TBSテレビがゲーム事業に本格参入する理由とは?「TBS GAMES」鳥居翔が語るIPの出口と入口、そしてテレビ局ならではの強み

特集・インタビュー
2023年09月05日
TBS GAMES

TBSテレビが、2023年7月5日に自社ゲームブランド「TBS GAMES」のティザーサイトをオープン。TBSグループが進めるオリジナルIPの開発・拡張戦略「EDGE(Expand Digital Global Experience)」の一環として、ゲーム事業へ本格参入すると発表した。その後、同年9月1日には「TBS GAMES」第一弾となる『風雲!たけし城』のゲームが、グローバル没入型プラットフォーム「Roblox」にて配信スタート。今後もさまざまなゲームをリリースしていく予定だというが、実際にどういった展開を考えているのだろうか。

今回は、株式会社TBSテレビ 総合編成本部 新規IP開発部の鳥居翔さんにインタビュー。 「TBS GAMES」立ち上げの経緯から、今後の展望についてお話を聞きました。

既にオリジナルゲームの検討も行っています

◆本日はよろしくお願いします。最初に、TBSテレビがゲーム事業を取り組むことになった経緯やきっかけを改めて教えてください。

TBSグループでは「VISION2030」という経営指針のもと、2030年に向けて放送事業以外での収益を伸ばしていこうとしています。そのためには、オリジナルIPの開発が重要課題だという考えのもと、2022年7月にIP戦略推進部(鳥居さんが所属している現新規IP開発部)という部署が設立されました。そこでまだTBSが取り組んでいない、特に放送局のコンテンツとのシナジーが発揮できる有望なIPビジネス領域について外部のスペシャリストと一緒に徹底的に研究を行った結果、いくつかの候補と共に、ゲーム事業に本格的に取り組むべきという方針が固まりました。

◆ゲームが候補に挙がった理由は?

TBSでは「VISION2030」達成に向けて、「EDGE」というコンテンツ拡張戦略を掲げています。こちらは、「デジタル分野」「海外市場」「エクスペリエンス(ライブ&ライフスタイルなどを体験するリアル事業)」の3分野を伸ばしていくという戦略です。ゲームはデジタル分野であり、グローバル展開もしやすいコンテンツで、eスポーツなどのイベントも昨今は活発ということで、TBSがいま進んでいこうとしている領域にマッチしているんですよ。そうして、2023年3月頃にゲーム事業を立ち上げることが社内で決定しました。

◆これまでにもTBS関連の番組がテレビゲームになったことがありますが、そういったものと「TBS GAMES」が展開するゲームは方向性が違う?

確かに、これまでもTBSの番組がゲームになることはありましたが、そちらは番組の制作陣がライセンスを扱う部門と共に個別に検討して、ゲーム会社さんにライセンスアウトする形で取り組んでいました。一方の「TBS GAMES」では、これまで個別対応していたものをゲーム専門部署として一元管理することで、効率化やクオリティの向上を図ります。また、ライセンスアウトしてあとはお任せという形だけではありません。作品によっては我々のほうも出資して、ゲーム会社さんと一緒にクオリティコントロールをしていきます。作品作りにも積極的に入っていくというのが、今までとの大きな違いですね。また、今後は番組関連以外のオリジナルゲームも作っていく予定です。

◆まずはTBSさんが持っているIPを活かしつつ、今後は番組などとは関係ないオリジナルのゲームを作っていく。

そうですね。ただ、時期や順番を決め込んでいるわけではないため、既にオリジナルゲームの検討も行っています。

◆これまでもエンタメ事業に関わってきたTBSさんとはいえ、ゲーム事業という新しい取り組みをやることは簡単なことではないと思います。

実際「TBS GAMES」が立ち上げるまでは、社内にゲーム事業に関するプロフェッショナルがほとんどおらず、悩みも多かったんです。そこで今年の4月から「サクラ大戦シリーズ」「無双シリーズ」の開発に携わった蛭田健司さんに、本事業の責任者として加わっていただきました。また、現在もキャリア採用の募集をかけており、ゲームのプロフェッショナルを増やしていく予定です。そのなかで、我々自身もゲームに対するノウハウを蓄積していき、「心揺さぶるゲーム体験」を提供できるよう、尽力していきたいと思っています。

◆「TBS GAMES」内にゲーム開発を担えるチームはありますか?

