岡咲美保にとって声優は「自分じゃないものにならせてくれる場所」、歌は「自分に帰れる場所」- 3rdシングルインタビュー

特集・インタビュー
2023年11月01日
岡咲美保

声優・アーティストとして活動する岡咲美保が、3rdシングル「ココロトラベル」を2023年11⽉1⽇(⽔)にリリースする。アーティストデビューから2年。ここまでの歩みのなかで彼女は、音楽への向き合い方が変化してきたという。声優は「好奇心を満たしてくれる、自分じゃないものにならせてくれる場所」、歌は「自分に帰れる場所」と言葉にする彼女に、3rdシングルと、ここまでの歩みについてお話を聞きました。

◆アーティストデビューしてから2年が経ちました。振り返ってみて、どんな2年でしたか?

イベントに出演したり、テレビ番組で歌唱したり、いろんな写真を撮っていただいたりと、初めてのことがたくさんあったので、「まだ2年しか経っていないの!?」という気持ちがあります。一方で「もっとこうしたいな」という課題を見つけて、その階段を昇っているという感覚もずっとあって。そういう意味では、長い時間でもあったような気がしています。長いような短いような、そんな2年間でした。自分について考える時間がものすごく増えましたね。

◆声優としての活動では、自分よりも演じるキャラクターのことを考えることが多い。

そうなんです。私は自分を無にして役を入れるタイプなので、むしろ自分の存在が邪魔になることも多いんです。

◆歌唱力に定評がある岡咲さんですが……。

いやいや、それどこ情報ですか!?(笑)

◆もう各所からそういう声を聞きます(笑)。もともと歌は好きでしたか?

めちゃくちゃ好きですね。小さい頃から家で歌っていたと家族からも聞いていますし、中学生くらいからはお友達とカラオケに行ってアニメソングをはじめ、いろいろな曲を歌ってきました。アーティストは歌うことが仕事なので、カラオケとは違いパフォーマンスに落とし込む責任があります。それでも、音楽が好きという気持ちは変わらず、歌う時間は楽しいですね。

◆2年で音楽への思いや聞き方、聞く楽曲は変化していると感じていますか?

はい。「私が歌うなら、きっとこういう楽曲のほうが自分の声を活かせるかな」という聞き方をするようになりました。また、レコーディングやトラックダウンという楽曲制作の作業も、最初はお任せをしていたのですが、最近は「こうしてみたいです」と自分の意見を言えるようになったんです。音楽の理想像の輪郭が、少しは見えてきたのかも。ただ、これは現時点での私の理想。まだまだ変わっていくと思うので、完成形ではありません。

◆活動のなかでさまざまなアーティストの方と共演されることもあります。みなさんのステージやパフォーマンスを見て、刺激を受けることはありますか?

めちゃくちゃ受けます。みなさん、ものすごく視野が広いんですよね。ファンの方々の気持ちに応えるためにどうすればいいか、しっかりと考えて向き合っていらっしゃる。自分はまだまだだと痛感する日々です。ただ、得意なことを伸ばすほうがこの世界は合っていると思うので、刺激を受けつつ、自分の音楽ではどういう形で活かせるのかを考えるようにしています。刺激を受けたものをそのままアウトプットするのではなく、しっかり自分の中にインプットしてから表現に活かすようにしていますね。

◆「この人はすごい!」と、印象的だったアーティストの方は?

angelaさんです。同じキングレコードの大先輩で地元も一緒なので、すごく優しくしていただいていて。「Animelo Summer Live (アニサマ)」の舞台裏でも、いろいろとお話してくださいました。その「アニサマ」の舞台で感じたのは、angelaさんのエネルギー。私はお客さんに楽しんでもらおうと思うと、体が硬くなっちゃうタイプなんです。ただ、angelaさんは「アニサマ」のトリという大役だったのにも関わらず、エネルギーを最大限にお客さんに届けていました。それをお客さんが受けて、同じエネルギーを返していたんです。その様子を見て、シンプルに感動しました。MCでの盛り上げ方も含めて、「これぞエンターテインメント」というものを見せていただきました。

◆この2年で特に印象に残っている活動をひとつ挙げるとすれば?

