橋本さとし主演ドラマ『なにわの晩さん！』主人公のタクシードライバー・晩さんは「自分自身も投影させている」

ドラマ『なにわの晩さん！美味しい美味しい走り飯』（ABCテレビ　深夜0時～0時30分）が、4月1日（土）にスタート。主人公のタクシードライバー・晩さんとワケあり乗客のコミカルな会話劇を軸に、くいだおれの街・大阪が誇る絶品グルメが続々登場する、全編大阪撮影の人情グルメドラマだ。

そんな本作で、謎だらけのタクシードライバー“晩さん”こと晩明を演じる橋本さとしさん。「自分自身も投影させている」という晩さんの役柄や魅力、本作の見どころなどをインタビュー。さらに、橋本さんお薦めの大阪のスポットなども語ってもらいました。

◆本作は橋本さんの地元・大阪が舞台のオリジナルグルメドラマですが、お話を聞いた際の印象はいかがでしたか？

僕自身、食べることもグルメドラマも大好きなのですが、まさか自分がやらせていただけるとは思っていなかったんです。なので、お話をいただいた時は本当にうれしくて、この先にしんどい撮影が待っていることなどは全く考えず（笑）、すぐに「やります」とお返事をさせていただきました。

◆待望のグルメドラマだったわけですね…！

はい。ただ撮影スケジュールが結構タイトで、せりふ量も多かったので、来る日も来る日も台本を読んで、ときには朝から串カツを食べて…とハードな日々でしたが（笑）、常に幸せを感じながら撮影に臨めていたなと思います。

◆まさに、そんな橋本さんの多幸感がこのドラマ全体から伝わってくる気がします。

このドラマは、それぞれのキャラクターが懸命に生きる中でどこかちぐはぐになってしまって、なんとかそこから抜け出そうとしているんです。そんな時においしいものを食べて、リスタートしようと前を向く。そんな彼らの生きる力や喜びというものを、役柄を越えて僕自身も感じながらやっていました。現場もピリピリした雰囲気が全くなく、みんな笑顔で「おいしいね～」と言い合っているようなポジティブな空間だったので、それが皆さんにも伝わったらいいなと思います。

◆橋本さんの思う、主人公“晩さん”の魅力は？

“ギャップ萌え”じゃないでしょうか。…って、自分で言うてええんかな（笑）。謎めいていて、一見こわもてで、黙っていたらあまり近づきたくないような男ですが、実は大きな優しさを兼ね備えているんですよね。そして、その優しさは、きっと自分が今まで対峙してきた修羅場であったり、負ってきた傷が作り上げたものじゃないかなと思うんです。

◆確かに、晩さんの優しさには深みを感じます。

晩さんは、いったんは孤独に自分を追いやったものの、自分は1人じゃないんだと気づき、再び人との出会いを求めてタクシードライバーにたどり着いた男ではないかなと。なので、世間になじめないように見えて実は人間が大好きだったりと、そういうところに晩さんの多面性を感じられて、演じていてすごく楽しかったです。役者は人に揉まれてなんぼの世界ですが、僕もとにかく人間が大好きなので、そんな自分自身も投影させた等身大のキャラクターを体現できているんじゃないかなと思います。

◆タクシードライバーにもさまざまな服装の方がいますが、晩さんの服装にこだわりや意図はあったのでしょうか。

一般的にはジャケットにネクタイ、人によっては白い手袋をしていたり、帽子を被っている方もいると思うのですが、晩さんは個人タクシーなのでそこは自由なんです。さらに、ドラマを見ていただいたら分かると思うのですが、晩さんは過去に世界中いろんなところに行っているので、いい意味で日本人っぽくないんですよね。ニューヨークのイエローキャブのドライバー的なイメージといいますか…。あと、ロバート・デ・ニーロの「タクシードライバー」という映画が好きなので、そこからもヒントをもらったり。なにより“フリーダム”という晩さんのポリシーを表現したいなと思い、革ジャンに革パンという、タクシードライバーとしてはちょっと異色なビジュアルになりました。

◆橋本さんをはじめとするレギュラーキャストの方々をはじめ、全4話にわたって個性豊かなさまざまなゲストの方々が登場されますが、特に印象に残っている方は？

本当に皆さんチャーミングで、その方だからこそできるキャラクターがそろっているのでお1人を挙げるのはなかなか難しいのですが、まず今回お伺いしたお店の方々がとてもすてきだったんです。皆さんの協力してくださる姿はもちろん、食を提供する職人ゆえの“自分たちが作ったものをどう見せるか”というところに誇りを感じられて。ドラマに出演こそしていないのですが、その陰で奮闘してくださったことがとても印象に残っています。そして、プライベートでも行ってみたいなと思うお店ばかりでした。

