人はどんな気持ちだったんだろう?”とか、それこそ春日さんが以前住んでいらっしゃった「むつみ荘」に入居してからの生活の感じとか。ご存知の方もいるかもしれないですが、知られている以外の部分もきちんと演じなければいけないので。そういう難しさは、回を重ねるごとに増している気がします。

◆春日さんを演じてみてご自身の中で何か変化は?

自分の中に春日さんがどんどん入ってきて、ちょっと“春日化”してきている自分がいて…(笑)。最近では、台本を頂いたときに細かいせりふのニュアンスがすごく気になって「こういう言い方はしないんじゃないか?」みたいな欲が出てきています。そのおかげで私生活でも一人称が「私は」になりますし、敬語っぽくしゃべってしまうことがあります(笑)。春日さんって謎が多いというか、つかみどころがないんですよね。それは監督も含めてスタッフの皆さんも「春日さんってどうなんだろう?」みたいなことをよくおっしゃっていて。最終的にどう演じるかは僕に一任されています(笑)。なので、今はより自分の中できちんとこだわりを持って、春日さんへのリスペクトも込めて演じるようにしたいです。あと若林さん役の海人と共にする時間が多くて濃いので、コンビとして確立してきているのも感じます。

『だが、情熱はある』
『だが、情熱はある』

◆具体的にどのように役作りしていったんですか?

春日さんは独特な言い回しや敬語を使われるので、そこは一番気をつけるようにして。ラジオで“春日語録”を話していたときにはノートをとって勉強しました。このドラマのタイトルは『だが、情熱はある』ですが、情熱があるかどうか分からないところが春日さんの魅力だと思っていて。若林さんとの対比というか、常に淡々とされていて、焦らない雰囲気を持っていらっしゃるんですよね。例えば売れるとか売れないとか、人気のあるなしとか、感情的になりそうな部分でも春日さんは“まぁまぁ、これからでしょ”という気持ちだったのかなって。なので、そういうところはテンションを上げないようにしました。どちらかというと若林さんを支える気持ちが強いというイメージで演じています。

◆春日さん本人の動きも意識していますか?

困ったときは胸を張る…というところは意識しています(笑)。撮影前に監督とプロデューサーさんと読み合わせをしたとき、「春日100%で1回やってみて」とか、「次は春日30%で」という指示があって。“%とは何だろう”と思いながらやっていたんですけど(笑)。もしかしたら、漫才している春日さんのイメージが100%なのかなという考えに行き着いて。それからは、現場に入るときに少しずつお芝居をしながら春日さんを降ろしていく…という作業をしています。

◆どのように春日さんを降ろしていくんですか?

ピンクベストの春日さんを全力で物まねして降ろしている感じです。テレビはもちろん、武道館ライブや漫才のDVDも見ました。あと、ラジオも好きで聞いています。春日さんの声って、低いけど少し高くも聞こえる耳心地がいい声だと思うので。できるだけ近づけたいです。

『だが、情熱はある』
『だが、情熱はある』

◆実際に演じてみて、もともと持っていたイメージから変化は?

変わった方なんだろうなという印象はあったのですが、春日さんをどんどん知っていくうちにダメな方という印象が強くなりました(笑)。頑張っている若林さんの隣で頑張っていなかったり、泣いている若林さんの横で泣いていなかったりとか、喜怒哀楽が普通の人とちょっと違う感じがします。でもエピソードは全部面白くて、とても愛らしく感じています。

◆演じるにあたって、春日さんと直接お話はしましたか?

始まる前にお会いしかったのですが、なかなか機会がなくて。僕が春日さんを好きという、今はその気持ちだけで演じさせていただいています。ただ、むつみ荘の前で撮影しているときに、たまたま別番組で春日さんが前を通ったときがあって。そのときが初めましてだったのですが、お互いに収録中だったのでそこまで深いお話はできませんでした。でも春日さんと深い話をしても、身になるのかどうか分からないなとも思って…(笑)。ご本人もおっしゃっていたのですが、春日さんの中には自分というものがないみたいなんです。春日さんは若林さんが作った最高傑作=作品とも言われているので、もしかしたらお話をしてもどんどん分からなくなりそうな気もするなと(笑)。春日さんの魅力ってひと言では語られない部分にこそあるのかなと思うし、自分としてはそこを表現できたらいいのかなと思います。

