『アイのない恋人たち』最終話　曲がりくねった道を歩んだ真和（福士蒼汰）らアラサー男女7人　自分らしく生きるために出した愛の答えとは

福士蒼汰が主演を務める『アイのない恋人たち』（ABCテレビ・テレビ朝日系全国ネット　毎週日曜　午後10時～）の最終話が、3月17日（日）に放送された。

脚本家・遊川和彦が描くアラサー男女7人のラブストーリー『アイのない恋人たち』。恋愛、親子愛、夫婦愛などさまざまな“アイ”の進展が描かれた第8話の放送後は、「涙で目が真っ赤」「『愛とは許すこと』って言葉が刺さった」「遊川氏の脚本もキャストも最高すぎる」といったコメントでSNSが賑わった。そして迎えた最終話は…。

淵上多聞（本郷奏多）は、「好きだー！」とスマホを放り投げて告白し、冨田栞（成海璃子）がいる長野で一緒に暮らしたいと職探しを始める。しかし、たやすく仕事は見つからない。そこで多聞は、休耕地で有機野菜を作り、カフェを始めようと栞に提案。栞は父・健三（おかやまはじめ）に認めてもらおうと多聞を紹介するが…。

郷雄馬（前田公輝）と近藤奈美（深川麻衣）は、意識を取り戻した雄馬の祖母・元子（丘みつ子）に結婚を認めてもらい、奈美の母・京子（岡まゆみ）にも許しを得ようと再アタック。しかし、会うなりけんか腰になってしまう母娘。状況を打破しようと雄馬が口を開いたとき、奈美が意外な言葉を口にする…。

久米真和（福士蒼汰）は、今村絵里加（岡崎紗絵）と稲葉愛（佐々木希）の2人に告白され、「連ドラを書き終わったら、ちゃんと返事します」と伝えていた。絵里加と愛は複雑な心境で返事を待ち、真和は納得のいく最終回が書けずに苦悩する。そしてついに脱稿したとき、真和が出した結論とは…？

男女7人の“アイ”の結末が描かれた最終話。三角関係になった絵里加と愛がほほ笑ましく“結託”する場面や、高校時代の真和が現れるまさかの展開、栞が多聞のスマホを冷静に探し出す場面など、冒頭からユーモラスなシーンの連続で楽しませた。その一方で、奈美が「アマリリス」を歌うシーンや、真和と愛のハグなど涙を誘う場面も満載で、前話以上に「目が真っ赤」になった人も多いだろう。

今回感じたのは、感謝することの大切さ。奈美の母・京子は、娘の感謝の言葉で心が変化。愛は真和に、真和は絵里加に感謝の言葉を伝えて幸せが伝播する。また印象的だったのは、多聞がスマホなしで長野を歩き回った結果、オーガニックカフェを開くという道を見つける場面。スマホを見ないことで見えてくるものがあるというのも、現代人にとって示唆に富むエピソードだ。

そしてこのドラマらしいと感じたのは、大人になった真和、雄馬、多聞による「チェリー」の大合唱。これが恋愛至上主義時代のドラマなら、カップルのキスシーンなどで終わるかもしれない。しかし友愛、親子愛、兄妹愛などさまざまな「アイ」を描いてきた本作には、このほほ笑ましい最後がふさわしい。恋愛や結婚をしなくても生きていけるけれども、ひとりぼっちは嫌だ。「ここにいる」ためにも、支え合える人がいてほしい──。そんな現代人に寄り添うような、広義の“ラブストーリー”だったと言えるだろう。

今回、SNSのコメントを見続けて思ったのは、アラサー世代の共感を強烈に得ていたこと。また、それ以外の世代にも刺さっていて、「惚れた腫れたは遠い日の花火と化した年齢ではあるが『恋愛とは何ぞや』を真っ白な第1頁目から学び直している気がして、毎回たまらん」というコメントや、「60代の遊川さんがアラサーのリアルな叫びを描いているからこそ、私たちのようなアラサーを過ぎた世代にも響くのかも」といったコメントが印象深かった。

また共感したのは、「これって本当に遊川和彦？」という声。遊川作品といえば、『女王の教室』『家政婦のミタ』のように信念を貫く“曲げられない”主人公が物語を引っ張る印象が強く、本作のように等身大のキャラクターが悩みながら一進一退していく群像劇は珍しい。その意味では、希代の脚本家が、自らの殻を破ろうと挑んだ新境地的作品なのだろう。そこに温かな血を通わせた俳優陣と、綾部真弥監督（『おいしい給食』シリーズ）ら力のある制作陣にも賛辞を贈りたい。