田中圭インタビュー「おさむさんが僕に当てる役は、あえて役作りをしなくても僕らしさと新たな一面が自然と生み出されるんです」

特集・インタビュー
2021年12月05日

田中圭「もしも命が描けたら」インタビュー

◆なお、今作は黒羽麻璃央さん、小島聖さんとの3人だけの舞台でした。実際に共演されてみての印象はいかがでしたか?

すごく楽しかったです。僕が“流行り病”を患ってしまったことで、皆さんより遅れて稽古に参加したのですが、その時点でお2人は僕が想像していた何倍も完璧にお芝居を仕上げられていて。“そんなに細かい動きまで作り込んでいたの?”と驚くくらいの精度でした。それを見て、“足を引っ張るわけにはいかない”と、僕も新たにスイッチと気合いを入れ直したところがありますし、反対に、お2人もそんな僕の姿を見て刺激を受けてくださったように思います。

◆田中さんが感じた、お2人の役者としての魅力はどんなところでしょう?

聖さんは毎回すごく新鮮なリアクションを取られる方。おさむさんってある程度の動きは演出でつけてくださるんですが、それと違うことをしても、物語が成立していれば何も言わないんです。聖さんも、まさにその日その日の感情を大切にされていて。本当はハグをするシーンであっても、気持ちがそこまで達していないと、あえてハグをしないという選択を取ることもありました。僕もそれに合わせてお芝居を変えていったので、毎日ライブ感があって楽しかったですね。麻璃央は今回、物語の土台を担っているところがあったので、アドリブを仕掛けてくるということはあまりなかったです。おさむさんの演出を忠実に守っているような感じもして。でも、ところどころに遊びを入れてくることもあり、そこは僕も一緒に楽しんでいました。

◆また、田中さんのお芝居も、映像作品や舞台を拝見するといつも自然で、それでいて、どの役もキャラクターが違うのに、必ず“田中さんらしさ”が感じられます。役を演じる上で普段から意識されていることはあるんでしょうか?

僕、役作りというものをしないんです。そもそも役作りの仕方が分かっていない(苦笑)。もちろん、役によっては説得力を持たせるために、見た目を変えていくという役作りの方法はあると思います。でも、体つきを変えていくには相当な時間が必要なので、その時間がない場合は妥協するしかない。それに、役の性格や内面についても、ある程度の共感はできても、100%その人物になりきるのは不可能だと思っていて。なぜなら、殺人犯の心理はやっぱり理解できないですし(笑)。そう思うようになってからは、あえて役作りはしないようになっていました。

◆台本から受ける印象をそのままストレートに役に投影していくということですか?

そうですね。当然、以前演じた役と近いキャラクターを任される時は、まったく同じにならないようにしようと考えます。ただ、それを意識してしまうことで、今度は逆に作りものっぽくなってしまう危険性もあるので、必要以上に意識しないようにもしていて。それにありがたいことに、今おっしゃってくださったように、作品ごとに役が違って見えるという声を頂くことが多いので、あまりそこは気にしないようになりました。

◆では最後に、これから放送をご覧になる方に向けて、田中さんがこの作品を通して感じた思いをお聞かせください。

“死”や“希望”をテーマにした物語ですので、いろんなメッセージが詰まっています。僕の中にも届けたい思いがたくさんありました。でも一番大事なのは、見てくださる方が、何を、どう感じてくださるかですので、僕1人の感想や思いはさほど重要ではないと思っています。ましてや、僕がこの作品でどう見られるかということも、全く気にしていません(笑)。ただ、唯一思ったのが、こうしたご時世ですので、月人としてではなく、田中圭個人として、この作品をご覧になる方にエンタメの楽しさであったり、ハッピーな日々を送ることの喜びや大切さを伝えていきたいと思いました。そうした気持ちになるのはすごく珍しいことなのですが、それが今の僕の使命なんだとこの作品を通して感じましたね。

PROFILE

田中圭「もしも命が描けたら」インタビュー

田中圭
●たなか・けい…1984年7月10日、東京都出身。現在、音楽番組『MUSIC BLOOD』の司会を担当。また、映画「そして、バトンは渡された」などに出演中。12月10日(金)より映画「あなたの番です 劇場版」が公開予定。最近の出演作に、ドラマ『ナイト・ドクター』『先生を消す方程式。』映画「総理の夫」。

番組情報

舞台「もしも命が描けたら」
CS衛星劇場 2021年12月12日(日)後5・30よりテレビ初放送
※本編終了後に、鈴木おさむと出演者3名による座談会を放送
(配信時の座談会映像とは別編集Ver.)

(STAFF&CAST)
作・演出:鈴木おさむ
アートディレクション:清川あさみ
テーマ曲:YOASOBI
出演:田中 圭、黒羽麻璃央 小島 聖

(STORY)
ある日の夜、深い森の中で星野月人(田中圭)は35年間生きてきた自分の人生に終止符を打とうと、ロープに首をかけていた。哀しい境遇に生まれ、画家になる夢も諦めた彼はこの世に絶望していたのだ。が、そんな矢先、不思議な力を得る。最初は半信半疑だった月人も、やがて自分の力の存在を受け入れつつ、それでも変わらぬ質素な日々を送っていた。しかし空川虹子(小島聖)との出会いによって、彼の日常が大きく変わり始める。月人の願いはひとつ。虹子を笑顔にすることだけだった…。

 

photo/宮田浩史 text/倉田モトキ hair&make/花村枝美(MARVEE) styling/山本隆司(style³)

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