◆相方を演じる髙橋さんの印象を教えてください。

一緒に演じると聞いて、不安な部分は全くなかったです。どういうふうに作っていくのかという楽しみな方が強くて。ただ、共演するのが久しぶりだったので、そこの緊張感はお互いにあったかもしれないです。以前共演した『ブラック校則』では、僕が兄で海人が弟の兄弟役で。そのころの海人はとてもかわいらしくて、礼儀正しい弟という印象でした。今回は相方役ということで頼もしいなと思いました。若林さんの役が海人じゃなかったら、オードリーさんを演じることはできなかったのかなと思えるぐらい信頼できる俳優です。

『だが、情熱はある』
『だが、情熱はある』

◆髙橋さんが若林さんを演じることは想像がつきましたか?

つかなかったです。僕自身も春日役だと言われたときに「本当に大丈夫ですか?」と思いましたし。でも、プロデューサーの河野(英裕)さんがすごく情熱のある方で、「これは戸塚君にしかできないと思っているので、絶対大丈夫です」と言ってくださったんです。だから若林さん役を海人が演じると聞いたときも、きっとそういう意味があるんだろうなと思いました。海人は見た目はもちろん、中からもちゃんと役を作っていける人だと思っていたので。

◆実際、髙橋さんの若林さんを目の当たりにしてどうでしたか?

最初に本読みをしたとき、海人がしゃべり方を若林さんにちゃんと近づけていて、それにちょっと感動しました。僕も頑張らなきゃとお尻を叩かれましたね(笑)。

◆若林さん役の髙橋さんとはどのように作りこまれているんでしょうか?

僕だけでなく、海人もオードリーさんがすごく好きなんです。自分で演じるよりも、客観的に見た方が、異変、違和感に気付いたりするので、「ここって若林さんだったら、どういうふうにするかな?」「春日さんはここではこう言うだろうな」とか、海人が「どうやってアパートに入っていこうか?」「どう思いますか?」と聞いてくれるので、「若林さんはちょっと狂気じみた部分があるから、家のモノをぶっ壊したら?」と言ってみたり(笑)。客観的だからこそ分かることかもしれないし、そういったことで相方感が増している気がします。

『だが、情熱はある』
『だが、情熱はある』

◆これまで特に楽しかったシーンは?

ネタ見せするシーンがあるんですが、そこは毎回海人とネタ合わせをしていて。もちろんテレビでは最初の冒頭しか使われないのですが、現場では一応最後までやっていて、漫才って楽しいなと思う瞬間だったりします。ウケるウケないは別として、そのときの間がよりコンビ感を増していますし、少しだけ芸人さんの気持ちも分かる気がします。出るからにはやっぱり面白い漫才をしたいし、ネタ合わせも直前まで2人でやっているみたいな(笑)。最近は、あうんの呼吸のようなアイコンタクトができているので楽しいです。それは、海人とも「今日楽しいな」みたいにずっと言い合っていて。きっとオードリーさんもこんな日々を送っていたんだなと感じます。

◆お芝居を通じて、オードリーのお二人の印象は変わりましたか?

変わりました。より愛情をもって見られるようになりましたし、逆にこれからのオードリーさんを笑えないかもしれないです。どちらかというと感動しちゃうかも。僕らが見ても絶対ウケないだろうというような形を取ったり、間違った方向性になったりする展開もあって。でもそれは多分情熱があったから、売れたいから失敗してしまったことなんですよね。ドラマを通じてそういう部分をたくさん知っていただけるっていうのはうれしいですし、僕自身も知れるのがうれしいです。その分、中途半端なことはできないなとは思います。

◆過去の知らない部分も演じてみて、どのように思われていますか?

