『葬送のフリーレン』市ノ瀬加那×小林千晃インタビュー!2人が語るフェルンとシュタルクの魅力、そして種﨑敦美のすごさ

特集・インタビュー
2023年10月13日
『葬送のフリーレン』
『葬送のフリーレン』©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

アニメ『葬送のフリーレン』(日本テレビ系 毎週(金)後11・00)の最新話が、10月13日に放送される。『金曜ロードショー』にて初回2時間スぺシャルでスタートを切り、以降、日本テレビ系全国30局ネット『FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)』にて放送中の同作。TVLIFE webで実施してきたキャスト陣への全3回にわたるリレーインタビューのラストを飾ってくれるのは、主人公のフリーレンの弟子として共に旅をする魔法使い・フェルン役の市ノ瀬加那さんと、その2人のパーティーに合流することになる戦士・シュタルク役の小林千晃さん。2人は自身の役柄にどう向き合っているのか。10月13日の放送回の見どころなども語ってくれました。

◆完成した映像をご覧になって、どんな感想を持ちましたか?

小林:映像と音楽の親和性が素晴らしかったです。映像はワンカット、ワンカットが繊細に描かれていて。フリーレンのあの独特の雰囲気――優しいんだけどちょっと儚さがあるような、あの雰囲気も含めて。そこにEvan Callさんの音楽がマッチしていて、すごく引き込まれました。

市ノ瀬:このクオリティーの映像と音楽をテレビシリーズでできるんだっていう。私もそこに驚きました。何げないワンカットでも、泣きそうになってしまって。胸がきゅーっとなるんですよね。そうなるくらい、すごくこだわりが詰まった作品になっているなと思いました。

『葬送のフリーレン』
『葬送のフリーレン』©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

◆初回SPでの初登場時はまだ幼かったフェルン。フリーレンの下で魔法使いとして修業し、自分を育ててくれたハイターが倒れようとも、一日も早く一人で生きていく術を身に付けるために。それがハイターへの恩返しになると信じて修業を続ける姿が印象的でした。

市ノ瀬:戦災孤児で両親のいないフェルンが命を絶とうとしていたところを引き留めてくれたのがハイターで。それをきっかけにフェルンはハイターに拾われて、ずっと一緒に暮らしてきた。フェルンにとってハイターは祖父のようでもあり、師匠のようでもあり。その中間くらいなのかなというイメージがあります。フェルンはそんなハイターに対して恩義を感じているでしょうし、だからこそ自分の成長した姿を見せることで安心させたかった。あのシーンには、フェルンのその真っすぐな思いが強く表れていましたよね。

◆ハイター亡き後、フェルンはフリーレンと共に旅に出ました。

市ノ瀬:フリーレンとフェルンの関係性って絶妙ですよね。その時々で違っていて。魔法使いとしてはもちろんフリーレンが師匠でフェルンに教えてくれていますけど、それ以外の日常ではフェルンがお母さんのようにフリーレンを引っ張っていますし。でも、そのどちらにもなれるというのが2人の関係性の魅力で。大前提としてフェルンはフリーレンのことを尊敬していて、その上でビシっと言うこともできる。そういう関係性を築けているというのがすてきですよね。2人のやりとりは見ていて本当に飽きません。ずっと見ていたくなります。特に好きなのが、初回SPの買い出しのシーン。フェルンはフリーレンが余計なものに手を出すんじゃないかとこっそり後をつけていって。そしたら、実は誕生日のフェルンのためにプレゼントやお店を選んでくれていたという。昔のフリーレンだったら、人の誕生日を祝うことにどんな意味があるのかと疑問に思っていたでしょうね。もしかしたら今も少なからずそう思っているかもしれません。でも、ちょっとずつ変化が生まれつつあって、きっとフェルンは喜んでくれるだろう、だからそうしてあげたいと思ってくれていたというのがエモーショナルでした。

『葬送のフリーレン』
『葬送のフリーレン』©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

◆そして5話から登場したのが、紅鏡竜の襲撃を受けた村でフリーレンたちが出会ったシュタルク。アイゼンの弟子で大きな斧を手にした戦士でありながら性格は臆病という、そのギャップが印象的でした。

小林:シュタルクは自分に自信がないんですよね。だから初対面でフリーレンに対して泣いて助けを求めるという。かなり情けなくはありますけど、でも、シュタルクにしてみればそんな姿をさらしてでも村を守りたかったわけで。自分の故郷でもない村のためにそうまでできる彼の優しさが表れていましたよね。

◆しかし、ラストでは実は高い戦闘力を秘めていることが暗示されていました。

小林:その強さを際立たせるためにも、先にいっぱい情けないところを見せておこうと。そこからフリーレンやフェルンの言葉だったり、村の人たちと過ごした日々だったりにだんだん突き動かされて。そこでようやく強さを発揮するというところにピークを持っていけたらいいなと。そういうふうに組み立てていきました。

◆フェルンとシュタルクのどんなところに魅力を感じていますか?