現在のところ、開発部隊は社内にありません。開発に関しては、社外のゲーム会社と協業していく想定です。「TBS GAMES」の人間はゲームプロデューサーとして、先ほどもお話したクオリティコントロール及びマーケティング・事業戦略などを考えるのが主な役割になるかと。

TBS GAMES

任天堂さんのマリオやゼルダみたいに世界で親しまれるIPを作りたい

◆7月5日に「TBS GAMES」のティザーサイトがオープンしました。オープン後、社外からはどのような反響がありましたか?

想像以上に反響をいただき、正直驚いています。既に200以上の問い合わせをいただいており、今でも継続的にご連絡いただいているんですよ。ありがたいですね。

◆まだ具体的なお話は難しいかもしれませんが、今後はどういうゲームをリリースしていく予定ですか?

我々の部署は新規IP開発部なので、最終的には任天堂さんのマリオやゼルダみたいに、世界へ届けられる、世界で親しまれるIPを作りたいと思っています。大きすぎるかもしれませんが、それがいちばんの目標ですね。そこへたどり着くのは相当険しい道のりを超えないといけないので、まずはTBSがいま持っているIP、主に番組を活用したゲームをリリースしていきたいと思います。その第一弾として、『風雲!たけし城』のゲームが「Roblox」にて配信されました。ぜひ一度プレイしてみてください。また、オリジナルゲーム制作にも取り組んでいますので、どんどんリリースしていけたらと思っています。

◆ジャンルやハードなどは問わない?

はい。何かに絞るのではなく、コンシューマー、モバイル、PCゲームなど展開していく予定です。

◆デジタルだけでなく、カードやボードゲームの領域にも取り組むとお聞きしました。

実は既にデジタルゲームのみならず、ボードゲームの会社さんとも打ち合わせさせていただき、企画を検討中です。発表できるタイミングが来たら、またお知らせできればと思います。

◆eスポーツも盛んですが、ボードゲームも世界的に需要があります。

ボードゲームのグローバル展開がすごいということを、いろいろな会社さんからも聞いています。デジタルに比べると低コスト・低リスクで開発できるので、比較的ローンチしやすいのではと期待していますね。

◆TBSさんの番組には、さまざまなタレントの方が出演されています。テレビ局のゲーム事業であれば、もしかしたらそういった方々とゲームを繋げやすいのでは、という期待も勝手ながらにしています。

セガさんの『龍が如く』のような形のゲームを検討したこともありました。ただ、多少のコネクションは活かせるかもしれませんが、ハードルの高さはテレビ局であっても、それなりにあると思われます。難しさはありますが、いつかはそういう取り組みもできたらいいなと個人的には思っています。

◆本日はお話ありがとうございました。最後に「TBS GAMES」にかける意気込みを含めた、読者の方へのメッセージをお願いします。

IPには入口と出口両方の側面があります。入口というのは、オリジナルゲームを開発し、そこから番組や舞台化、グッズ展開をしていくということ。逆に出口は、TBSの番組やアニメ、映画のゲーム化を進めていくことを想定しています。まずはIPの出口としての展開が多くなるかもしれませんが、ノウハウを蓄積していくなかで、オリジナルゲームの制作にもどんどん取り組んでいきたいですね。

◆お話しいただいた出口としての展開は、テレビ局がゲーム事業を取り組むうえでの強みのように感じます。

そうかもしれません。TBSはイベント事業も盛んですし、多くのコンテンツ関連企業を擁しているので、多方面に展開できるんですよ。そのグループの強みを最大限に活かし、さまざまな形でお客様に感動をお届けしたいですね。

次回は、「TBS GAMES」第一弾のゲーム『風雲!たけし城』の開発秘話に迫る。

『風雲!たけし城』

 

TBS GAMESティザーサイト
https://www.tbs.co.jp/tbs-games

●text/M.TOKU