吉澤嘉代子インタビュー「“恋人”という二人きりのテーマを描こうと思った」

特集・インタビュー
2021年03月17日

曲中の「やわらかい」「うつくしい」「おわかれ」などが平仮名表記のせいか、歌詞カードの文字からもこの楽曲の温かさが伝わってきます。ここには何かこだわりが?

「刺繍」では、平仮名の優しさや漢字のロマンチックな印象でコントラストが付けられたらなと思いながら文字の表記を選んだんです。なので「貴方」「私」の人物は漢字に、「やわらかい」「うつくしい」「おわかれ」は平仮名にしようと決めました。私は表記を選ぶことがすごく好きなので、考えるのは楽しかったです。

「刺繍」を含む10曲が収録された、吉澤さんの5thアルバム『赤星青星』が317日(水)にリリースされます。このアルバムに込めた思いを教えてください。

今回は“恋人”をテーマにしたアルバムを作ろうと思っていて。今まで自分自身との対峙や音楽を作る中での初期衝動、子供のころに救われた物語など、内省的なテーマを扱うことが続いていたんですけど、それはもうひと通りやり終えたと思ったので、今回はもう少し関係性を広げて、“恋人”という二人きりのテーマを描こうと思いました。

◆10曲の中で、吉澤さんが特にこだわった曲は?

難しいですね…。強いて言うなら、普段「書き切れたな」と思うことがほとんどない中で、「サービスエリア」は「書き切れた」と思えた楽曲です。かなり時間がかかった曲ではありますが…。私はいつも締め切りいっぱいまで歌詞を考えてしまうので、締切がなければ永遠に直し続けているのではと思います。

歌詞を書くのに時間がかかるほうですか?

ぱっと書き上げることはほとんどないです。例えば「素晴らしいものをひらめいた!」と思ってもそれはその瞬間だけのもので「これで良い」とは思えないんです。前後のフレーズとのバランスや全体のバランス、表記さえも気になってしまって。音楽なので表記はあまり気にしなくてもいい部分ではあるんですが、どうしても気になってしまうんです。そうするといろんな方向からチェックが入ってしまい、いつまでたっても完成しなくなるという…(笑)。

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