市ノ瀬:フェルンは“ザ・女の子”。そのあんばいが絶妙なんですよね。一緒にいる相手によって彼女の良さって違っていて。フリーレンといるときは、先ほども言ったように時にお母さんのようで、髪を結んであげたりもしていて。でもシュタルクといるときは、きっと初めての同年代の男の子でどう接していいのかまだよく分からないのか、冷たくなってしまったりもする。そこが等身大の女の子っぽくてかわいいです。

小林:シュタルクはやっぱり優しいですよね。もし現実世界にいたら、この若さにしてちゃんと親孝行とかしてそうで。その一方で、同年代のフェルンにデリカシーのないことを言っちゃったり、よかれと思ってやったことが裏目に出ちゃったり。年頃の男の子あるあるみたいなものが詰め込まれていて。でもその根っこにあるのは優しさ。あとは、自己肯定感の低さですね。まだまだ未完成なんですけど、でもそこが彼の魅力だと思うんです。それはフェルンも同じで。フリーレンという偉大な魔法使いの下で成長し、周りから見れば十分すごいんですけど。一緒にいるのがフリーレンだからこそ「私なんていつまでたっても…」とやっぱり自己肯定感が低い。だから、シュタルクとフェルンって全然違うようで、どこか似てるところがあるなって。

市ノ瀬:私、フェルンと一緒にいるときのシュタルクが好きなんです。基本フェルンの尻に敷かれていて。ちょっと怖がってる感じもいいですよね(笑)。

小林:見ようによっては姉弟にも思えますよね。

『葬送のフリーレン』
『葬送のフリーレン』©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

◆演じる上で特に意識していることは何ですか?

市ノ瀬:フェルンって最初は淡々としているイメージがあったので、そう演じようとしていたんです。でも、フリーレンはエルフで、フェルンは人間。その対比をつけるためにもうちょっと感情豊かにしてほしいですという指示を頂いて。「あ、私のイメージよりももっと感情を出してもいいんだ」と、そのときに気付かされました。ただ、確かにフェルンは人間らしさがあって、心の内にいろいろな感情の動きがあるんですけど。それを出し過ぎてしまうとフェルンではなくなってしまうので、特に序盤はそのあんばいを模索しながら演じていました。ギャグパートも多いので、そこではフェルンらしさを保ちつつ、少し緩めましたけど。特にシュタルクが出てきてからはコミカルさが増すので。

小林:僕の場合は――これは別に僕が自分でそう思っているわけではないんですけど、オーディションとかで“声がカッコよすぎる”って言われることがあるんです。声にそういう成分が多いみたいで。でも、シュタルクは絶対そういうふうにしたくなくて。「カッコよくなるな、カッコよくなるな…」と思いながら演じていました。シュタルクは先ほども言ったように、普段は情けないんですけど、いざというときにカッコよくなる。だからと言ってそれを“やるときはやるんだぞ”みたいに押しつけがましくしたくなかったんです。とはいえカッコ悪くなるようにするのも違うので、あえて普通にしゃべりました。

市ノ瀬:シュタルクに関しては、小林さんのお芝居がすごくすてきで。

小林:本当に?

