坂井真紀が松尾スズキ演出舞台に初出演!「役者として目標の1つ、“やった!”という気持ち」 舞台「パ・ラパパンパン」

特集・インタビュー
2021年11月02日

坂井真紀「パ・ラパパンパン」インタビュー

演出家・松尾スズキと作家・藤本有紀がタッグを組んだ舞台「パ・ラパパンパン」。本作は、150年以上にわたって愛され続ける「クリスマス・キャロル」を下敷きに、女性作家と、彼女が描く物語の住人たちが織りなすファンタジックなミステリーコメディとなっている。そこで、この作品で初めて松尾スズキワールドに挑む坂井真紀さんを直撃。稽古を経て見えてきた作品の全貌や見どころをたっぷりと語ってもらいました。

 

◆脚本、演出、キャストと全てにおいて豪華な舞台ですが、最初に出演のオファーがあった時はどんなお気持ちでしたか?

松尾スズキさんの演出舞台に出ることは、役者としての1つの目標でもあったんです。“いつか出たいな” “出られたらいいな”とずっと思っていて。ですので、お声がけいただいた時は、“やった!”という気持ちでした(笑)。

◆松尾さんの舞台に初参加というのはちょっと意外でした。

松尾さんが監督をされた映画「108〜海馬五郎の復讐と冒険〜」でお仕事をさせていただいたことはあるのですが、舞台は初めてなんです。実際に演出を受けて感じるのは、とにかく優しい!(笑)  こちらがうまくお芝居できない時、そのダメなところを長所に変えてくれる魔法を持っている方で。そのため、私たち役者は臆することなく、自由に演技ができる。どんな表現をしても、いい方向に向くように調整してくださいますし、本当にたくさんの引き出しをお持ちなんだなと、感じています。

坂井真紀「パ・ラパパンパン」インタビュー

◆明確に「こういうお芝居をしてください」と指示されるのではなく、まずは役者のやりたいように委ねてくださるんですね。

そうなんです。こちらが自分で、「そうか、このままではダメだな」と気づくきっかけをくれる。しかもそれを乗り越えると、どんどん自分の役のお芝居が楽しくなっていくんです。そこが、松尾さんの演出で一番感動したところですね。“なるほど、こうやって松尾ワールドはできていくのか!”と肌で感じましたし、その中に役者としていられることが本当に幸せです。

◆では、台本を読まれての印象は?

今作は「クリスマス・キャロル」をベースにしつつ、そこにミステリー要素が加わり、ちょっと複雑で面白い構造になっています。しかも登場人物のほとんどが、松たか子さん演じる小説家・てまりが作り出す物語の中の住人という設定でして。それに、一幕はコメディ要素が強く、後半になるにつれて本格ミステリーになっていく。そうした構造や物語の変化が、とても面白いです。とはいえ、一幕では16人のキャストがほぼ全員ステージ上にいるシーンもあり、たまに役名がこんがらがったりしますけど(笑)。

◆藤本有紀さんの台本の面白さは、どんなところだと感じていますか?

物語の流れがとても軽やかで、楽しいですね。リズム感があって、軽快にお話が進んでいく感じがすごく好きです。藤本さんといえば、NHK連続テレビ小説の『ちりとてちん』や『カムカムエヴリバディ』、それに松尾さんが主人公を演じていた『ちかえもん』など、映像作品を数多く手がけていらっしゃるイメージが強いですが、もともとは舞台を書かれていた方で。ですから、舞台らしいテンポや掛け合いがすごくあって、すっとせりふが入ってくる印象があります。

坂井真紀「パ・ラパパンパン」インタビュー

◆そうした中で、坂井さんが演じるのはベスという女性です。

ベスは元になっている「クリスマス・キャロル」にも登場する役。小日向(文世)さん演じる、嫌われ者のスクルージの会社で働くボブの妻であり、足の具合が悪い息子・ティムの母親でもあります。「クリスマス・キャロル」での彼女はそれほど目立った活躍をするわけではないのですが、ボブやティムの存在は原作の中で結構大きくて。そこを意識するわけではないのですが、今回の舞台ではとにかくティムをかわいがって、かわいがって、愛しぬいていこうと思っています(笑)。

◆ボブ役の村杉蝉之介さん、ティム役の川嶋由莉さんとの共演はいかがですか?

村杉さんは、私がイメージするボブそのものという感じです(笑)。飄々としつつ、家族をすごく大事にしてくれて。それに、クセのある登場人物が多い中で、もしかしたらボブは一番の常識人かもしれないと思っています。二幕では大活躍しますし、そこに向けて村杉さんがどんなお芝居をされるのかもワクワクしています。ティムは…とにかくかわいい(笑)。日に日にかわいさが増していっています(笑)。川嶋さんは一緒にお芝居をしていると、本当に7歳の男の子に見えますし。お2人との家族のシーンは演じていて、いつもすごく楽しいですね。

坂井真紀「パ・ラパパンパン」インタビュー

◆また、今作ではベスに限らず、登場人物たちがところどころで毒づくせりふがあるのも面白いです。

私もつい笑っちゃいます(笑)。“えっ、急にそんなこと言うの?”って。それもあって、今回の役作りに関しては、何でもありだなと感じています。ベスには息子をずっと思い続ける母親という一本の柱があるものの、それ以外ではあまりシーンごとで気持ちが繋がらなくてもいいのかなって(笑)。そもそも、私たちはてまりが作り出す物語の中の人間であり、そのてまりが結構いい加減に小説を書いていくので、言動がハチャメチャでも問題ない。今回はそうした気軽さがありますね(笑)。

