第2クール突入直前『薬屋のひとりごと』大塚剛央インタビュー!猫猫と壬氏の関係は「今の距離感がほっとしますし、ずっと見ていたくなる」

特集・インタビュー
2024年01月05日
『薬屋のひとりごと』
『薬屋のひとりごと』©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

10月からスタートしたアニメ『薬屋のひとりごと』(日本テレビ系 毎週(土)24:55~)が人気を呼んでいる。原作小説はコミカライズもされ、シリーズ累計2700万部を突破。後宮で下働きをしていた花街育ちの薬師・猫猫が毒見役を任され、さまざまな噂や事件を解決していく謎解きエンタテインメントだ。猫猫の能力を見抜いて毒見役に抜擢したのは、美形の宦官・壬氏。猫猫と壬氏のもどかしい関係性も人気の秘けつとなっている。そこで、壬氏を演じる大塚剛央さんにインタビュー。これまでの猫猫と壬氏の名シーンを振り返ってもらった。

◆第1クールを振り返って、あらためてこの作品のどんなところに面白さを感じていますか?

小説やコミックで読んでいた世界がアニメになったことで色や音が肉付けされて。『薬屋のひとりごと』の空気をより鮮明に感じられる映像になっていますよね。出演者の僕が言うのもなのですが、見どころしかないといいますか。1カット、1カットがこだわり抜かれていて、演出の意図もしっかりあって。すごく見応えのある作品になっているなと思います。自分の演技については、やっぱりどうしても「もっとこういうやり方もあったかな」などと――反省というよりあくまで一案としてそう思ってしまうこともあるのですが、でもそれよりも、最初の方は分散収録で他の方々がどう演じられているのか知らない部分があったので、半分以上はいち視聴者としての目線で楽しんで見ています。

◆反響もたくさん届いているのではないですか?

そうですね。同業者からもそうですけど、ファンの方々からの反響が大きくて。それだけ大きな作品なんだなと、放送が始まってからより実感しています。やっぱり僕にとっては、自分のことよりも、作品を見てくださることが一番うれしいので。収録は放送前に全て終わっていたので、あとは頑張って盛り上げていけたらと思っています。

『薬屋のひとりごと』
『薬屋のひとりごと』©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

◆第1クールを経たときに、壬氏に対する印象が変わったり、新しい発見があったりはしましたか?

最初から先の流れを見据えて、監督や音響監督とも相談しながら演じていたんです。1話時点では艶やかで、でもそこが猫猫からすると気持ち悪くもありつつ(笑)、物語が進んでいくにつれてだんだんと素を見せ始める、みたいな。なので、演じていく中で、自分が思っているよりもう少し素の部分をはっきり出してもいいのかなとか、そういう発見はありましたが、印象の変化というのはあまりなかったですね。

◆素を見せられるようになるくらい、壬氏の猫猫に対する見方は変わってきていますよね。

壬氏からすると、猫猫って最初はただの面白い存在でしかなくて。高順も言ってましたけど、新しい珍しいおもちゃを見つけてちょっとワクワクしているような。でもだんだん、おもちゃとして扱いたくないという気持ちが芽生えてきて。それは猫猫と一緒に過ごしてやりとりをする中でのいろいろな積み重ねによるものだと思うのですが、やっぱり5話の簪を与えるシーンはそれまでの中で一番大きなきっかけになっているように見えましたよね。

『薬屋のひとりごと』
『薬屋のひとりごと』©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

◆猫猫が実は男に襲われないように醜女に見える化粧をしていたと知って、簪を与えていましたね。

壬氏がそれまで、目を塞いでいたわけではないけども、目が行き届いていなかった花街での実情が猫猫から語られて。それによって壬氏の中で、猫猫がただ面白い存在だったのが、そうではない存在に見えてきたんだと思います。簪を与える意味は、当然壬氏は知っているはずで。だからやや気恥ずかしさはありつつも、壬氏の中には猫猫に対してそれまでとは違う感情があったのかなと思います。

◆簪を与えるのは、“自分のお気に入り”という証ですからね。

ただ、これはあくまで僕が演じたときの考え方ですが、壬氏としてはそこまではっきりとした感情ではなかったのかなと。自分でもあまり気持ちの整理がつかないまま、でも今は猫猫に対してこうすべきなんじゃないかと取った行動なのかなと思います。

◆でも簪を与える意味を知らない猫猫には、壬氏の気持ちは全く届かず…。

簪を折ろうとしていましたからね(笑)。

『薬屋のひとりごと』
『薬屋のひとりごと』©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

◆猫猫は李白からも簪をもらい、それを利用して7~8話では一緒に里帰りをして。戻ってきた猫猫の前で壬氏が嫉妬心を露わにし、あらぬ誤解までして固まってしまうシーンはかわいらしくもありました(笑)。

壬氏と猫猫って、そういう部分ではずっと噛み合っていないんですよね(笑)。それがよく表れている面白いシーンでした。確かこのとき初めて壬氏は猫猫の前で、自分のことをそれまでの「私」ではなく「俺」と言ったんです。きっと意識していたわけではなく、ついつい素が出てしまったんでしょうけど。壬氏って猫猫の前だとそうなってしまう面があるんですよね。演じていても面白かったです。もう少し子供っぽくしてもらって大丈夫です、というようなディレクションをいただいた記憶があります。

