「劇団朱雀」二代目座長・早乙女太一が思いを語る「再び血が巡るようなお祭りを作れたら」

特集・インタビュー
2023年05月01日
「劇団朱雀」左から)早乙女友貴、早乙女太一

連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』や『六本木クラス』などのドラマや映画、舞台など話題作に続々出演、さまざまな“顔”で多くの人を魅了し続ける俳優・早乙女太一さん。そんな早乙女さんが二代目座長を務める大衆演劇「劇団朱雀」の公演が5月19日(金)に開幕する。それに先駆け、この公演や大衆演劇に感じる魅力、二代目座長としての思いなどをお聞きしました。終盤では、早乙女さんの素顔に迫る話題も。


◆まず、今回の公演のテーマや目指すところを教えてください。

コロナ禍において、マスクの着用をはじめ、さまざまなことに規制された時間がとても長く、僕たちもお客さんも知らず知らずのうちに感情を表に出しにくくなったり、人との距離を縮めることが難しくなってしまったように感じていて。この公演では、ふさがれた血管が開放され、再び血が巡るような、そんなお祭りを作れたらいいなと思っています。

◆早乙女さんの思う“大衆演劇”の魅力って?

ただ“演(や)る人”と“見る人”とくくるのではなく、みんなで一緒にお祭りを、その瞬間を作り上げていけるところです。これこそがお芝居とお客さんの本来のあり方な気がしていて、そういったところは会場が広くなってもしっかり表現していきたいと思っています。
大衆演劇って、昔は客席の後ろでおでんが売られていて、それをつまみながら見たり、お酒を飲みながら楽しむようなものだったらしいんです。お寺や神社の一角でやっていたりもして、誰でもふらっと見られるような…。大衆演劇がさかんだったころはテレビもまだ出回っておらず、人々にとっては大衆演劇が気軽に楽しめる娯楽のひとつだったんじゃないかなと。時代は変わりましたが、大衆演劇にしかない魅力や素晴らしい作品はしっかりと残しつつ、現代の人々が楽しめる要素を自分たちなりに取り込みながらやっていけたらと思っています。

◆「劇団朱雀」は2015年に解散、2019年に復活公演を行い、現在へとつながっています。なぜ当時、劇団を復活させようと思ったのでしょうか。

僕自身もっといろいろなことをやって勉強したいというのと、劇団員のみんなにも役者としていろいろなことに挑戦してほしいという思いから解散したのですが、そのときからいつか必ず復活させるということは心に決めていました。個人的な話ですが、僕はずっと“外に出たい”と両親に反発しながら生きてきて、どこかで大衆演劇をやっている自分を受け入れられないままやっていたんです。なので、復活させるときは自分が全責任を持って納得できるものを作り、劇団員みんなが輝けて、楽しめて、心からこの舞台に立ちたいと思ってもらえる場所にしたくて。そんな中で、解散から5年がたつころに、このまま「今の自分ではまだ足りない」と理想を追いかけ続けていたら、永遠に復活させられないんじゃないかなと思ったんです。ずっと待ってくれているお客さんがいることも分かっていましたし、僕の祖母が生きているうちにやりたいなというのもあり、まだ早いのではないかと不安はあったのですが、このタイミングで一度形にしようと復活にたどり着いた形です。

◆ご両親に反発しながらも、こうして続けられてきた理由は何が大きいですか?

劇団以外にもさまざまな経験ができたことです。元のフィールドから離れたことによって大衆演劇を客観視できるようになり、大衆演劇だからこそ生みだせる表現や空間、その魅力に気づくことができた。たくさんの人から影響や刺激を受け、今までになかった感覚を持てたことが大きいと思います。

◆二代目座長・早乙女太一ならではの「劇団朱雀」の色って?

若いころの記憶がほとんどなくなっていて、以前の劇団朱雀をあまり思い出せないのですが(笑)、変わらない思いは「お客さんに少しでも元気になってもらいたい」ということ。そのために僕らはさまざまな舞踊やお芝居に挑むのですが、ただ見栄えのいい芸をやればいいということではなく、1回1回に命を懸けてやろうと。そこは僕が座長になる前から一切変わらないところですね。
芸事においてすごい人はもっといるし、身近に面白い娯楽もたくさんあって、そんな中でわざわざ足を運んでくれたお客さんに僕らは何ができるかと考えたら、いま自分にできることの全てを出し尽くし、自分の全てを見てもらう…それしかないんです。そんな僕らの姿を見て、お客さんの心が弾んだらいいなと。これが今の「劇団朱雀」の色なのかなと思います。

