本郷奏多インタビュー「山田孝之さんは唯一無二の存在」映画「闇金ウシジマくんPart3」に出演

特集・インタビュー
2016年09月21日

真鍋昌平の人気コミックを実写化し、ウシジマ社長(山田孝之)率いる闇金業者「カウカウファイナンス」と、借金苦にハマっていく人々の姿を鋭く描きだした「闇金ウシジマくん」シリーズ。映画第3作「闇金ウシジマくんPart3」(9月22日(木・祝)公開)、そして第4作「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」(10月22日(土)公開)の2作連続公開を持ってフィナーレを迎えるのに先立ち、「Part3」に出演する本郷奏多さんにインタビューを敢行。ウシジマたちをも巻き込み、人生の一発逆転を懸けてフリーエージェント業界でなり上がろうとする青年・沢村真司を演じた本郷さん。「闇金ウシジマくん」の魅力はもちろん、「役者業」や「お金」についても本音で語ってくれました。

久しぶりに普通の人間を演じられたという感覚があります(笑)

本郷奏多

――原作はお金をめぐるかなりヘビーな内容の漫画ですが、どんな印象をお持ちですか?

もともと好きで読んでいた漫画なんです。ただ、読み終わった後にメンタル面がマイナスになるというか…。そういう“強い作品”だと思います。

――今回出演するに当たり、過去のドラマや映画はご覧になったんでしょうか?

見させていただきました。実写で見るからこそ、受けるダメージもさらに増えるなと。生々しい部分が、非常に実写向きだなと思いました。あとはやっぱり、ウシジマを演じる山田さんの存在感ですよね。何を考えてるのか分からないウシジマの怖さを山田さんが魅力的に表現されていて、とてもいい実写作品だなと思いました。

――フリーエージェント業界にハマっていく沢村真司という役は、どうとらえていますか?

真司みたいな若い人って、たくさんいると思うんです。自分が何者かになりたいとか、お金持ちになりたいっていう思いって誰しもが持ってるじゃないですか。真司もまさにそういうタイプの人間。ただ、自分から一歩踏み出せるかどうか。真司はその部分でほかの人と差がついたキャラクターなのかなと思います。

――一歩踏み出した真司は、着る服も住むところも変わっていきますよね。お芝居でも何か変化をつけたのでしょうか?

真司がプライベートのときは、お芝居を変えたつもりはありません。でも、真司が人前で何かを発信するときは、彼の中で変えてる部分が絶対にあったと思うんです。そこは意識しましたね。

――本郷さんはこれまでも漫画原作のキャラクターを演じてらっしゃいますが、今回の真司は、リアルに世の中に存在するようなとても現実味のあるキャラクターですよね。それは同じ漫画原作のキャラクターだとしても役へのアプローチは変わってくるのでしょうか。

そうですね。これまで僕がやらせてもらってきた漫画原作の作品って空想の世界を描いたものが多いんです。「進撃の巨人」とか「鋼の錬金術師」にしても、現実には起こりえない物語じゃないですか。でも、今回はそういう作品ではないので、同じ漫画原作でもお芝居の組み立て方、取り組み方も全く違いました。久しぶりに普通の人間を演じられたという感覚があります(笑)。それに、真司という役は、原作にベースとなったキャラクターはいるんですけど、名前が変わってるんです。ということは、そのキャラクターを再現することは正解じゃないっていう僕へのメッセージなんじゃないかと。だから、今回に関しては原作のキャラクターを意識することはゼロでした。

――演じる上で大変だったことはありますか?

特に何かがキツかったということはなかったですね。体力的な面でも精神的な面でも。ただ、作業着姿のシーンがあるんですけど、圧倒的に似合ってなくて、別の意味でキツいなと思いました(笑)。周りのスタッフの微妙な空気も感じてましたけど、こればかりはどうしようもないですから(笑)。

役者業は「かなりギャンブル的なもの」

本郷奏多

――真司に共感できる部分はありますか?

やっぱり、何かを変えたければ自分から行動を起こさなきゃいけない。当たり前のことだと思うんですけど、実はそれができる人間のほうが圧倒的に少ない。僕はわりと思い立ったらすぐ行動するタイプなので、そこは真司に共感できますね。

――真司の行動は危ない橋を渡ることになるわけですが、本郷さん自身、そういう経験は?

