感染症専門医・佐藤昭裕先生が語る新型コロナとの向き合い方「感染対策は全部やる。難しいけどそれが一番大事」『世界一受けたい授業』

バラエティ
2021年03月05日

『世界一受けたい授業』

3月6日(土)の『世界一受けたい授業』(日本テレビ系 後7・56~8・54)は、「今、新型コロナで意外な広がりをみせている新現代病ランキング」と「今注目の映画『ある人質 生還までの398日』に学ぶイスラム国の脅威」の2つの授業を放送。生徒(パネラー)には、小島瑠璃子、佐藤栞里、佐藤勝利、長野智子、森崎ウィンが登場する。

1時限目の授業「今、新型コロナで意外な広がりをみせている新現代病ランキング」には、日本感染症学会専門医の佐藤昭裕先生が登場。マスクが原因で皮膚病や隠れ脱水症状を引き起こすなど、新型コロナ流行の裏で増えている病気や症状の「新現代病」をランキング形式で紹介する。

◆この1年間コロナウイルスについて、政策を左右する重要なものから、ほとんど嘘に近いものまでさまざまな情報が飛び交っています。コロナに関する正しい知識は、どう入手すればいいのでしょうか?

大学教授という肩書きがある方でも、間違ったことを言っていることがよくあるんですよね。一般の方からしてみたら、やっぱり信じてしまいますから、本当に難しいです。それこそ新聞とかテレビでも間違った情報が出てくることはあります。私はWHOやCDCなど公的機関が出している情報を信じたほうがいいと思います。いまはそういった公的機関がこれまでは有料だったコロナ関連の論文を一般の方にもフリーで提供してくれています。
ただ、論文を読みこなす訓練を受けていない一般の方には、難しいですよね。ですので、私は「一人の先生の意見を丸々信じないで、いろんな先生の意見をちゃんと聞いてください」と申し上げています。
極端な話、コロナの存在すら否定する人たちもいます。そして、それに賛同する科学者も現れる。極端な意見ってすごい熱狂的なファンが生まれるんですよね。自分にとって耳当たりの良いことばかりを集める。そうするとどんどん考え方が偏ってしまう。そういう人に例えば「コロナは塩基配列も読まれています」と(事実を客観的に)伝えていかなくてはいけないです。

◆そもそも今回の新型コロナウイルスは、なぜこれほどまでに情報が錯綜するのでしょうか?

今回の新型コロナは(感染症専門医としての)経験則が外れることがすごく多いんです。中国で感染が始まったときに今のような事態になるかは専門家の間でも予想が分かれてました。僕はここまでのことになると、実は思ってなかったんです。だから最初自分のブログでも「そんなに騒ぐ必要はありません」と書いたんですが、実際はこうなりました。オリンピックまでにワクチンはできますか? と聞かれたときも僕は「絶対できない」って答えてたんですが、できました。感染症専門医でも予想外のことがよく起こるので見極めが難しいんです。

◆これまでにないほど、『感染症専門医』がクローズアップされています。他の専門医に比べると一般にはあまりなじみのない専門ですが、佐藤先生が志した理由は何だったのでしょうか?

最初は整形外科医になりたかったんです。整形外科医は、交通事故でいろんなの所の骨がいっぺんに折れたりする多発外傷の患者さんを診る花形なんですけど、救命救急で研修しているときにそういう患者さんが運ばれてきてもピンとこなかった。でも感染症の患者さんを救おうとなった時にアドレナリンが出たんですよ。コロナもそうですけど感染症は悪くなると一気に悪くなって、抗生物質を使うと逆に一気
に良くなる。亡くなってしまうか救えるかっていう領域なんです。そこが学問として、とても興味深かった。あとは旅行が好きで海外旅行によく行ってたんですけど、そこでマラリアとかデング熱とか地域特有の病気があるっていうのもすごい興味深くて、感染症の専門医になったんです。

◆コロナで我々の生活は大きく変化しました、医療の現場でも何か変化はあったのでしょうか?

みんなよく手を洗うようになりました。一般の方に比べれば、医療現場はもともと手はよく洗っていたんですが、僕ら感染症専門医から見ると、一般の医師や看護師が手を洗う回数は、正直これまで足りてなかった。でもそれが今はかなりの回数になっています。(コロナの流行以降)アルコールの消費量が何倍にも増えてるんですね。それから、病院の作り方も、換気が十分にできる仕組みや、ドアもなるだけ
手を使わないように、把手をわざと大きくして肘で開けられるようにしたり、自動ドアにしたり今後変わってくると思います。

常にアップデートしていく情報を精査し、正しい情報発信を心掛けている佐藤先生。さまざまな質問が投げかけられるなかで、自身の責任として「答えがないことに関しては正直に分かりませんと答えるようにしています。(分からないことには)エビデンスが蓄積していくのを待つしかないです」と自省の思いを込めて語る。

◆テレビを中心に、見ない日はないほど精力的に活動されていますが、その原動力はなんでしょうか?

これはヤバいなと思ったんです。(コロナが流行し始めた)最初の頃間違ったことを言っている人が多かったんですよね。それが感染症専門医の間で「このままでいいのか?」と。それでやっぱり正しく情報を伝える人が必要だ、みたいな話になったんです。大学病院の先生方は広報を通したり動きづらかったんでしょうか? クリニックで1人でやっている僕がたまたま出ることが多くなったんだと思います。

◆メディアでの発信やご自身のクリニックでの勤務でとてもお忙しいと思うのですが、オンオフの切り替えはどうされてるんですか?

飲み会やお酒を飲むのが大好きなんですけど(笑)、飲み会がなくなったじゃないですか。だから夜の時間がすごい空いたんですよね。そういう時間に論文を読んだり、オフでも「明日テレビ出演があるから新しい情報をチェックしなきゃ」とかってなっちゃう。真面目に仕事してるな、って感じですね(笑)。でも感染症専門医はやっぱり今が一番頑張り時だと思うので、今しっかり働いて落ち着いたらゆっくり休もうかなと(笑)。大学病院に勤務している医者ってよく他の職種の人にワーカホリックだと言われたりするんですけど、僕の場合、開業したばかりだったのでまだその時の癖が抜けていなくて、ワーカホリックでも気にならないんだと思います(笑)。

最後にあらためてコロナの感染予防について聞くと、佐藤先生は「バンドル」という言葉を教えてくれた。

「バンドル=束って意味なんですね。医療現場でよく使われる言葉なんですけど何か一つのことだけやっても感染予防って達成されることはないんです。今回のコロナも手洗いだけしてても全然ダメで、手洗いもして、マスクもつけて、距離もとって、換気もして、もっと言うとよく寝ないといけない。さらに体調が悪いときは休むというのも一つの対策なんですよね。これを全部、束になって、まとめてやらな
いとこの感染症って抑えられないんです。よく『何かひとつだけ感染対策を教えてください』とか聞かれるんですが、それは無理なんです。全部やらないとダメなんですよ。そのどれかひとつでも抜けちゃうと、感染するリスクがぐっと上がる。『バンドル』を意識して全部やる。言われている感染対策を全部やるというのが、難しいかもしれないですけど一番大事です」

3月6日の放送では、佐藤先生による「コロナ流行の影で見過ごされてしまいがちな新現代病」の授業が行われる。論文などデータに裏付けられた最新情報は、健康な人にとっても必見の内容となっている。

『世界一受けたい授業』
日本テレビ系
2021年3月6日(土)後7・56~8・54