『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』古谷徹・武内駿輔インタビュー!作品のテーマは「立場や壁を乗り越えて分かり合える」

特集・インタビュー
2022年06月02日

古谷徹・武内駿輔インタビュー

1979年に放送された日本ロボットアニメの金字塔にして、ガンダムシリーズの原点『機動戦士ガンダム』(ファーストガンダム)。そのテレビシリーズ第15話「ククルス・ドアンの島」を基とした映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』が、2022年6月3日(金)に公開される。同作の中心人物となるアムロ・レイ役の古谷徹さん、ジオン軍の脱走兵ククルス・ドアン役の武内駿輔さんにインタビュー。映画の見どころや、アムロとドアンへの印象などについてお話してもらった。

◆ガンダムファンからも何かと話題のエピソード「ククルス・ドアンの島」が映画化され、いよいよ公開となります。

古谷:まずは再び15歳のアムロを演じられること、(『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を手掛けた)安彦良和先生が監督を務める『機動戦士ガンダム』の映画でアムロを演じられることがうれしいです。ただ、映画化するエピソードが「ククルス・ドアンの島」と聞いたときは正直、驚きました。だって、「ククルス・ドアンの島」はテレビシリーズ第15話で放送された、30分ほどで完結するエピソードですからね。どうやって映画化するのかという疑問はありましたが、一年戦争の流れの中では独立したエピソードだからこそ、成立もしやすいのかなと思いました。

武内:『機動戦士ガンダム』をはじめ、親の影響で70年~80年代のアニメをよく見ていました。声優として、当時から活躍されている先輩方に憧れてもいます。だからこそ、自分が「ガンダム」と名の付く最新シリーズではなく、当時憧れていた『機動戦士ガンダム』の世界に参加できるのがうれしくもあり、光栄であり、プレッシャーでもありました。しかも大先輩の古谷さんが演じるアムロを導くような存在であるドアン役。緊張はしましたが、変に“上手に演じよう”とはせず、等身大の感性に加えて、役をなるべく作り込んでドアンを演じました。

◆武内さんは『機動戦士ガンダム』にどのような印象をお持ちですか?

武内:人が争うというのを味方からの視点ではなく、いわゆる敵側からも描いていて、中立的な立場で視聴できるというのが魅力だと感じています。生まれる前のことなので持っている知識の範囲でしか分かりませんが、当時そういう作品は珍しかったんじゃないかな。その描かれ方に惹かれて、今でもガンダムシリーズは絶対に見るという方も少なくないのでは、と思います。

古谷徹・武内駿輔インタビュー

◆本作はアムロとドアンを軸に物語が展開していきます。それぞれのキャラクターの印象について教えてください。まずはアムロから。

武内:10代の頃から声優の仕事を始めた僕にとって、アムロは共感できる部分が多いキャラクターです。デビューしたばかりのころ、声優の仕事をしたいと言ったのは自分自身なのに、どこかで「まだ学生なのに、何でこんなに求められなくちゃいけないんだ」というじれったさを感じることがありました。時には若さ故の未熟な部分が出てしまい、何かに当たってしまうこともありました。本作のアムロはすごく強靭な心を持っているわけでもなく、意図せず持っていた才能によって振り回される少年です。それ故に未熟さが出てしまうことがある。立場や求められていることは違いますが、葛藤や何かに当たってしまう気持ちなど、共感できる部分が多いキャラクターですね。

古谷:アムロは潔癖症で、正義感があるけども15歳という若さもあって、思っていることをはっきり他人にぶつけられない内向的で純粋な少年です。そんな彼が生きていくために、仲間を守るために戦場へと出なければいけなくなってしまった。戦いの中で彼は成長し、強くなっていきますが、本作ではまだ成長の途上であり、未熟な部分も多々見受けられます。もしかしたらドアンたちとあの島で静かに暮らしたいと思ったかもしれませんね。本来は「戦いたくない」少年ですからね。ホワイトベースの仲間たちを守らないといけないし、仲間から頼りにされているということで心を奮わせますが、ドアンたちと一緒にいたいという気持ちが芽生えたかもしれません。そう思わされるほど、ドアンが魅力的な人物なんだと思います。

古谷徹・武内駿輔インタビュー

◆そんなドアンの印象をあらためて教えてください。

古谷:弱気を助けて強きをくじく。カッコよくて頼りがいがあって、強くて優しくて心も広い。まさにヒーローのような人物ですよね。

武内:過去の清算とずっと戦い続けながらも子供たちにそれを悟らせることがない。弱みを決して見せないんですよね。身も心も強靭な男だと思います。

◆ドアン専用ザクのデザインが公開されて話題となりました。その他、モビルスーツのデザインも公開されていますよね。

武内:テレビシリーズで意図せずに生まれたデザインをあえて活かすことで、スタイリッシュでオリジナリティのあるザクが誕生しました。個人的には昔から主人公じゃない方、例えば特撮なら怪獣や怪人が好きになるタイプだったので、本作でザクに乗ることができたのはうれしかったですね(笑)。