まぁでも、役者という仕事自体がかなりギャンブル的なものですからね。

――りな(白石麻衣)が真司に言うせりふで「すべてを賭けて勝負する人が好き」というものがありますが、俳優もまさにそういう仕事になるのでしょうか?

そのとおりだと思います。明日何があるか分からない世界ですし、たとえ自分が悪くなくても仕事ができなくなる可能性だってあるわけで。常にリスクと隣り合わせで、むちゃくちゃ怖い職業だなと思います。でもその分、やり甲斐もあるので、リスクがあるのはしょうがないかなと思って日々、粛々と過ごしてます。

――リスクを負ってまで続ける、俳優という仕事のやり甲斐はどこにあると感じていますか?

やっぱり、ものすごく多くの人に、自分の仕事や表現しているものを評価してもらえるというのがこの仕事の一番の魅力。それがやり甲斐につながってるんだと思います。

――そう思えるようになったのは、いつごろからですか?

高校生ぐらいからですかね。映画やドラマに出させていただく機会が多くなって、やり甲斐も感じられるようになってきて、一生この仕事をやっていきたいと思うのと同時に、露出が増えれば増えるほど普通の生活には戻りづらくなっていって。顔もどんどんバレていきますから。

――劇中で「なぜそんな厳しい仕事をやっているのか?」と聞かれたウシジマが、彼らしい簡潔なひと言を言い放つシーンがありますが、本郷さんだったら何と答えますか?

「もう戻れないから」ですかね。ほかにやりたいことや興味を持ってることもありますけど、やっぱりもう、どこへ行ったとしても僕が今までやってきたものってみんな知っているので、今の道を進み続けるしかないんですよね。

山田孝之さんは唯一無二の存在

本郷奏多

――山口雅俊監督とはどんな打ち合わせを?

監督は真司っていう人物像についてはもちろん、芝居でこういう動きをしてほしいってところまで、考えがすごく細かく、多くある方だったので、密に話しました。監督のやりたいものをなるべくそのまま、イメージどおり体現することを心がけました。

――本郷さんのほうから山口監督に提案したことはあるんですか?

大きなところではないです。僕は全部のシーンを見てるわけではないですから。すべてを統括している監督のおっしゃることが僕は絶対だと思ってるので、言われたとおりやるようにしています。

――主演の山田孝之さんとは何かお話されました?

現場ではあまり話さなかったですね。真司はウシジマたちと仲良くする役でもなかったので。ただ、山田さんをはじめとする「カウカウファイナンス」の皆さんのチームワークはやっぱりすごかったです。僕は「本物がいる!」と思って見てました(笑)。

――本郷さんが思う山田さんの魅力は?

深い人ですよね。きっとものすごく頭もいいでしょうし、それでいて、ヘンなことをやってもカッコいい。ほかの役者さんだったら成立しないんじゃないか、スベってしまうんじゃないかってことも、山田さんがやるとピタっとハマる。ほかにはいない、唯一無二の存在だと思います。

――りな役の白石麻衣さんとの共演はいかがでした?

それがほとんどしゃべった記憶がないんですよ(笑)。共演シーンはまぁまぁあったんですけど。ただ、りなっていう女性は魅力的でなければならないと思っていて、そこは白石さんだからこその説得力があるんじゃないかと。

――浜野謙太さんの天生先生役もハマってて面白いですよね。

浜野さん自身がすごく楽しそうに演じてらっしゃるのが印象的でした。天生先生はいつもたくさんのきれいな女性を引き連れている役なので、カメラが回ってないところでもすっごく楽しそうでした(笑)。

――そのほかにも非常に濃いキャラクターぞろいで。

そうなんですよ。前野(朋哉)さんのしんこch.役も面白いですし、あと、苅部(月見草しんちゃん)とモエコ(さくらゆら)が2人でしゃべってる1分くらいのシーンがあるんですけど、あの中身のない、本当にくだらない内容といい、あえて棒読みで演じてらっしゃる感じといい、僕は大好きです(笑)。濃いキャラクターがいろんな方向にいると作品に幅が出るし、それも「ウシジマくん」の魅力なのかなと思いますね。

――もしもお金がたくさんあったら、何に使いますか?

