「No Laughter MC」トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行【第65回】

特集・インタビュー
トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行
15時間前

お笑いトリオ・トンツカタンの森本晋太郎さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、自分にしかできないと思うお仕事をした話。(TVLIFE 20251015日発売号より転載)


「No Laughter MC」

芸人を12年やってきて常々思うのは、芸能界はあまりにも層が厚いということ。オンリーワンの人材は限りなくゼロに近く、ましてや僕みたいなロングネクストブレイク芸人なんて掃いて捨てるほど存在している。そのためどの仕事をする時も「他にいくらでも選択肢があったのにも関わらず、選んでくれてありがとうございます」の精神で臨むよう心がけている。

しかしそんな中、「さすがにこれは僕にしかできないのでは?」と思うお仕事をいただいた。それは『on』というスポーツブランドが手掛けるイベントのMCで、出演者がトレッドミルの上で3分間走り続け、その距離を競うという内容。これだけ聞くとなんならスポーツのイメージがない僕よりも適任はごまんといそうなものだが、このイベントは世界各国ですでに予選が行われており、その勝者たちと日本のランナーたちが争う決勝戦なのである。つまり、参加者の半分は海外の方。今まで様々なMCをやらせてもらってきたが、バイリンガルであることをここまで活かせるものは初めてだ。今までにない唯一無二の仕事に腕が鳴る。

迎えた本番当日、会場に向かうと体感7割は外国の方だった。楽屋に入り、台本に目を通すと日本語と英語のどちらも書かれているのを見て改めて「この仕事は僕でなきゃ」と身が引き締まる。入念に中身を確認していると、あっという間にイベント開始の時間になった。

いつものグラデーションシャツではなく、用意していただいたonのウェアを身にまとって登場すると、とにかく楽しもうというマインドのお客さんたちが初っ端からテレビ番組の観覧くらい声を出して盛り上がってくれた。日本語で喋ると日本語話者が、英語で喋ると英語話者が反応してくれたのが今までにない感覚で非常に新鮮だった。

その後、イベントのメインであるランナーたちのトレッドミル走では

「声援をください!Make some noise!」
「1分経過!One minute down!」
「残り30秒!30 seconds left!」

など、日英反復MCとして最後まで声を出し続け、終演するころには僕もランナーくらい息を切らしていた。達成感を覚えながら帰路につき、脳内でイベントを振り返っていると、あることに気付く。

もしかして今日、ひと笑いも取ってないのでは?

ノリのいいお客さんのおかげで盛り上がってはいたが、思い返せばユーモアで会場を沸かせたシーンは皆無だ。おそろしい事実に歩いているだけなのにランナーくらい汗をかいていた。

後日、この話をラジオでご一緒しているオアシズ大久保さんにしたところ、

「じゃあバイリンガルの人ならできる仕事じゃない?」

やはり芸能界の層は厚い。


森本晋太郎
●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」も好評。初の書籍「ツッコミのお作法」(KADOKAWA刊)も好評販売中!

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