古谷:安彦さんが描くモビルスーツは迫力があって存在感もあります。しかも、しなやか。それが最新の技術で動いている姿を見たとき、感動しました。「これだよな!」って思いましたね。

◆ドアンが乗るザクと言えば、パンチや石を投げて戦うスタイルもファンの間では話題となっています。

武内:その要素は本作でもちゃんと反映されています。当時テレビシリーズの第15話を見た方も楽しんでいただけるんじゃないかな。

古谷:アムロは、この時点ではまだガンダムを完璧には操り切れていないんですよね。公開されたティザービジュアルでガンダムが半分になった盾を持っていますが、なりふり構わず何でも使わないと生き残れないんですよ。そういう必死さや未熟さが垣間見えるアムロが、ドアンが乗るザクとどうやって戦うのかも見どころのひとつですね。

◆お二人が『機動戦士ガンダム』の中で好きなモビルスーツとキャラクターは?

古谷:僕はマチルダ(・アジャン)さんかなぁ。魅力的で憧れの存在です。モビルスーツはもちろんガンダムですが、あえて他に選ぶとすれば量産型ゲルググが好きです。カラーリングが好きで、実は「カッコいいな」と思っていました(笑)。

武内:僕はカイ(・シデン)が好きです。作中に登場する男性陣の中でも特に感情のふり幅が大きく、楽しむ時は楽しむ、意地悪な時は意地悪、悲しむ時は悲しむんです。そういう存在ってある種、ムードメーカーにもなっていると思うんですよね。対人で能力を発揮するところも好きです。モビルスーツはゾックやアッガイ。一つ目で表情が感じ取れるような、取れないようなデザインが好みです。かわいいから家に何体も並べたい(笑)。

◆本作を楽しみにしている読者の方々へメッセージをお願いします。

武内:戦いを盛り上げるための背景の作り込みもすごいです。決闘感のある演出やモビルスーツの動き、またアムロが子供たちと触れ合うことでむき出しにする感情など、細かい部分にもぜひ注目してみてください。

古谷:「立場や壁を乗り越えて分かり合える」というのが、大きなテーマになっている素敵なエピソードです。僕は、ジオン軍の中にもいい人はいるということが分かるこのエピソードで、アムロの敵に対する見方が変わったと思うんですよね。また、この物語で「結局、犠牲になるのはいつも子供たちで、それを守らないといけないのは大人たちだ」ということをあらためて考えさせられました。すごい熱量で緻密に丁寧に映像化された「ククルス・ドアンの島」をぜひお楽しみください。

古谷徹・武内駿輔インタビュー

PROFILE

古谷徹
●ふるや・とおる…7月31日生まれ。神奈川県出身。代表作は、『巨人の星』(星飛雄馬役)、『ドラゴンボール』(ヤムチャ役)、『名探偵コナン』(安室透役)、『ONE PIECE』(サボ役)など。

武内駿輔
●たけうち・しゅんすけ…9月12日生まれ。東京都出身。代表作は、『アイドルマスター シンデレラガールズ』(プロデューサー役)、『KING OF PRISM』シリーズ(大和アレクサンダー役)、『イナズマイレブン アレスの天秤』(剛陣鉄之助役)、『アオアシ』(阿久津渚役)など。

作品情報

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』
2022年6月3日(金)より全国公開

<STAFF&CAST>
原作:矢立肇、富野由悠季
監督:安彦良和
キャラクターデザイン:安彦良和、田村篤、ことぶきつかさ
メカニカルデザイン:大河原邦男、カトキハジメ、山根公利
声の出演:古谷 徹(アムロ・レイ)、武内駿輔(ククルス・ドアン)、成田剣(ブライト・ノア)、古川登志夫(カイ・シデン)、潘めぐみ(セイラ・マス)、中西英樹(ハヤト・コバヤシ)、池添朋文(スレッガー・ロウ)、新井里美(ミライ・ヤシマ)、福圓美里(フラウ・ボゥ)

<STORY>
ジャブローでの防衛戦を耐えきった地球連邦軍は勢いのままにジオン地球進攻軍本拠地のオデッサを攻略すべく大反攻作戦に打って出た。アムロたちの乗るホワイトベースは作戦前の最後の補給を受けるためにベルファストへ向け航行。そんな中ホワイトベースにある任務が言い渡される。無人島、通称「帰らずの島」の残敵掃討任務。残置諜者の捜索に乗り出すアムロたちであったが、そこで見たのは、いるはずのない子供たちと一機のザクであった。戦闘の中でガンダムを失ったアムロは、ククルス・ドアンと名乗る男と出会う。島の秘密を暴き、アムロは再びガンダムを見つけて無事脱出できるのか……。

●photo/小澤正朗 text/M.TOKU hair&make/氏川千尋(古谷)、小園ゆかり
(竹内) styling/Masateru Abe(古谷)

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