蒼木陣インタビュー「猗窩座に感じた“絶望感”をお客さんにも感じてもらいたい」舞台「鬼滅の刃」其ノ参 無限夢列車

特集・インタビュー
2022年08月19日

蒼木陣インタビュー

2020年の1作目以降、絶大な人気を誇っている舞台「鬼滅の刃」。9月10日(土)からは、原作でも人気のエピソード「無限列車」編がついに舞台となって上演される。このエピソードから登場する人気キャラクター・猗窩座を演じる蒼木陣さんにインタビュー。主人公・竈門炭治郎や煉獄杏寿郎たちの前に立ちはだかる過去最強のキャラクターに挑む心境を聞きました。8月17日(水)発売の「TV LIFE」ではweb未掲載の撮り下ろし写真と共に、猗窩座に対するさらなる思いも。ぜひ誌面と合わせてチェックしてください!

◆舞台「鬼滅の刃」で演じる、猗窩座への思いを聞かせてください。

彼を演じるのは自分しかいない!と思ったぐらい、演じてみたいキャラクターでした。もともと原作も読んでいたので、舞台化が発表されたときは“自分もいつか、どこかで関われないかな”とこっそり思っていたんです(笑)。物語もキャラクターも魅力的な作品ですし、1作目を観劇したときは、僕も演出の末満(健一)さんが表現するあの『鬼滅の刃』の世界の一員になりたいと思いました。猗窩座というキャラクターで関わることができるのは、本当にありがたいし、うれしいです。

◆ビジュアル撮影はいかがでしたか?

服を着ている役と違って猗窩座は肉体をそのまま見せるので、ごまかしがきかないんですよね。原作ファンや舞台ファンの方に受け入れていただけるよう、トレーニングをして体を作って、撮影に臨みました。ビジュアルも、スタッフさんがとても丁寧に熱量を持って仕上げてくれたんです。僕という素材に合わせて当日もいろいろと微調整してくださったので、この人たちと一緒にひとつの作品を作っていけるんだとあらためてうれしく思いました。特に入れ墨のような模様は、猗窩座のバックグラウンドにも関わっていますし、見た目的にも彼の特徴になっているので、1本1本大切に原作に忠実に描いてくれました。キャラクターが背負っているものを受け止めようとするのは、役者だけでなくスタッフさんも同じなんです。皆さんとても大事にしてくれていることが伝わってきました。

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◆猗窩座というキャラクターをどう捉えていますか?

鬼ではありますけど人間っぽいところが色濃く残っていて、真っ向勝負をするキャラクターだなと思いました。「無限夢列車」の段階ではまだ彼の過去は掘り下げられていなくて、“圧倒的に強い鬼が現れた”という部分が描かれている。鬼殺隊にとってはそれこそ絶望的な状況なわけですよね。自分が漫画やアニメを見たときも、“これはまずい、無理だ…”って思いましたから。自分が感じた絶望感をお客さんにも感じてもらえるよう、作り上げていきたいです。

◆仲が良い本田礼生さんも冨岡義勇役で出演していますが、何かお話されましたか?

猗窩座に決まったときは、礼生から「絶対につなげてくれよ!」という、力強い言葉をもらいました。今自分は目の前のことでいっぱいいっぱいですし、猗窩座としての思いをしっかり届けることができたら、自ずと未来へとつながっていくだろうと考えています。

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◆蒼木さんにとって、2.5次元舞台の難しさ、楽しさとは?

難しさは、2次元のキャラクターを現実世界に存在させるに当たって、人間が演じるレベルに落とし込まないと感情移入がしづらくなってしまう点です。自分が観客として2.5次元作品を見たときも、人が演じている魅力が伝わる瞬間にこそ心が動くんだと感じました。自分なりの正解を見つけるのは簡単ではないけれど、キャラクターを人間として生かせたときはやっぱり楽しいなってなります。あと、自分にない価値観を持ったキャラクターを演じるのも難しい。過去に演じた役だと、舞台『刀剣乱舞』の陸奥守吉行は共感できる部分が多かったし、こういう人になりたいと憧れる部分があったので自分に落とし込みやすかったんです。逆に価値観が遠い人物だと、キャラクターの気持ちがつかみづらい。何を考えているのか分からず、迷子になってしまうこともあります。

◆役を人間レベルにするときは、どういうプロセスを経て作っていくのでしょう?

