中村壱太郎インタビュー「僕と右近君はアザラシ君とシロクマさんに近いものがあるんじゃないかな」ネイチャーチャリティープロジェクト 歌舞伎舞踊「恋するシロクマ」

特集・インタビュー
2022年11月22日

今注目の若手歌舞伎俳優・中村壱太郎と尾上右近が、人気コミック「恋するシロクマ」(ころも著・KADOKAWA発行)と異色のコラボレーションを組んで送る、ネイチャーチャリティープロジェクト 歌舞伎舞踊「恋するシロクマ」が1月19日(木)に上演。

「恋するシロクマ」は、月刊コミックジーンで2015年より連載中の、 捕食者と被捕食者の立場であるアザラシとシロクマの同性同士の愛が描かれている漫画で、ショートアニメとしても展開。本公演では、壱太郎と右近の2人が、本作の登場キャラクターであるアザラシ君とシロクマさんを模した創作舞踊を舞い、SDGsが掲げる「生物多様性」や「気候変動」について考えるきっかけを作っていく。

そんな本公演に出演する壱太郎さんに、本作に感じる魅力や公演の見どころ、プロジェクトにかける思い、右近さんとのほほ笑ましいエピソードなどをお聞きしました。


◆今回、このプロジェクトは壱太郎さんのツイートがきっかけで動き始めたそうですね。

「恋するシロクマ」は以前から気になっていたのですが、松竹さんの本社で別件の打ち合わせをしていた際に、アザラシ君とシロクマさんのぬいぐるみが置いてあったんです。日常の中で好きなものを見つけて、思わずその写真を撮ってツイートするって、きっと皆さんもやられますよね。僕もそういう趣味的な感覚でツイートしたところ、松竹ナビ(※)さんがある意味本気で反応してくださったというか…(笑)。(※ぷちアニメ『恋するシロクマ』は松竹ナビが運用)

◆まさかそれがこのプロジェクトにつながるとは、と。

はい。例えば、「この番組に出たいです!」みたいな、かなうはずもないことを言っていたら本当に出していただけたような感覚というか…。ご連絡をいただいて正直びっくりしたというのと、あらためて「SNSってすごいな」と(笑)。今って、SNSがバズったりして新たな道につながるということもあると思うんですけど、そういったことを初めて自分で実感した瞬間でした。

◆「恋するシロクマ」に感じていた魅力はどのような部分ですか?

まずは、やっぱりかわいらしいところ。そして、現実的に考えたらシロクマはアザラシを食べてしまうのですが、そういった捕食関係であったり、同性といったことも超越した、純粋な動物同士の恋が描かれているところにひかれました。ただ“かわいい”とか“面白い”というだけではなくて、深いところにメッセージ性が潜んでいるんですよね。食物連鎖の問題や環境問題についても考えられるところが魅力的だなと感じています。

◆「恋するシロクマ」と歌舞伎のコラボレーションと聞いた際、その異色さに驚きました。公演ではどのような世界観が表現されるのでしょうか。

最初は「一緒にグッズ制作ができたら…」という感じだったのですが、せっかくの機会ですし、もっと歌舞伎とフィーチャーできたら、とこの形でやらせていただくことになりました。大きな劇場でやるような長期公演ではないので、なかなかそのために衣裳を用意して、化粧も白塗りで作って…ということは難しいのですが、紋付と袴、そして歌舞伎役者としての踊りの特性を生かして表現できたらなと。なので、2.5次元の世界にいくというよりは、歌舞伎の世界において「恋するシロクマ」の表現を突き詰めていく、そういう公演になるんじゃないかなと思います。

◆見どころはどういった部分になりそうですか?

アニメの「恋するシロクマ」が“ぷちアニメ”ということで、公演も15~20分ぐらいの作品になる予定です。基本的に私と右近君は舞踊のみでしゃべらないのですが、スペシャルなのは、アニメでアザラシ君役をやられている花江夏樹さんがナレーションを入れてくださるということ。僕らが舞踊で彼らの心情などを表現していく中で、花江さんには進行役としていろいろな言葉を足していただき、ストーリーを展開していけたらと考えています。

◆舞踊では2人の恋の模様なども表現される?