◆確かに「劇団朱雀」の皆さんからは、みなぎる人間のパワーのような熱を感じます。

先ほども言ったように、僕らは何かが突出しているわけではないですが、全員が真剣に舞台に向き合い、真正面からお客さんとも向き合います。僕もその中にいるわけですが、ふとその姿を引いて見ると「みんな必死に生きているなぁ」とつい笑ってしまうほど。でも、同時にその姿がとても美しく見えるんですよね。お客さんから「スポーツを見ている感覚になった」と言っていただくこともあるのですが、それはみんながそこに命を懸けてやっているから、そういった躍動感や人間のエネルギーみたいなものを感じていただけるのだろうなと思っています。

◆最後に、今回の公演の見どころをお願い致します。

今回は、1部が僕の女形がメインで、2部が日替わりの芝居、3部はみんなで歌ったり踊ったりふざけたり…という感じです(笑)。世界観が次々に変わっていくので、サーカスを見ている感覚になったりもするのかなと思います。自分たちが今まで培ってきたことの全てをお見せするので、それぞれ好きなポイントを見つけて楽しんでいただけたら。本当に気楽に、お祭りに行くような感覚で遊びに来てもらえたらうれしいなと思います。

ANOTHER TALK

◆早乙女さんにとっての息抜きは?

ご飯です。とにかく食べることが好きで、自分でご飯を作ることもあるのですが、どこかに食べに行くほうが好きですね。あとはサウナに行ったり、友達と飲んだりもします。

◆休みの日の過ごし方は?

家にはほとんどいないです。ご飯やサウナに行ったり、電車に乗って降りたことのない駅で降り、その土地を散歩しながら、ご飯屋さんや喫茶店に入ってまったりしたりもします。

◆プライベートで気になっているけど、まだできていないことは?

キャンプです。周りにやっている人が多くて楽しそうだなと思うのですが、「今年はキャンプに行く」と毎年言いながら結局行けていなくて…。ただ1人では絶対に行けないので、キャンプに慣れている友人と行きたいです(笑)。

◆早乙女さんはYouTubeチャンネルもたびたび話題を呼んでいますが、やられていていかがですか?

ときに大人の事情も見えますが(笑)、やるからには自分が楽しくないと、と思っています。なので、なるべく自分が好きなことをやるということと、「大衆演劇ってどういうものだろう?」と調べた人がその答えを垣間見られるようなチャンネルにできたらいいなと。朱雀関係の動画もこれからもっと上げていきたいと思っているので、1人でも多くの方に大衆演劇を知っていただくきっかけになったらいいなと思います。

◆ご自身のチャームポイントは?

飽き性なところ。基本的に日々あまり同じことをしないので、一緒にいても飽きないんじゃないかな(笑)。舞台上でもいろいろなことをしていますし。(外見で挙げると?)それはめっちゃ難しいですね…。僕、自分の顔が全く自分の理想とは違うので。ちなみに、理想の顔はジョニー・デップです(笑)。

◆もし役者じゃなかったらしてみたい仕事は?

バンドマンです。パートはギターボーカルで。昔は「役者を辞めてバンドがやりたい」と本気で言っていたこともありましたね(笑)。音楽はなんでも聴くのですが、イエモン(THE YELLOW MONKEY)は昔からずっと変わらず聴き続けています。

◆早乙女さんにとってファンの方はどのような存在?

実は大きな舞台をやるよりも、ファンクラブイベントで踊るときのほうが緊張するんです(笑)。長く僕のことを見てきてくださっている方も多いですし、ごまかしがきかないといいますか。自分の芸事に向き合ってくれて、自分の“芸”を見てくれるので、そういう面での信頼感は大きいです。

PROFILE

早乙女太一
●さおとめ・たいち…1991年9月24日生まれ。福岡県出身。B型。9月から上演される、劇団☆新感線43周年興行・秋公演 いのうえ歌舞伎「天號星」への出演を控える。

公式Twitter:https://twitter.com/taichi_saotome/
公式Instagram:https://www.instagram.com/taichisaotome_official/

公演情報

「劇団朱雀2023」
チケット料金:全席指定8,800円

東京公演:かめありリリオホール
日時:2023年5月19日(金)~5月31日(水)

大阪公演:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
日時:2023年6月7日(水)~6月11日(日)

福岡公演:キャナルシティ劇場
日時:2023年6月16日(金)~6月18日(日)

沖縄公演:アイム・ユニバース てだこホール 大ホール
日時:2023年6月24日(土)~6月25日(日)

「劇団朱雀」公式HP:https://www.gekidan-sujaku.com/

●text/片岡聡恵