宅間孝行監督「映画史上、誰もしてないようなこともしています(笑)」映画「LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て」

エンタメ総合
2019年01月25日

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 三上博史が14年ぶりの主演を務めた映画「LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て」が現在公開中。

 三上演じる警官の間宮が、愛人のデリヘル嬢の麗華とラブホテルで密会中に妻で警察の詩織(酒井若菜)が乗り込んでくる。取り乱した間宮の拳銃が誤射、麗華に命中してしまう。麗華の死体を処理するために、麻薬売人のウォン(波岡一喜)を呼び出し…。監督は宅間孝行。映画監督、演出家、脚本家、俳優とさまざまな顔を持つ宅間監督は、本作で間宮の盗撮用に仕込んだビデオカメラ目線でのワンシーンワンカットで描くといった長回しの手法を多く用いるなど、挑戦的な映画に仕上げた。宅間監督が本作への思いを語った。

「映画の『寄り』『アップ』に対する考え方、手法、何のために何の効果を持つのか、演出する側は分かってやっているのか? 分からないで単なる結果論なのか、そういうことに常々疑問を抱いていて、それをやる必要が本当にあるのかと。俳優さんは、カメラを感じる、カメラが動く、カメラが演出をしている、大概はこれで成立しちゃっている。現場でカットを割る手法、割ることでごまかしているんじゃないかと思ったんです。顔のアップを撮ると情報量はそれだけなので全然少ないのではないか。映画というものは(登場する)部屋のどこに(俳優が)座るのか、また部屋の色味、色彩等すべてを包括した総合芸術。だから普段見ているものに対して疑問を抱いてしまう。こういうふうに構えたカメラでそこを見せる、もしくは映る背景であったり。そこで役者が動く。『LOVE涯て』は長回しだから撮り直しがきかないし、かなり勇気が要ることです。役者がきちんと仕事するっていうことを見せたいのと俳優が移動することによって変化することも見せたかったんですよね」とあるがままの映像表現をしたかったと熱く語った。

「辛辣な言い方をすれば、俳優さんたちがリハーサルして、実は『こういう芝居をして欲しかった』っていうのは厳密にはあるんです。しかし編集しないであるがままを撮る。僕がイメージしたことをほぼ100%体現することが本当にいいことなのかどうかっていうのは定かではない。俳優さんの個性が加味されてそれで純粋にいいわけでもない。本当はこういうふうにして欲しかったけど、こっちの方が良かったねっていう部分はあります。自分の中では狙い通りっていうか狙い以上」と出来上がりに自信を持つ。

 盗撮しているビデオカメラの視点で描かれるので、映像が揺れたり、あるいは顔が半分切れてしまったりする場面など普通の映画ではNGカットとも思われるシーンもある。

 宅間監督は「これは完全にのぞき見なんです。盗撮しているみたいなリアリティー。こういうタイプの映画なんです。10人中1人が『いい』って言ってくれればそれでいいんです」と語る。
 
この一風変わった現場での雰囲気については「皆さん、スタッフさんも含めて全員がモチベーションが高くチャレンジングなものを作る意識が高かった!本当はこういうものがやりたくて役者になった、言い換えれば人間のドロドロしたものをやりたくて俳優やっているはずだというがすごく分かりました」と。

「本編は1カットなんですけど、思いっきり人が写り込んでいるのが結構いっぱいある、それをどう処理するのかっていう時にCGという案も出たんですが、CGはとてつもないお金がかかる(笑)、お金はかけたくないので、それで頭を使って編み出した部分、アイデアがたくさん湧いてきてそれが面白かった。カメラマンと相談して編集はしたんですが、映画史上、誰もしてないようなこともしています(笑)。隠しカメラってすごいアイデアかも」と笑顔で撮影を振り返った。

映画「LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て」
テアトル新宿ほか全国にて絶賛上映中

監督・脚本:宅間孝行 
出演:三上博史 酒井若菜 波岡一喜 三浦萌 樋口和貞 伊藤高史 ブル 世戸凜來/柴田理恵 阿部力

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