◆11話では阿多妃が後宮を去ることになり、珍しく酔っ払った壬氏が猫猫に背中越しに抱きつきながら涙するシーンも。

壬氏から明言されてはいませんでしたけど、誰かとお酒を飲んでいて。そこでのやりとりや、酔いの勢いもあり、ついつい猫猫に甘えてしまったんでしょうね。でもあれは壬氏と猫猫の甘いシーンというより、物語の流れの中でのしっとりとしたシーンなのかなと僕は捉えていて。そういう意味ですごく大事なシーンだったと思います。

『薬屋のひとりごと』
『薬屋のひとりごと』©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

◆12話では猫猫のためを思って解雇するも、気持ちを誤解していたことに気付いて。猫猫の唇に触れて、指についた赤い紅を自分の唇に重ねるシーンがありました。

それもそもそもは、壬氏と猫猫が噛み合っていないというところが発端になっていますからね。だから端から見ると、何やってんだこの2人は、っていう(笑)。11話、12話と、壬氏は猫猫の前でより取り繕わなくなってきていますよね。壬氏から猫猫に対しては随分歩み寄っているんですけど。いかんせん猫猫に壁があるので近づけない、みたいな(笑)。でも、もしかしたら猫猫も壬氏の魅力みたいなものに少しは当てられちゃっているのかな、どうなのかなって。この取材を受けている段階ではまだ放送前なので、どのような演出になるか楽しみにしています。

◆確かに、猫猫の壬氏に対する見方もまた変わってきている節がありますよね。

猫猫にとって、壬氏は立場が上の人ですから。なのにやけに絡んでくるな、っていう(笑)。でも、先程お話ししたように、不意に壬氏が自分のことを「私」ではなく「俺」って言ったりして。そういう、最初に抱いていた年齢感より幼い部分が見えてきて、もしかしたらそこに親近感ではないですけども――立場が上の人ではあるけれども、少しずつ目線が合ってきているような感覚があるのかなと、客観的に猫猫を見ていて思うところはありますね。

◆もどかしくもある2人の関係性をどう思いますか?

正直、僕はもどかしいというより、このままでもいいんじゃないかなって。今の距離感がほっとしますし、ずっと見ていたくなるんですよね。

◆壬氏を演じる上で特に意識していることは何ですか?

誰と相対しているのか、というところですかね。猫猫であれば、意識せず素が出てペースを乱されてしまう感覚とか。高順であれば長く一緒に過ごしているのでリラックスできるし、それ以外の後宮の人たちであればしっかりした自分でいなきゃいけないから、ルックスという武器も利用して、ある意味演じているような。そうやって相手を意識することで、壬氏の思考が見えたらいいなと思って演じさせていただきました。

『薬屋のひとりごと』
『薬屋のひとりごと』©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

◆猫猫役の悠木碧さんとは一緒に収録を?

3話からは一緒に録っていました。悠木さんのお芝居は、猫猫が本当にそこに生きていて。とにかくずっと台詞があって、ずっとしゃべっているんです。AパートもBパートも。しかもモノローグもそのまま止めずに、別撮りせずに演じられていて。その流れの作り方みたいなのがやっぱりさすがなんですよね。だから、壬氏としてその中にうまく入らなきゃという、いい緊張感というか、集中力を持って臨めました。猫猫って、感情を常に露わにしているキャラではないじゃないですか。だからこそ、感情がガッと上がったとき――許せないことへの怒りの表現とか。4話で梨花妃の侍女に対して怒っていたシーンもそうでしたけど。

◆病に伏せる梨花妃を美しくしようと、おしろいに毒があるにも関わらずそれで化粧をしていた侍女に対するあの怒りは、すごみがありました。

しかも静かな怒りというか。ただ怒鳴りつけるんじゃなくて。だから芝居としても大げさに感情を乗っけるのではなく、むしろ引かなきゃいけないんですけど。その中でもしっかり感情が乗っているところは、実際に現場で聞いていて勉強になりました。

◆第2クールも楽しみです。見どころを教えてください。

もちろん、壬氏と猫猫の関係もそうなのですが、新たな登場人物、今まで散りばめられてきた謎、これから猫猫がどこに向かっていくのかとか。いろんな点と点が線でつながっていくような展開もあって。軸になるお話がいくつかあるので、何回でも繰り返し見て、目線を変えてみたりするとより面白いと思います。壬氏に関して言うと、彼が本当は何を考えて行動しているのかという部分や、声を張り上げているような今までにない部分も描かれています。第2クールを見た後に1話に戻って見てもまた面白いはずです。そのくらい壬氏というキャラの幅がすごく広がったなと思うので、ぜひ楽しみにしていてください。

PROFILE

大塚剛央
大塚剛央

大塚剛央
●おおつか・たけお…10月19日生まれ。東京都出身。最近の出演作は、『【推しの子】』(アクア役)、『SYNDUALITY Noir』(カナタ役)、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(ラウダ・ニール役)など。1月以降も『ゆびさきと恋々』(芦沖桜志役)などが控えている。

作品情報

『薬屋のひとりごと』
『薬屋のひとりごと』©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

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日本テレビ系
毎週(土)24:55~

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