寺島しのぶ『女系家族』で宮沢りえと激突! 自身は歌舞伎役者の家に生まれて「“なぜウチは…”と思ったこともありました」

特集・インタビュー
2021年12月04日

『女系家族』寺島しのぶインタビュー

◆芳子役の渡辺えりさんとの掛け合いも、見応えがありそうですね。

これまで映像化された『女系家族』では、ここまで叔母さんは前に出てこなかったんじゃないですかね。以前のドラマでは、(芳子を)浅田美代子さんが演じられていました。だから最初、えりさんは「私は浅田美代子さんを意識して演じる」とおっしゃっていたんです。でもいざ現場に入ったら、言っていることとやっていることが全然違うんです。三姉妹よりも存在感が大きくて、全部持っていっちゃう(笑)。あのパワーは素晴らしいですね。

◆さすが渡辺さんですね(笑)。

特に稽古中は、散々笑わせてもらいました。えりさんはやり切る方なので、鶴橋監督もお手上げ状態(笑)。姉妹が主役の話なのに、叔母さんが一番前に出てくるという(笑)。でも叔母さんも、女系家族の中にいて“男に負けず、女が出なきゃ!”というところを読み込んでいるから“我がが、我がが”となるんですよね。だから、すごく説得力があるんです。三姉妹も“我がが、我がが”という感じだから、矢島家に帰ると常にギスギスした空気が漂っているんですけど(笑)。

◆三姉妹と叔母さんが能面をつけているシーンも印象的です。

意図は私にも分からないんですけど(笑)、鶴橋監督のト書きはそういうものなんです。おまけ的な感じでト書きを書くのではなく、監督が本当にやりたくて、映像にしたいことだから書く。必要でないように感じるところをあえて書く鶴橋監督が、私は大好きなんです。いきなり私たちが踊らなきゃいけないシーンなんて、監督が率先して撮影に臨んでいました。でも、撮影が終わった後の監督の満足そうな顔を見て、やっぱりやって良かったなと思いました。

『女系家族』寺島しのぶインタビュー

◆矢島家のような家庭環境は、家族の性格にも影響を及ぼすと思いますか?

思いますね。私は歌舞伎役者の家に生まれて“なぜウチは、男と女で対応がこんなにも違うんだろう”と思ったこともありました。何か、“生まれちゃった”という感じがします。藤代も、長女に“生まれちゃった”。演じれば演じるほど、藤代は本当に長女に向いていないなという思いが強くなりましたから。だけど、総領娘として振る舞わざるを得ないから頑張っちゃって、変な男につかまっちゃって…。でもお父さんは、藤代のそういう性格を見抜いていたんでしょうね。だから、直接伝えることはしなかったけど、藤代に合った指示を遺言として残してくれた。それがお父さんの最後の愛情なのかなと思いました。

◆もしも寺島さんが女系の家庭に生まれていたら、どんな性格になっていたと思いますか?

もう、ピンクの服ばっかり着ていたんじゃないですかね(笑)。私の幼少期は、母が男物みたいな服しか与えてくれなくて。スカートなんて穿いたことがなかったんです。今でも、男の人に囲まれているほうが楽なんですよね。女性らしい人を前にすると照れちゃう。どう接したらいいか、分からなくなっちゃいます。

◆2021年は出演映画も多く公開されました。振り返って、どんな一年でしたか?

作品ごとに新しい監督とお会いできてうれしかったです。若い監督や、面白い作品を撮る方だなと思っていた監督とご一緒できました。「キネマの神様」で山田洋次さんとも初めてご一緒できて、いろいろ挑戦できたのもいい経験になりました。2022年も、また新たな出会いがあるといいなと思います。

PROFILE

『女系家族』寺島しのぶインタビュー

寺島しのぶ
●てらじま・しのぶ…1972年12月28日生まれ。京都市出身。B型。日本アカデミー賞をはじめ、数々の映画賞を受賞してきた名俳優。今年は「ヤクザと家族 The Family」「Arc アーク」「キネマの神様」「空白」と、4本の出演映画が公開された。Netflixシリーズ『新聞記者』が2022年1月13日(木)より配信される。

番組情報

テレビ朝日 2夜連続ドラマスペシャル
山崎豊子『女系家族』
テレビ朝日系
12月4日(土)、5日(日)後9・00~

原作:山崎豊子『女系家族』(新潮文庫刊)
監督・脚本:鶴橋康夫
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:船津浩一(テレビ朝日)、浜田壮瑛(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
出演:宮沢りえ 寺島しのぶ / 水川あさみ 山本美月 ・ 伊藤英明 余貴美子 ・ 渡辺えり 役所広司(特別出演) 奥田瑛二ほか

 

photo/関根和弘 text/林桃 hair&make/光倉カオル(dynamic) styling/中井綾子(crêpe) 衣装協力/ファビアナフィリッピ、TASAKI

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