◆どの食事も美しく、この放送時間帯に見るのにぴったりの“飯テロ”ドラマでもあるなと感じました（笑）。

そうでしょう（笑）。でも、キャラクターの中であえて挙げさせていただくと、トー吉役の兵動（大樹）さんがめっちゃ面白かったです。兵動さんは、本業としてはお笑いで勝負されている方なので吹っ切れ方が全く違いますし、どうすれば人の笑顔を引き出せるかを熟知されているなと。こちらがふとアドリブを入れると面白さを倍にして返してくださるのでやっていて楽しかったですし、せりふじゃないところでの言葉のボキャブラリーやチョイスの仕方にもとても刺激を受けました。あと僕、お笑いも大好きなので、お会いした時は単純に「兵動さんや！」とミーハーな気持ちが湧きましたね（笑）。

『なにわの晩さん！美味しい美味しい走り飯』左から）橋本さとし、今井翼©ABCテレビ

◆橋本さんは、普段からタクシーに乗られるのでしょうか。

いえ。僕、お仕事の時も自分で車を運転して移動していて。運転するのが大好きで、それが気分転換になっているんです。車の中は僕だけの“サンクチュアリ”といいますか（笑）、僕の世界が詰まっていて。狭いスペースではありますが、僕にとっては大きなスペースなんです。なのでタクシーはあまり使わないのですが、ドライバーさんの気遣いの仕方や、お客様同士の会話の中に入っていくタイミングというのは、自分が今までタクシーに乗った時に経験したこともいろいろ取り入れています。でも、今回みっちりタクシードライバーの役をやらせていただいて、撮影が終わって久しぶりにタクシーの後部座席に乗った時は、なんだかそわそわしてしまいました（笑）。

◆実際に晩さんのタクシーで大阪の街を走られていたんですよね。

カメラが回っていないところでも晩さんのタクシーを運転して移動することがあったのですが、本物のタクシーと勘違いして道端から手を上げられることがたびたびあって…。もちろん「すみません！」と思いながらスルーしたのですが、「タクシーのドライバーさんって、こういう景色をいつも見ているんやな」と感じられた新鮮な経験でした。

◆橋本さんが実際にタクシードライバーだとしたら、お客さんから「ドライバーさんのお薦めの大阪のスポットまで」と言われたらどこに連れて行きますか？

うーん…。大阪は生まれ育った場所なので新鮮味があんまりないのですが（笑）、生駒の山上で夜景を見たりしてもいいのかなと。あと僕、昨年大阪に帰った時に、見慣れているはずの大阪城がすごく新鮮に見えたんですよ。というのも、いつの間にかライトアップされるようになっていて、夜の大阪城の浮き上がり方が僕の知っている大阪城じゃなかったんです！（笑）。でも、その時に大阪城ってこんなにきれいで荘厳な城だったんだ…とあらためて感じられて。なので、ありきたりかもしれないですが、大阪城は「これが大阪やで」とぜひ案内したい場所のひとつですね。

『なにわの晩さん！美味しい美味しい走り飯』左から）橋本さとし、秋谷百音©ABCテレビ

◆“晩さん”にかけて、最後の“晩餐”に食べたいものを挙げていただくと…？

僕の父が惣菜屋さんをやっていて、小さいころに店で父の手伝いをすると、お駄賃代わりにと手作りコロッケやウズラの卵を3つ串に刺したものを揚げてくれたんです。もう亡くなってしまったのでかなわないと分かってはいるのですが、やはりその味が忘れられなくて…。人生で1番最初においしいと思った味を、最後にもう1度食べてみたいですね。

◆最後に、本作のアピールをお願いします。

この作品は、作り上げられた世界観というよりも、そこに住む人たちのごく日常にあり得るエピソードが散りばめられていて、そこで生まれた負の感情が食べ物によってプラスになっていくさまが描かれるドラマです。食の大事さや人との出会いがテーマになっていて、きっと皆さんにも共感していただける部分があると思います。そして、これは人間の根源といいますか、生きていく上で、おいしいものを食べるときっと大体は前向きになれる気がして。このドラマで紹介しているお店にはずれはないのでぜひ行ってみていただきたいですし、そこでおいしい出会いと人との出会いを楽しんでいただけたら幸せです。

ANOTHER TALK

橋本さんお薦めの大阪のお店は？

梅田の東通商店街近くに「くりやん」というお店があって、そこの肉みそ丼が好きですね。お肉を味噌で焼いたものがご飯に乗っていて、“男メシ”という感じ。あと、「揚子江ラーメン」も大阪に行った時は必ず食べに行きます。透明のスープで麺が細く、お酒を飲まれる方はきっとお酒を飲んだ後でも一気に食べられるくらいあっさりしていながら、しっかりスープの味が口の中に残るんです。本当においしいので、ぜひチェックしてみてください。

PROFILE

橋本さとし
●はしもと・さとし…1966年4月26日生まれ。大阪府出身。Ｏ型。現在、大河ドラマ『どうする家康』（NHK総合ほか）、ミュージカル「おとこたち」に出演中。『プロフェッショナル　仕事の流儀』（NHK総合）でナレーションを務める。今後は劇場版「TOKYO MER〜走る緊急救命室〜」、「ムーラン・ルージュ！ザ・ミュージカル」（2023年夏）などの出演を控える。

●text／片岡聡恵