そうですね。原作の物語を踏襲して、シロクマさんがアザラシ君に出会い、食べるはずが恋をしてしまうというところから描けたらと。もちろん環境問題を提起するようなメッセージも織り込みつつ、最後は2人が幸せになるようなストーリーにしたいですね。とはいえ、原作はまだ続いているので、このプロジェクトならではのハッピーエンドの形を探っていきたいです。

◆このプロジェクトが始まってから、壱太郎さんは環境・動物専門家の方と対談をされたり、動物園に足を運ばれたり、砂浜を守るための「全国砂浜ムーブメント」に参加されたり、さまざまなことに挑まれていますよね。

はい。僕も踊りを作るとは言ったものの、アザラシやシロクマをどのように表したらいいのだろうと。なので、彼らにとっての本当の“危機”や“問題”を知りたく、専門家の先生方にお話を伺ってみたり、その生態を詳しく知りたくて動物園に行ってみたり…。なんとなく上辺では分かっていても、体験することでしか得られない知識というものもあると思うんです。今回、実際に想像以上の情報を得られましたし、自分の目で見るということの大切さをあらためて感じました。

◆この公演が、壱太郎さんご自身にとっても学びや刺激を得られるきっかけになったと。

今までなかなかこういうことを考えるきっかけがなかったのですが、今回このお話をいただいて、僕自身もSDGsを見つめ直す機会になりました。この公演を通して、皆さんにも、未来に向けて“自分にもできることがあるんだ”と感じていただけたらすてきだなと思います。

◆本作は“シロクマさんがアザラシ君にひと目惚れする”ところから物語が動きだしますが、壱太郎さんが最近ときめいたものや人物は?

ときめいたもの…なかなかないですね…。でも、それこそ今回共演する右近君は、1週間に1度電話するぐらいの仲です(笑)。彼と一緒に「二人椀久」という舞踊演目を踊って以降、彼に対してはある種の“運命共同体”みたいな感覚があって、彼が活躍している姿というのは、ときめくというのも含めてすごく刺激になる。ある意味、アザラシ君とシロクマさんに近いものがあるんじゃないかなと思います。

◆1週間に1度お電話されるということですが、普段はどのようなことをお話されるのですか? またそんな右近さんとの共演についてはいかがですか?

「今週はこうだったよ~」などの近況報告が多いです。メールでもやりとりしますが、お互い打つのが面倒くさいというのがあって、大体ボイスメッセージですね(笑)。この頃なかなか一緒になる機会がなかったので、1日限りの公演ではありますが、一緒に作品を作れるというのはとてもうれしいです。お仕事としてしっかりやらせていただくのはもちろん、普段の僕らの関係値をいい意味で舞台で表せたらいいな、とも思います。

◆最後に、読者の皆さんへ本公演のアピールをお願いします。

今回は、紀尾井小ホールという、なかなか歌舞伎ではやらない劇場でやらせていただくということと、1日1回限りの公演ですので、ぜひまずは生で見ていただきたいです。そして、さまざまな事情から現地には行けないという方もいらっしゃると思うのですが、配信にも力を入れておりますので、そういった皆様にはオンラインという形で楽しんでいただけたらうれしいです。あと、グッズもかわいいんですよ! 僕も早速Tシャツをいただいて着ているのですが、歌舞伎仕様のアザラシ君とシロクマさんになっているので、ぜひグッズにも注目していただけたらと思います。

PROFILE

中村壱太郎
●なかむら・かずたろう…1990年8月3日生まれ。東京都出身。女方を中心に歌舞伎の舞台に精進しつつ、ラジオやテレビなどにも活動の場を広げている。また、「春虹」名義で脚本執筆、演出も。現在、舞台「波濤を越えて」に出演中。

公式HP:https://kazutaronakamura.jp/

公演情報

ネイチャーチャリティープロジェクト
歌舞伎舞踊「恋するシロクマ」
日時:2023年1月19日(木)18:00開場/18:30開演
場所:東京・紀尾井小ホール
内容:アザラシ君、シロクマさんが登場する歌舞伎舞踊+出演者によるトークショー(全60分程度)

出演:中村壱太郎、尾上右近/花江夏樹(声の出演)※予定

詳細はこちら:https://camp-fire.jp/projects/view/584941

※本プロジェクトは「社会問題と向き合う人のクラウドファンディング『GoodMorning』」にて支援を募る形で展開するチャリティ企画。支援金の一部は共同プロジェクトパートナーの公益財団法人 日本自然保護協会へ寄付される。
※中村壱太郎さんの「環境・動物の専門家と対談」「上野動物園へ行く」「『全国砂浜ムーブメント』体験」動画は、クラウドファンディングで支援するとリターン(返礼品)として視聴が可能。ダイジェスト版は公式YouTubeチャンネルにて配信中。

作品情報

ぷちアニメ『恋するシロクマ』
各配信サイトにて“イッキ見”配信中
詳細URL:https://koisurushirokuma.jp/movie/

キャスト:花江夏樹、梅原裕一郎、柿原徹也/大谷亮平
音楽:東郷清丸
原作:ころも「恋するシロクマ」(株式会社KADOKAWA「月刊コミックジーン」連載中)
制作:ギャザリング
監督/脚本:市川量也
音響監督:山田陽

番組公式サイト:koisurushirokuma.jp
番組公式Twitter:@koi_shirokuma

●text/片岡聡恵