「親身をひらがなで、しんみ」森本しんたろうのネクストブレイク紀行【第90回】

特集・インタビュー
トンツカタン森本のネクストブレイク紀行
1時間前

森本しんたろうのネクストブレイク紀行

森本しんたろうさんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン森本のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、『M-1グランプリ』にユニットでエントリーした話。(TVLIFE 2026年10月21日発売号より転載)


「親身をひらがなで、しんみ」

解散してからというもの、ネタを披露する機会がめっきりなくなってしまった。13年間続けてきたものをいざやらなくなると一抹の寂しさはありつつも、そういうものだと受け入れていた中、縁あって漫才をやる機会がやってきた。というのも、今年の『M-1グランプリ』にユニットでエントリーしたのである。相方は同じプロダクション人力舎所属のピン芸人、永田敬介。

永田との付き合いは思いの外長く、出会ったのは2011年3月5日。この日は『第1回漫才を愛する学生芸人No.1決定戦』というコンテストの決勝が行われた日で、当時大学生だった我々はそれぞれのコンビで勝ち残っていた。このような大会は他にもあったため、サークルは違えど面識のあるコンビがほとんどだった中、完全に初対面だったのが永田のコンビ『スパナペンチ』だった。それゆえに全員がノーマークだったのだが、早めの出番で彼らがネタを披露すると、そのあまりにもクオリティが高い漫才に出場者が一気に顔色を変えてネタ合わせをし始めたのを今でも鮮明に覚えている。

そして勢いそのままに優勝をかっさらい、それから程なくして人力舎に異例のスカウトで所属することとなる。ちなみにこの彗星の如く現れた永田の衝撃を、昨日のことのような熱量で語り継いでいるのが、何を隠そう永田自身だったりもする。あんま自薦でする話じゃないだろ。

それから紆余曲折あって現在ピン芸人として鈍く輝く彼から誘われて今回のエントリーを決意した。

ユニットなので良い意味で肩の力が抜け、しかもコンビの漫才自体が新鮮なので、ネタ作りの段階からかなり心に余裕を持って臨むことができそうな気がしていた。ライブで何度かお客さんの反応を確かめ、まずまずの手応えを感じることができた状態で1回戦の舞台を迎えた。

受付を済ませて楽屋で待機をしていても、いつもならうっすらしていた緊張もまったくない。こうしてリラックス状態で出られるのはユニット最大のメリットかもしれない。そんなことを思っていたら我々のコンビ名『しんみ』がスタッフさんに呼ばれ、舞台裏へと移動する。ここから先は、出場者のネタがはっきりと聞こえる状態で5、6組後の自分たちの出番を待つこととなる。

すると僕の脳裏に今までなかったいろんな考えが巡り始める。

「永田と組んで1回戦で負けたら僕の実力不足がはっきりと露呈するのでは?」

「今まではトリオ漫才だから構成で逃げ切れてただけなのでは?」

すると、今までの分を取り返すかのように心拍数が上がり始める。過去に出場した賞レースの中でも上位に食い込んでくるレベルの緊張が襲いかかってきた。落ち着かせる術もなく出番となり、ちゃんと甘噛みをしながらもなんとか終えることができ、2回戦へと駒を進めた。

あの時コンテストで戦っていた大学生の二人が、15年の時を経てコンビという形で共闘している。いずれこのことを未来の永田は流暢に喋ってくれているのだろうか。


●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオ、WEB番組で活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」、ABCラジオPodcast「MC休止中」も好評。Netflix公式ビデオPodcast「ポッドフリックス -秘密の発信局-」では日替わりMCをつとめる。

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