めちゃくちゃ面白いですよ。オードリーとして売れてからはもちろん皆さんも知っていると思いますけど、売れてないときのナイスミドル(以前のコンビ名)のときのネタが正直、面白くなくて(笑)。ピンクベストに行き着くまでに、かなり試行錯誤されているんですよね。そのストーリーは演じていて、ぜいたくだなと思いました。ただ海人と今2人でまだ世に出ていない段階を演じているので、お芝居とはいえ笑われないのがつらくて(笑)。お客さんが見ていなかったりもするんです。だからこそ「早く売れたいね」と2人で話しています。リアルに漫才師みたいになってきていて、それも楽しいです。

『だが、情熱はある』
『だが、情熱はある』

◆戸塚さん自身“リトルトゥース”(オードリーファン。主にラジオのリスナー)ということですが、オードリーさんを好きになったきっかけは何だったんでしょうか?

いろいろなラジオの形があると思うのですが、一番の魅力は仲の良さというか、中学、高校を共にして、今に至るまで多分関係性が変わってないんですよね。それってやっぱりすごいことだし、『だが、情熱はある』では山里さん、南海キャンディーズさんとの対比もあって。芸人さんは何人も相方が変わるというのをよく聞きますが、オードリーさんは一度も変わってないっていう。その仲の良さみたいなのがラジオを通して伝わってきて、幸せな気持ちになれます。コンビの信頼関係や絆がにじみ出ているので、一生見ていたい方々です。

◆今回こうやって実在する人物を演じられていますが、また実在する人物を演じることになった場合は誰を演じてみたいですか?

西田敏行さんが大好きなんです。西田さんのお芝居もまねしたいし、西田さんの人生ものぞいてみたくて。普段から温厚な方で面白くて優しくて、話していると若い人への関心もお持ちで。お芝居や作品の中に生きているような方なので、唯一無二の存在だと思います。そんな存在に自分もなりたいなと思っているので、西田さんを演じてみたいです。

『だが、情熱はある』
『だが、情熱はある』

◆ではタイトルにちなんで、戸塚さんがこれまでに情熱を燃やして取り組んだことは何でしょうか?

早起きです。子供のころは誰よりも学校に一番に行くことに情熱を注いでいました。本当にお店の開店待ちみたいな感じで、先生よりも早く行って。校門の前でずっと待っているというのを、バカみたいにやっていましたね。一時期、度が過ぎてしまって、友達と学校に前乗りみたいなことをしたこともあります(笑)。朝日が昇ってからではちょっと遅いなと、なぜか思ってしまって、夜中に行ってそこで待つみたいなことをやっていました。今思うとなんでだろうと思います(笑)。

◆最近、情熱を注いでいることはありますか?

好きなことや趣味はありますが、そこまで情熱を燃やしたことはないかもしれないです。ただ、お芝居には情熱をもって取り組んでいます。ですが、あくまでもそれは仕事なので。仕事に情熱を注いでいるって、面白くないじゃないですか。自分はちょっと天邪鬼なところがあるので、人に言えるようなことって情熱ではないんじゃないかとかも思ってしまうんですよね(笑)。

◆最後に、今後ドラマで楽しみにしていることを教えてください。

僕はまだ春日さんのトレードマーク、ピンクベストを装着していないので(取材時)。完成されたオードリーを演じるのをすごく楽しみにしています。『M-1グランプリ』も描かれるようなので、オードリーさんのネタを完全コピーして演じられたらと思っています。

『だが、情熱はある』オードリー・春日俊彰役の戸塚純貴
『だが、情熱はある』オードリー・春日俊彰役の戸塚純貴

PROFILE

戸塚純貴
●とづか・じゅんき…1992年7月22日生まれ。岩手県出身。A型。最近の出演作に『かりあげクン』『リエゾン‐こどものこころ診療所‐』、舞台「たぶんこれ銀河鉄道の夜」など。映画「水は海に向かって流れる」が6月9日(金)公開予定。

番組情報

日曜ドラマ『だが、情熱はある』
日本テレビ系
毎週日曜 午後10時30分~

<CAST>
髙橋海人(King & Prince)、森本慎太郎(SixTONES)、戸塚純貴、富田望生、ヒコロヒー、光石研、薬師丸ひろ子 ほか

<STAFF>
脚本:今井太郎
主題歌:SixTONES「こっから」
音楽:T字路s
演出:狩山俊輔、伊藤彰記
プロデューサー:河野英裕、長田宙、阿利極
チーフプロデューサー:石尾純
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ

公式Twitter:@daga_jyounetsu

●text/田中ほのか