その「たくさん」のレベルがゴールのものでなければ、僕はお金を増やすためにお金を使います。

――ゴールのものだったら?

自分の好きなことをすべてするでしょうね。たぶん僕は、一生好きなことができるだけの額が集まった瞬間、仕事を辞めると思うんですよ。まぁでも、日本で役者を続けている限り、そんなことってなかなかないと思うんですけど。例えば漫画家だったら、それだけの大金を手に入れられる可能性もあるかもしれない。もし僕がそうなったら、連載途中だったとしてもきっとペンを投げ出してますね。

――最後まで描き切ってくれないんですか?(笑)。

そうですね。本当にトップオブトップの人たちって、人のためにやってらっしゃると思うんです。つまり、お金は二の次、三の次。

――小さいころのお金にまつわる思い出ってありますか?

僕は、小さいころからお金のことを自分なりの意見を持っていたと思いますね。小学校の同級生がお小遣いやお年玉を貯金して「何万円貯まった!」と言ってる一方で、僕は大人になってバイトをすればその額が5日もあれば稼げると分かっていたので、駄菓子屋で豪遊してました(笑)。

――駄菓子屋ってところが子供らしくて安心しました(笑)。じゃあ最後に、「ウシジマくん」と言えば“かわいいものしりとり”がおなじみですが、本郷さんの“3大かわいいもの”を教えていただけますか?

真っ先に思いつくのは、僕の愛犬のラミですね。もう8歳になるんですけど、本当にかわいくて。あとは、子供ですかね。実は子供好きなんです。

――じゃあ、ゆくゆくは結婚して子供を持ちたいと?

子供は欲しいですね。ラミもそうなんですけど、子供も自分がいないと死んじゃうじゃないですか。だから、どうしたって自分が面倒を見てあげないといけない。そう決まった存在なので、たぶん僕は子供にこそ、無心の愛を注げるんじゃないかと思っていて。人生の残る1つの楽しみです。あとは何でしょうね。うーん…ピカチュウかな。以上です(笑)。

PROFILE

本郷奏多

本郷奏多
●ほんごう・かなた。1990年11月15日生まれ。O型。宮城県出身。2002年に映画「リターナー」で俳優デビュー。2005年には映画「HINOKIO」で、 14歳ながら初主演を果たした。以降、映画「テニスの王子様」「NANA2」「GANTZ」シリーズ、「進撃の巨人」、ドラマ『弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~』『アカギ』など数多くの作品に出演。荒川弘の同名コミックを実写化した「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」(17年公開予定)が控える。


作品情報

映画「闇金ウシジマくんPart3」

映画「闇金ウシジマくん Part3」
9月22日(木・祝)公開

<STORY>
派遣の仕事で食いつなぐ真司(本郷)は、町で撮影中のタレント・りな(白石)を見かける。一生縁のなさそうな美人に、社会の格差を痛感する真司。そんな中、「誰でも稼げる」という塾を主宰するネット長者・天生(浜野)の広告を見てセミナーに参加したのをきっかけに、真司は本気で人生の一発逆転を狙おうと決意する。いっぽう、サラリーマンの加茂(藤森慎吾)は、妻帯者でありながらキャバクラ嬢の花蓮(筧)を落とそうと店に通い続け、同僚からは金をゆすられる始末。それぞれの理由で金が必要になった真司と加茂は、「10日で5割(トゴ)」という違法な暴利の金融屋、ウシジマ(山田)率いる「カウカウファイナンス」を訪ねて…。

<STAFF&CAST>
監督:山口雅俊
原作:真鍋昌平
脚本:福間正浩、山口雅俊
出演:山田孝之、綾野剛、本郷奏多、白石麻衣、筧美和子、最上もが、藤森慎吾、浜野謙太、高橋メアリージュン、崎本大海、やべきょうすけほか
主題歌:Superfly「心の鎧」(ワーナーミュージック・ジャパン)

(C)2016真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん3」製作委員会

公式サイト(ymkn-ushijima-movie.com

 

●photo/金井尭子 text/甲斐 武 hair&make/高橋幸一(Nestation) styling/川地大介 衣装協力/STUDIOUS