

トンツカタン森本さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン森本のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、ある日のタクシーでの話。(TVLIFE 2026年8月5日発売号より転載)
「僕にとっては、あなたが幸運のタクシーです」
夜に仕事を終え、いただいたタクシーチケットを握りしめて帰路に着く。50代半ばの運転手さんに家までの行き先を告げ、ようやく一息つく。しばらくすると
「カーナビって便利ですよねえ」
と話しかけられた。なるほど、そっちのタイプか。ここでそっけない態度を取る人もいるだろうし、その気持ちもわからなくもない。ただ、人生の先輩がせっかく話しかけてくれているのだから、その思いは決して無下にはできない。こちらもトークのプロフェッショナルとして、誠心誠意向き合うのが礼儀というものだろう。
「たしかに便利ですよね」
正直、車の免許もないどころか原付の免許を失効している身としては共感しづらいトークテーマではあるのだが、話の腰を折りたくないので優良ドライバーのようなトーンで返した。
「コンビニって打てば近くのコンビニが全部出てくるもんね」
「そうですねぇ」
情報のなさを、感情を込めた相槌でなんとか誤魔化す。なるべく自分のターンを短くするためにすぐにボールを向こうに渡す。
「カーナビができる前はね、一年に一度更新されるタクシー運転手専用の地図が配られてたんですよ」
「へぇ、そうなんですね」
「ここで問題」
「ここで問題!?」
あまりにも軽快に突入したクイズタイムに思わず復唱してしまう。
「その地図にはタクシー運転手にとって重要な、とある場所が記載されていました。それはなんでしょう?」
なんだか良問の予感しかしない。すぐに匙を投げて答えを聞く方法もあるのだろうが、その時はそんなことは全く浮かばないほど夢中になっていた。しばらく考えを巡らせていると、ピンときた。
「公衆トイレ?」
「大正解。その地図には公衆トイレがTのマークで記されていたんです。お客さん、そろそろ目的地です」
面白すぎる。ただそれっぽく相槌を打っていただけの僕とは大違いの、本物のプロフェッショナルだった。
今後タクシーに乗るたび、このことを回想するだろう。タクシーだけに。
トンツカタン森本
●とんつかたんもりもと…1990年1月9日生まれ、東京都出身。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオ、WEB番組で活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」、ABCラジオPodcast「MC休止中」も好評。Netflix公式ビデオPodcast「ポッドフリックス -秘密の発信局-」では日替わりMCをつとめる。