ライブデビューとなった「リスアニ!LIVE」ですね。初めてアーティスト・岡咲美保として有観客のライブの舞台に立ったんです。準備する段階で不安の極限までいき、それがいつの間にか突破して本番では「あっ、もうやることをやるだけだ」という悟りの境地を開くまでに至りました(笑)。それぐらい自分を追い詰めたことも相まってか、ステージから見た景色にとても感動しました。

◆コンテンツ関係では大きな舞台で歌を披露する機会もあります。そのときとソロアーティストとして歌う場合では、感覚が異なる?

「あり方」が変わるんですよね。キャラクターを背負っているときは、その子と仲良くすることに集中しているんです。一方、アーティストとしてステージに立つときは「こうすれば喜んでもらえるかな」と考えることが多くて。自分でも「岡咲美保には価値がある」と思えるようなパフォーマンスをしたいなと思う分、力がより一層入るかもしれません。

◆キャラクターとしてステージに立つときは、そのキャラクターが後押ししてくれたり、傍にいてくれたりという感覚があるのかもしれないですね。

ですね。身振り手振りも「この子だったらこうする」というのが思い浮かぶんです。ただ、それがアーティスト・岡咲美保となると急に難しくなって。日々、勉強中です……!

決め手は「私の声で再生できる」

岡咲美保

◆そんな活動も経て、この度、3rdシングルがリリースされます。表題曲「ココロトラベル」はご自身がリムル=テンペスト役として出演されているアニメ『転⽣したらスライムだった件 コリウスの夢』のED主題歌です。

以前にリムル役として作品の楽曲を歌唱する機会はありましたが、まさか岡咲美保としても歌わせていただけるなんて。とても驚きましたし、思ってもいなかった幸せが舞い込んできました。その分、期待に応えたいという思いと、責任もすごく感じて。うれしいという気持ちと同時に「どうしよう、どう作っていこうか」という気持ちもありました。

◆「ココロトラベル」は、コンペで募ったもののなかから選んだ楽曲だとお聞きしました。

コンペで集まった楽曲は、どれも『転スラ』らしいものだったんです。どの曲も未来が見えて迷いましたが、最終的に決め手となったのは「私の声で再生できる」という点。どれもいい曲でしたが、今回はリムルの傍にずっといた私として歌おうと思っていたので、私の声に合うという点を重視して選びました。

◆それは、ずっと『転スラ』と共に歩んできた岡咲さんならではの選び方な気もします。

そうかも! 『転スラ』と出会ってから、1週間のなかでリムルにならない日が本当にないんですよ。私の声優人生を変えてくれた作品なのでその分、思い出もたくさんあるんです。リムルと出会っていない世界線の自分が考えられない。心の深いところにまでリムルがいます。

◆レコーディングで意識したポイントは?

真っすぐ出てきた自分の声を受け止めて歌いました。いつもならちょっと気になるような声の表現やリズム感、あとはピッチが多少ズレても、「こっちのほうが思いが伝わるならそのほうが良い」と思えたんですよね。そういう意味では、わりと肩の力を抜いて歌えました。リムルと『転スラ』が大切だという気持ちに浸っていたら、いつの間にかレコーディングが終わっていたんです。

◆どこも聞きどころではあると思いますが、なかでも読者の方に注目してほしいポイントは?

自分の旅路を慈しめる、愛して受け止めるというような歌詞がすごくすてきで。いいことがあった日はもちろん、ちょっと上手くいかなった日も「でも、こういうところを自分は頑張ったよね」というマインドに切り替えてくれるような、ストレスフリーな楽曲だと思っています。

「歌」は「自分に帰れる場所」

岡咲美保

◆本シングルに収録されているもう1曲「キボウノレシピ」についてもお伺いします。こちらもご自身がミリー役として出演されているTVアニメ『とあるおっさんのVRMMO活動記』のED主題歌ですね。

私、主人公のアースが流行りに流されず、好きなことを楽しむ様子がすごく好きなんです。なので、「自分の好きという気持ちを大事にしよう」というテーマで、コンペで楽曲を募りました。本作のED主題歌は、温かい気持ちになって、笑顔になれるのが理想かなと思っていたんです。「キボウノレシピ」は、それにピッタリな楽曲でした。また、「君と君と君と」という歌詞の部分では、ライブでいろいろな方向を指さしている様子が見えたんです。そういうみんなを巻き込んで歌えそうな雰囲気が、アースがギルドに入ったり、ゲームの世界の主要キャラクターが彼に寄ってきたりする様子とシンクロするなと思ったんです。

◆アースの周りには自然といろいろな人が集まってきますよね。

誰かに気に入られたいから自分の形を変えるのではなく、自分の好きを貫き、それをみんなが気に入ってくれた結果、周りに人が集まってくる。アースは望んでいるかどうか分かりませんが、それってひとつの理想形ですよね。アニメで得た気持ちをさらに後押しできる楽曲になればと思いながら、レコーディングしました!

