間宮祥太朗インタビュー「奇跡のプレーに至るまでの横田(慎太郎)選手と彼を支え続けた周囲の思いを感じ取ってもらえたら」ドキュメンタリードラマ『奇跡のバックホーム』

特集・インタビュー
2022年03月13日

『奇跡のバックホーム』

将来を嘱望されながらも病に冒され、24歳の若さで引退をした元・阪神タイガースの横田慎太郎選手の自伝的エッセイ「奇跡のバックホーム」がドキュメンタリードラマとして映像化。主演を務めるのは、大のタイガースファンでもある間宮祥太朗さん。放送を前に、ドラマを通じて感じた横田選手の魅力や作品に込められた思いを伺いました。

 

◆阪神タイガースの大ファンでいらっしゃる間宮さんにとって、今回のオファーはどのようなものでしたか?

お話をいただいた時、実はすごく悩みました。横田選手のことも存じ上げていましたし、タイガースファンだからというだけで引き受けるには責任重大だなと。でもマネージャーさんから「自分だったら、もし好きな球団の選手の再現ドラマがあれば、同じ球団を応援している役者に演じてほしいと思う」と言われて、確かにそうだなと思ったんです。それに「祥太朗なら横田選手を誰に演じてほしい?」と聞かれて、なかなか思い浮かばなくて。それならば、と覚悟を決めて引き受けさせていただくことにしました。

◆撮影前には実際に横田選手に会われたそうですね。

はい。横田選手から「恐れ多いです」というお言葉をいただき、僕も「いえ、こちらこそ!」みたいな会話をしていました(笑)。その時点ですでに台本も出来上がっていたので、作中で描かれているいろんなエピソードの裏話を聞いたり、当時の心境を伺えたのも良かったです。

◆タイトルにもなっている奇跡のバックホームは横田選手が引退試合で見せたプレーでした。当時の様子についてもお話されたんでしょうか。

はい、ご本人も「すごく不思議な体験だった」とおっしゃっていました。横田選手はプロ4年目で脳腫瘍の宣告を受けて、術後も視力が戻らなかったり、ボールが二重に見えることもあり、そのためフライを捕球する時、つい後ろに下がるくせがついていたそうです。でも引退試合のあの瞬間だけは「何かに背中を押されたような感じがして自然と体が前に出た、その一歩目がなければバックホームも投げられなかった」とお話されていました。まさに奇跡のようなプレーでしたけど、そこに至るまでには本当にいろいろなことがあり、きっと家族や球団関係者、ファンたちの思いが乗った結果のプレーだったんだなと感じました。

『奇跡のバックホーム』

◆撮影はいかがでしたか?

撮影前までは、まだご存命の方を演じることにプレッシャーを感じていました。でも始まってからはそこを意識することはなかったですね。僕が一番大事にしたのは、いかに横田選手が周囲の方に支えられていたかを伝えていくこと。ご本人がおっしゃっていたのですが、両親や家族、それにスカウトの田中秀太さんなどたくさんの支えがあったから、闘病生活や復帰に向けて頑張れたそうなんです。だから僕も、その思いが画面を通して伝わればいいなという気持ちで演じさせていただきました。また横田選手と実際にお会いして感じたのが、人柄の良さ。1時間半ほどの対談でしたが、その短い時間だけでも多くの方から愛される理由が分かったような気がしました。そんな横田選手を演じられて本当に光栄だったなと、今は強く感じています。

◆撮影を通して印象的だったシーンはありますか?

やはり横田選手が引退を決意する瞬間は忘れられないシーンになっています。戦力外などではないですし、相当な覚悟と悲しさ、悔しさなどいろんな気持ちが入り混じっていたはず。今は横田選手も前を向いていらっしゃいますが、決断した時の無念さは計り知れないので、少しでもそういう感情が表現できたらと撮影に挑みました。それにきっとファンの皆さんの中にも、引退の発表を聞いて「お疲れさま」というねぎらいと同時に、今後もチームで活躍をして、やがて球界を代表するバッターになってほしかったという思いもあったと思うんです。そんなファンからの期待を感じ取り、しっかりと受け止めていた横田選手の真っすぐさも、僕はこの作品を通して視聴者に届けたいです。

◆実際にタイガースのユニフォームに袖を通してプレーするシーンはいかがでしたか?

