『テイオーの長い休日』松本圭右Pが明かす“仕事がなくなった2サスの帝王” を船越英一郎主演でドラマ化するまで

ドラマ
2023年06月09日
『テイオーの長い休日』©東海テレビ

船越英一郎が主演を務めるドラマ『テイオーの長い休日』(東海テレビ/フジテレビ系 毎週土曜 午後11時40分〜深夜0時35分)より、松本圭右プロデューサーのコメントが到着した。

リアル2時間サスペンスの帝王・船越英一郎が 「仕事がなくなった2サスの帝王」を演じている本作。時代の流れでテレビ局が2サスを作らなくなった結果、主人公の熱護大五郎(船越)は、1年以上仕事がない状態に。

元敏腕マネージャーの吉田ゆかり(戸田菜穂)は復職し、熱護のマネージメントをすることになったが、熱護の「自分ルール」に縛られ、なかなか次の仕事が決まらない。バラエティには出ない。SNSもやらない。台本が面白くなければ出ない…。

時代に合わせて変わればいいのに、変われない不器用な男。しかし、そんな男が周囲の悩める人間を前向きに変えていくストーリーになっている。なぜ、船越でこのドラマを作ったのか、その狙いは何なのか。松本プロデューサーが語った。

プロデューサー・松本圭右 コメント
『テイオーの長い休日』©東海テレビ

◆まず、このドラマが誕生したいきさつを教えてください。

そもそもの始まりは、船越さんとずっと一緒に仕事をして、それこそ何十本もの2時間ドラマを作られてきたホリプロの井上竜太プロデューサーとの出会いでした。“2サスの帝王”という唯一無二の存在である船越さんで、ドラマを作りたい。しかも、土曜の夜に見てもらうものとして、大人の鑑賞に堪えられる“骨太なドラマ”を描きたい。そうしたところから、アイデア出しが始まったんです。

視聴者にどういうメッセージを伝えるか。これが何よりも大事でした。そんな中、何で2時間ドラマは作られなくなったのだろうとあらためて考えまして…正直、そこにはスタッフやキャストにはどうしようもない「時代の流れ」というものがあったのではないかなと。それってもしかしたら、企画のキーになるんじゃないかと思ったんです。

ここ数年、時代が令和に変わったり、社会情勢も変わってきている中で、自分の思いとは違うところで壁にぶつかっている方も多いんじゃないでしょうか? でも、それって誰のせいでもないと思うんです。悲しいけれど、時代はどんどん変わっていくものなので。それに、その時代を作ってきたのは間違いなく、これまでの人生のはずですから、それを否定する必要もないと思ったんです。そう気づいた時に、「今まで生きてきた道を貫くことだって、いいんじゃないか。そう! それでいいんだよ」と、エールのようなことを届けられたらと思い、あえて、“仕事がなくなった” 2サスの帝王を、船越さんに演じていただく内容としました。

◆企画のアイデアは出たが、肝心の船越さんにOKをもらえるかどうかは、やはり不安だったと。

こういう企画で、1年以上仕事がない2サスの帝王なんですけどいかがでしょうか? とご本人にプレゼンするのは…本音を言えば怖かったです。場合によっては、それこそ熱護のように「ふざけるな! こんなのに俺は出ないぞ!」と却下されても仕方ない設定でしたから(笑)。でも、船越さんは、企画の意図に乗ってくださって「面白いね」と言ってくださったんです。その後は、もっとこうした方がよりメッセージが伝わる、もっと面白くできる、というアイデアもくださって。

第1話では冒頭で、熱護が自宅でコーヒーを飲むシーンがあるのですが、台本ではそこは普段の熱護のつもりだったんです。でも、「ここからもう演じたキャラで見せた方が面白いんじゃないか?」とアイデアをくださって、放送した形になりました。でも、それって実は演じる側にはものすごくカロリーが高いことなんです。まずは船越さんが2サスの帝王の熱護を演じる。その熱護がさらに別のキャラを演じるんです。船越さんではなくて、熱護としてキャラを作るので、正直、船越さんの負担は普段の3倍以上じゃないかなと。でもそんな時に船越さんがおっしゃった言葉が印象的で…。「自分(船越)は今まで、いろいろな作品に出てきたけど、こんな、一つの物語の中で何役もやらなければならないような話は初めてだ。この年になってまだチャレンジさせてくれて、ありがとう」と。それを聞いて“ああ、船越さんが帝王で居続けられる理由は、まさにこの部分なんだな”と感動しました。船越さんは常に成長を止めない。それこそが帝王の帝王たる理由なんだなと思いました。