◆ライブ映えしそうな楽曲でもありますよね。岡咲さんはライブでどんなことをやってみたいですか?

ありがたいことに、2024年1月27日にワンマンライブの開催が決定しました! いまはそちらに向けてスタッフさんと一緒に、どんなライブにしようか考えているところです。まだ見えていない部分も多いですが、自己紹介せずとも、パフォーマンスを見たら「岡咲美保ってこういうアーティストなんだな」と伝わるような、自分らしさを詰め込んだライブにはしたいですね。いつかやってみたいのは、トロッコに乗ってお客さんの近くにいくこと! グッズを掲げたファンに、アーティストが手を振り返すというあのシーン。自分がお客さんとしてライブに行くときも、あの時間がすごく好きなんですよ。ファンの方と距離の近いライブができたら、自分の活力にもなる気がします。感謝の気持ちを返せるライブをしていきたいですね。

◆ここまでいろいろなお話ありがとうございました。では、ご自身にとって「声優」「歌」とはどういう存在になっているか、教えてください。

「声優」は「自分じゃないものにならせてくれる場所」。私、小さい頃はなりたいものがたくさんあって、定まらなかったんです。ただ、いろいろなものになれるのが声優。なってもいいと認めてくれる場所なんです。『転スラ』でいえば、現実世界でスライムには絶対になれないですし、リムルは元をたどると男性。そういう自分の姿形関係なく、声だけで旅ができる声優は、自分の好奇心を満たしてくれるものです。「歌」はそれとは逆に、自分に寄り添ってくれる場所。私、小さい頃から歌っている自分が好きなんですよ。自分を認められるのが歌っている時間でした。ふだん言葉で伝えられないことも、歌詞に寄り添ったら伝えられることもあります。言葉よりも自分を無理なく表現できる距離感が心地いいんですよね。「歌」は「自分に帰れる場所」だと感じています。

(こんなお話も!)今、岡咲さんが読者の方々に推したいエンタメは?

漫画ですね。少女漫画から入ったのですが、どんどん刺激が欲しくなって、ホラーにいき、今は人間の本心も赤裸々に描いている作品を読むようになりました(笑)。キラキラした世界を見られるエンタメももちろん大好きですが、現実ってこうだよなと思える世界をエンタメとして、芸術として昇華できる作品もすごいと思うんです。オススメは押見修造先生の作品や、郷田マモラ先生の『サマヨイザクラ』っていう作品。『サマヨイザクラ』は裁判員制度をテーマにしたサスペンスで、自分の下した判決が本当に良かったのかと向き合う作品です。ぜひ一度、触れてみてほしいですね!

PROFILE

岡咲美保

岡咲美保
●おかさき・みほ…11月22日生まれ。岡山県出身。2021年9月15日に1stシングル「ハピネス」でアーティストデビュー。声優としての主な出演作は、『転生したらスライムだった件』リムル=テンペスト役、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』市川雛菜役、『とあるおっさんのVRMMO活動記』ミリー役など。

リリース情報

3rd Single「ココロトラベル」
2023年11⽉1⽇(⽔)発売

CD+Blu-ray盤:1,980円(税込)
通常盤:1,430円(税込)

ライブ情報

「Miho Okasaki 1st LIVE 2024 ~キラメキブルーム~ supported by animelo」
2024年1月27日(土)神奈川・関内ホール 大ホール

WEB

公式サイト:https://www.okasakimiho.com/
公式X:https://twitter.com/okasakimiho_PR
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@okasakimiho_official

●photo/YOSHIHITO_SASAKI text/M.TOKU hair & make/楢林ミナコ(ヘアメイクフリンジ) styling/細田真弓 衣装協力/ADELLY