うれしさもありましたが、めちゃめちゃ緊張もしました。一応僕も野球経験者ではあるんですが、当然ながらプロとはレベルが違いすぎるので、横田選手から直接ご指導もいただいてものすごくスイングの練習などをしましたね(笑)。特に大変だったのは、横田選手の左投げ左打ち。僕は右投げ右打ちで全部が逆だったので苦労しました。

『奇跡のバックホーム』

◆なお、本作は横田選手が書かれた自伝的エッセイが原作となっていますが、映像ならではの見どころはどんなところだと感じていらっしゃいますか?

横田さんの引退に至るまでの心情をしっかりと知るには、やはり原作を読まれるのが一番だと思います。一方で、ドラマや映像の良いところは取っ掛かりやすさ。この作品をきっかけに横田選手のエッセイを手に取っていただけたら、こんなにうれしいことはないですし、自分がこのドラマで携わった意義もあると思っています。また本作は、実際のドキュメント映像を組み合わせたり、横田選手ゆかりの方々もご登場されます。より臨場感のあるものになっているので、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。というより、むしろドラマパートの僕の存在が邪魔になっていなければいいなと思っているぐらいです(笑)。

◆ちなみに、もし間宮さんがプロ野球選手になれるとしたらどのポジションを狙いますか?

どこだろう…。子どもの頃はピッチャーをしていたんですが、その理由がずっとボールに触っていられるからでした。少年野球だと、ポジションによっては「今日、一回もボールが飛んでこなかったなぁ」みたいなことがよくあるんですが、その意味ではピッチャーが一番退屈じゃないです(笑)。

◆なるほど。目指すならどんなピッチャーですか?

強気で攻めるタイプになりたいです。往年の名投手で言えば、熱血の星野仙一さんのような。かっこいいし、憧れます。

◆では、間宮さんが感じる野球の魅力とは?

一球一球に戦略があり、ドラマがあるので、見ていてすごく面白いです。また試合展開が流動的ではなく、一球ごとにプレーが仕切り直されるので緊張感がある。このようなことをSNSなどでつぶやいていたら、これまで野球をちゃんと見たことがなかったという人たちから「興味が沸いて見るようになりました」という感想をいただいたりして。ちょっとずつ関心を持ってもらえる方が増えて、僕もすごくうれしいです。

PROFILE

『奇跡のバックホーム』

間宮祥太朗
●まみや・しょうたろう…1993年6月11日生まれ。現在『ファイトソング』(TBS系)に出演中。4月より主演ドラマ『ナンバMG5』(フジテレビ系)がスタート。主演映画「破戒」が7月8日(金)より公開予定。

番組情報

ドキュメンタリードラマ『奇跡のバックホーム』
テレビ朝日系
2022年3月13日(日)後1・55~3・20

【出演】
<ドラマパート>
間宮祥太朗、石田ひかり、丸山智己、三浦景虎、村瀬紗英ほか

<ドキュメントパート>
金本知憲、矢野燿大、鳥谷敬

【スタッフ】
原作:横田慎太郎『奇跡のバックホーム』(幻冬舎)
企画:清水一幸
脚本:ひかわかよ
監督:吉村慶介
プロデューサー:北村誠之、矢内達也、関卓也、手塚公平

STORY

『奇跡のバックホーム』
『奇跡のバックホーム』 ©︎ABCテレビ

2014年度にドラフト2位指名を受け、阪神タイガースに入団した慎太郎(間宮)。プロ3年目で活躍を見せるも、次第に視力低下や頭痛に悩まされ、翌年、脳腫瘍と診断される。一軍復帰を目標に闘病とリハビリに励むが、視力だけは回復せず、2019年9月、1096日ぶりの二軍公式戦で引退試合に挑む。

©︎ABCテレビ

photo/関根和弘 text/倉田モトキ hair&make/三宅茜 styling/津野真吾(impiger) 衣装協力/DELUXE、HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE、BRAND SELECT