◆ある意味で、何をやっても許されると(笑)。

そうなんです。いつもだと、“このキャラクターは、こんなせりふの言い方はしないかも…”と考えるのですが、今回は、“いや、これはてまりさんが書いていることだから!”といいわけが立つ(笑)。むしろお客さんには、てまりに操られておかしなことをやっている登場人物たち、というふうに見えたらいいなって。言葉で説明すると複雑に感じますが、そうした二重構造が実に見事で、面白くて。本当によく出来た脚本だなと思います。

坂井真紀「パ・ラパパンパン」インタビュー

◆では、ご自身の役やボブ、ティム以外で気になっているキャラクターはいますか?

みんな目が離せないんですが…皆川(猿時)さんは稽古でも毎回違うお芝居で笑わせてくれて、次に何を仕掛けてくるのか想像がつかないので、その意味でも目が離せない存在です(笑)。それと、やはり小日向さん演じるスクルージが気になりますね。いつもみんなから愛されている小日向さんが、街中から嫌われる役を演じるというのが興味深くて。しかも、ご本人がものすごく楽しそうなんです(笑)。出演者の中で一番年上なのに、誰よりも一番軽やかにお芝居をされていらっしゃるので、いつも刺激をもらっています。

◆ちなみに、坂井さんは普段、ミステリー小説を読まれますか?

実はあまりミステリー小説になじみがなくって。過去を振り返ってみたら、赤川次郎さんの本を読んだことがあるくらいでした。その中でも三毛猫ホームズシリーズや三姉妹探偵団シリーズが好きで、よく読んでいましたね。それ以外で思い浮かぶものといえば…王道ですがアガサ・クリスティの作品であったり、ドラマだと『刑事コロンボ』ですね。

坂井真紀「パ・ラパパンパン」インタビュー

◆そうした作品を読んだり観たりする時は、犯人探しや謎解きを考えるほうですか?

すごく考えますね。“この人かな…、いやこっちかなぁ”って(笑)。中には、ミステリー作品の楽しみ方として、どんどんと秘密が明らかになっていく展開が面白くて、犯人探しなどはあまりしないという声も聞きますが、私はものすごく推理しながら読んだり、見たりしています。

◆その推理は当たっていることが多い?

ほとんど外れます(笑)。まんまと作者のミスリードに引っかかるタイプなので(笑)。今回の「パ・ラパパンパン」も、台本を頂いて、展開を予想しながら読んでいたのですが、まさかまさかのラストでびっくりしました。前半部分で描かれていた笑えるせりふが実は伏線になっていたりなど、一見するとハチャメチャのようで、ものすごくきれいにまとまっていく。しかも最後は温かい気持ちにもさせてくれる作品ですので、ぜひクリスマスに向けて多くの方に見ていただけたらと思っています。

PROFILE

坂井真紀「パ・ラパパンパン」インタビュー

坂井真紀
●さかい・まき…5月17日生まれ。東京都出身。最近の出演作に、ドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』『おかえりモネ』、映画「鳩の撃退法」など。現在、ドラマ『この初恋はフィクションです』(TBS系)『ソロモンの偽証』(WOWOW)に出演中で、公開中の映画「燃えよ剣」と、11月26日公開予定の映画「昨日より赤く明日より青く -CINEMA FIGHTERS project-」にも出演している。

作品情報

坂井真紀「パ・ラパパンパン」インタビュー

COCOON PRODUCTION 2021+大人計画
「パ・ラパパンパン」
2021年11月3日(水・祝)~28日(日) 東京・Bunkamuraシアターコクーン
2021年12月4日(土)~12日(日) 大阪・森ノ宮ピロティホール

(STAFF&CAST)
演出:松尾スズキ
作:藤本有紀
出演:松たか子、神木隆之介、大東駿介、皆川猿時、早見あかり、小松和重、菅原永二、村杉蝉之介、宍戸美和公、少路勇介、川嶋由莉、片岡正二郎、オクイシュージ、筒井真理子、坂井真紀、小日向文世

(STORY)
ティーン向けの小説家・てまり(松たか子)は、いまや鳴かず飛ばずの状態。そんな彼女はある時、「次は本格ミステリー小説に挑戦する!」と宣言してしまう。しかし、これまで一度もミステリー小説を書いたことがないどころか、まともに読んだこともなく、出てくるアイデアといえばアガサ・クリスティーの模倣や穴だらけの設定ばかり。あきれはてる編集者(神木隆之介)をよそに、なんとか「クリスマス・キャロル」の世界を舞台にした物語を書き上げるも、安堵に包まれた瞬間、彼女は自分が書いたストーリーに対し、「犯人は彼じゃない!!」と気づく。そして、書き直すために編集者に連絡を取ろうとした矢先、てまりは思わぬ事件に巻き込まれ…。

 

公式サイト:https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/21_parumpum

 

photo/稲澤朝博 text/倉田モトキ hair&make/星野加奈子 styling/梅山弘子(KiKi inc.)

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2021年11月9日(火)23:59