『テイオーの長い休日』©東海テレビ

◆第1話の放送では、船越のこれまでの作品をほうふつとさせる扮装での登場に、SNSでは「面白すぎる!」「2サス好きにはたまらない!」という反応が。

放送はリアルタイムで自分も見るのですが、皆さまの温かな反応が本当にありがたく、“見ていただきありがとうございます!!”と放送後もずっとSNSを見てしまって…そんな中、「熱護大五郎の語る言葉は、悲しいくらい古くさい。でも心に響くものばかりだ」というコメントを見つけて思わず涙が出そうになりました。それこそ、このドラマの狙いそのものだったので。
実は熱護は弱者の代表なんです。作品がなければひとりでは何もできない。あらがおうにもそのチャンスすらもらえない。船越さんが演じるのでぱっと見、弱くは見えないのですが(笑)、実は熱護こそが救われるべき弱者なんです。それでも熱護は自分を信じ続けている。弱者だからこそ、その強さ、言葉は、劇中の悩んでいる人々にも届くんです。

上から偉そうに言われても、人って素直に聞けないじゃないですか? 対等だからこそ、響く言葉ってあるんじゃないかと思うんです。それが視聴者の人にも届いていたんだと思って…このコメントを見つけた時は、本当にうれしかったです!

◆この作品には「テレビ業界モノ」のドラマとして、また深い意味が込められていると

ホームコメディということで、ぶっ飛んだ展開や、設定なんかも盛りだくさんにしているのですが、ストーリーの中で解決されていく悩みは“リアル”なものにしようと決めていました。そうしないと、ただの別世界の話になってしまうので。なので、ドラマの中で登場人物たちが言うせりふには、過去にわれわれスタッフの誰かが実際に言われたり、そういうことを感じた、という言葉が盛り込まれています。ドキュメンタリーに近い感覚で、自分たちの心の中のキズをさらけ出して作っていると言ってもいいかもしれません。誰かから傷つけられたキズ、逆に誰かを傷つけてしまった後悔のキズ…本当にいろいろなキズがあるんだな、とあらためて痛感しました。

似たようなキズは、どんな業界の、どんな職場でもあるのではないか、と思います。そのキズをあえてえぐり出して、キズを負った人間たちがその先をどうやって生きていこうとするのかを描くことで、そこに希望を見出せたら、と思ってこのドラマを作っています。手前勝手なことではありますが、それを見た視聴者の方が「あ、こんなやつらが頑張っているんだから、オレも頑張ろうかな、ワタシも頑張ろうかな」とか思っていただけたら、幸せかな、と思っています。

『テイオーの長い休日』©東海テレビ

◆もしかしたら“船越さんのキズ”も…。

台本作りでは、プロデューサー、監督、脚本家、みんなが自分たちの体験を話しながら、ある意味、せりふドキュメントを作っている感覚があります。特に第2話は工藤遥さん演じる新人脚本家が、台本打ち合わせでものすごく苦労する話なのですが…自省の念もこめて、結構ひどいプロデューサーが登場したりもしています(笑)。

そんな中、それこそ船越さんのことを誰よりも知っている井上プロデューサーも台本作りには参加しているので…もしかしたら、「船越さんご本人のキズ(思い出?)」もどこかに反映されているかもしれません。
制作の現場に居る僕らも、「これはもしかして、リアル船越さんの姿なのかも…」と思いながら撮影しているシーンもあったりするので、視聴者の皆さまには、そういう楽しみ方もしていただけると、面白さがいっそう増すかもしれません。ただ最後に一つだけ声を大にして言いたいのは……船越さんは熱護と違って、めちゃくちゃいい人です!(笑)

第2話(6月10日放送)あらすじ

元2サスの帝王・熱護大五郎(船越英一郎)のマネージメントをすることになった吉田ゆかり(戸田菜穂)は、なぜか熱護の家で3人の子供たちも含めた奇妙な同居生活を強いられることに。そんな中、ゆかりは7年前まで担当していた人気俳優・伊集院大樹(白石隼也)のつてで、超人気刑事ドラマのゲスト主役の話を持ってくる。しかし、熱護は「この本は欠陥品だ」と却下。自ら脚本家の柏木美遊(工藤遥)に会いに行くと言い出す。熱護を何とかなだめ美遊に会いに行ったゆかり。そこにはプロデューサーに言われるがまま台本を直す美遊の姿があって…。
「仕事をもらうためには仕方がないんです」夢を抱けない新人脚本家に熱護が言う言葉は…。

番組情報

『テイオーの長い休日』
東海テレビ/フジテレビ系
毎週土曜 午後11時40分~深夜0時35分
※『FNS27時間テレビ』のため7月22日(土)は休止

出演:船越英一郎、戸田菜穂、今井悠貴、宮下結衣、石原颯也、平野絢規/白石隼也、久保田磨希、前川泰之、木場勝己
企画:市野直親(東海テレビ)
脚本:入江信吾、川﨑いづみ、諸橋隼人
音楽:仲西匡(カレント)
主題歌:「素顔」上野大樹(cutting edge)
OPテーマ:「Bumpy」Beverly(avex trax)
ナレーション:大和田伸也
演出:吉川鮎太(ホリプロ)、白川士
企画:市野直親(東海テレビ)
プロデューサー:松本圭右(東海テレビ)、井上竜太(ホリプロ)
制作協力:キャンター
制作:東海テレビ、ホリプロ

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