“自分の場合はどうだろう?”と、置き換えることが多いです。“僕だったらどういうときにこのキャラクターが抱いている感情になるだろう?”って。例えば自分の家族が目の前で誰かに傷つけられたりしたら、きっととてつもなく苦しいだろうし、憤るだろうな、とか。自分の人生においてどういう瞬間がこのキャラクターの感情と近いのかを考えます。しっかり感情に寄り添ったほうが、説得力や人としての信ぴょう性が出る。キャラクターのビジュアルに寄せることも大事だと思いますが、中身のあるキャラクターのほうが、より魅力的だと思うんです。

蒼木陣インタビュー

◆これまでに共演した方で、お芝居がすてきだなと思った方はいますか?

たくさんいるんですけど、1人挙げるとすれば、「舞台『刀剣乱舞』維伝 朧の志士たち」で共演した唐橋充さん。舞台「アクダマドライブ」という作品でもご一緒させていただいたんですが、ずっと憧れている先輩の1人です。舞台での存在感が尋常じゃない。せりふとせりふの間の埋め方なども含めて、ずっとキャラクターとして存在しているんです。役としての言葉が出る過程、バックボーンも完璧に詰まっているから、ただの短いせりふでも引き込まれるし、説得力がある。僕が目指しているのはこういうことなんだっていうのを体現している方です。

◆先輩など、気になる人から話を聞くことは好きですか?

僕はよく聞きに行くほうだと思います。「それ、どうやっているんですか?」「なんですか、その表現は!?」って、ストレートにぶつけちゃいます。答えが欲しいときもあれば、ただただ、自分の感じたことを伝えたいっていうときもある。気になる人とお話するのが好きなので、自分の心が動いたらそのまま伝えます。何か言ってもらえたら、自分の価値観がまた広がりますから。自分ひとりで考えたり調べたりしているだけだと、限界がある。人から吸収することで得られたり身になることって多いと思うので、素直に人を頼って生きています(笑)。舞台「鬼滅の刃」にもたくさんカッコいい先輩たちが出ているので、勉強させてもらいたいです!

蒼木陣インタビュー

◆今年30歳を迎えたということですが、何か心境の変化などありましたか?

なんだろう? もっと、大人にならなきゃいけないなって(笑)。20歳になるときもそうだったんですけど、大きな節目という感覚はありつつ、実際にその年齢になっても、案外変わっていないものなんですよね。20代では圧倒的に人との出会いが広がったと思うので、少しずつ成長はしてきたのかなぁとは思います。

◆精神的に強くなったり、柔軟になったりしたなと感じることもありますか?

苦しいなと感じながら、その経験自体も楽しめるようにはなった…かな?(笑)その先にある光というか。舞台だとお客さんに届けることができて、カーテンコールで拍手をいただいている瞬間に、稽古でもがいて苦しんだこともすべて報われる気がするんです。あの瞬間に、頑張ってよかったって実感できる。役をつかむまでの苦しい時間も、前向きにとらえられるようになりました。

蒼木陣インタビュー

PROFILE

●あおき・じん…1992年5月26日生まれ。大阪府出身。B型。これまでにミュージカル「テニスの王子様」3rdシーズンの喜多一馬役、舞台「刀剣乱舞」シリーズの陸奥守吉行役などを務める。2.5次元作品以外にも、音楽劇「クラウディア」Produced by 地球ゴージャス、映画「君たちはまだ長いトンネルの中」などに出演。

作品情報

舞台「鬼滅の刃」其ノ参 無限夢列車

舞台「鬼滅の刃」其ノ参 無限夢列車

東京公演
2022年9月10日(土)、11日(日)TOKYO DOME CITY HALL

京都公演
2022年9月16日(金)~25日(日)京都劇場

東京凱旋公演
2022年10月15日(土)~23日(日)TOKYO DOME CITY HALL

<STAFF&CAST>
原作:『鬼滅の刃』吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
脚本・演出:末満健一 音楽:和田俊輔
出演:小林亮太、髙橋かれん/植田圭輔、佐藤祐吾/内藤大希/蒼木陣/下川恭平、細見大輔/矢崎広ほか

<STORY>
蝶屋敷での修業を終えた炭治郎(小林)たちは、次なる任務の地・無限列車に乗り込む。鬼殺隊最強の剣士の1人である煉獄杏寿郎(矢崎)と合流した一行は、下弦の壱・魘夢(内藤)や上弦の参・猗窩座(蒼木)と対峙し…。
※煉獄の「煉」のつくりは「東」が正式表記

チケット一般販売:8月20日(土)午前10時

公式HP:https://kimetsu.com/stage/2022/
公式Twitter:@kimetsu_stage

©吾峠呼世晴/集英社
©舞台「鬼滅の刃」製作委員会

●photo/干川 修 text/根岸聖子 styling/中村美保 hair&make/大西智雄 衣装協力/Iroquois(Karaln)、SUPERTHANKS(Karaln)、JOHAN、cuillere en 925