市ノ瀬:そんなに年齢も変わらないはずなのに、とても安定感があって、シュタルクの等身大の男の子の感じが的確に表現されているので、よりシュタルクを好きになりました。

小林:市ノ瀬さんこそ、こういう静かな役を演じるのをあまり見たことがなかったのでどうなるんだろうと楽しみにしていたんですけど、フェルンにぴったりで。あと、役者としての属性が種﨑さんと近いですよね。シュタルクは5話からの登場だったので、僕もそこからアフレコに参加したんですけど。2人共、めっちゃ静かだったんです(笑)。

市ノ瀬:確かにそうでしたね(笑)。

小林:「おはようございます」のあいさつ以外、全然しゃべらない(笑)。その時点で2人の空気感はもう完成されていました。いやでも、決してその沈黙が嫌なわけでも、気まずいわけでもなくて。もともと2人共そんなにいっぱいしゃべるタイプではないんでしょうし。お互いに尊重し合っているというか。合間の時間はそれぞれしっかり台本に目を通して過ごしていて。まさにフリーレンとフェルンにリンクしていて、その関係性がお芝居での掛け合いにも生きている気がします。

市ノ瀬:どの現場でもわりと静かな方で…。決してこの現場だからあえてそうしているとかではないんです(笑)。

小林:だから僕は最初、迷ったんです。シュタルクとして加わる上で、その空気感に溶け込んだ方がいいのか。それとも、彼らしく快活に、まあフリーレンやフェルンよりはコミュニケーション能力もあるので、そのトーンでいた方がいいのか。結局は自然と前者になっていきましたね。

市ノ瀬:小林さんは途中参加なのにそれまでもずっといたかのような安心感があって。現場のムードメーカー的存在です。会話の中心にはいつも小林さんがいらっしゃいます。

小林:うれしいな。

市ノ瀬:フリーレンとフェルンの静かだった旅にこれからシュタルクが加わってちょっとにぎやかになるのともリンクしていて、不思議な感じがしました。

『葬送のフリーレン』
『葬送のフリーレン』©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

◆フリーレンを演じる種﨑さんのお芝居の印象は?

市ノ瀬:本当にすごいです。これまでも共演自体はあるんですけど、メインの役柄同士でここまでがっつりご一緒して、種﨑さんのお芝居を近くで感じ取れる機会というのは初めてで。常にお芝居のことを考えてらっしゃる方なんだなというのがひしひしと伝わってきます。私、アフレコ1話に対して結構時間がかかるんです。せりふが多いと4~5時間くらいチェックすることもあるんですけど。種﨑さんもそのくらい時間をかけて1話1話丁寧に作り込まれていると聞いて。こんなに多忙な方なのにそこまでされているということに感動しました。そんな種﨑さんがいらっしゃれば自然と現場の濃度も上がって。お芝居で私たちを引っ張ってくださっている感覚があります。

小林:確かに種﨑さんはそういうタイプの座長ですね。僕が合流した当初はお芝居に悩まれていたようで。傍から見れば、何をそんなに悩む必要があるんだろうというくらい淀みなく演じてらっしゃったんですけど。種﨑さんほどいろんな作品に出てキャリアを重ねた方であれば、「まあこれでいいかな」ってなってもおかしくはないじゃないですか。でも、ひと現場ひと現場、今でもこんなにも「うーん、今のお芝居どうなんろう」ってなっている。どんなにキャリアを重ねても役者はそうやって常に悩み続けないといけない。慢心したら終わりだなと、あらためて種﨑さんに教えられました。

◆では最後に、10月13日放送の第6話の見どころを教えてください。

市ノ瀬:それはやっぱり、シュタルクが紅鏡竜に挑むその戦いですね。カメラワークもすごいんです。ぐるっーっと360度回ったりしていて。

小林:確かに、あれはすごいよね。

市ノ瀬:そのシーンだけで一体何枚の原画を書いてくださっているんだろうと。あれは映画館で見たいくらいのクオリティーです。アニメになったことで、シュタルクってこういうふうに動いて、こういうふうにすべり込んだりジャンプしたりしながら戦っていたんだ、ということもより分かるはずです。そのずば抜けた身体能力が存分に発揮されています。

小林:戦いのシーンはもちろんなんですけど、その後にシュタルクがフリーレンとしゃべるシーンにも注目していただきたいです。そこはオーディションでも使われたシーンで。ついにアフレコでもここを演じるときが来たかと感慨深くなりました。それを経て、シュタルクはフリーレンとフェルンの旅に加わる。その流れは、演じていてすごく気持ちがよかったです。

PROFILE

市ノ瀬加那
●いちのせ・かな…12月20日生まれ。北海道出身。近作は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(スレッタ・マーキュリー役)、『あやかしトライアングル』(花奏すず役)、『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』(ライラ役)など。

小林千晃
●こばやし・ちあき…6月4日生まれ。神奈川県出身。近作は『マッシュル-MASHLE-』(マッシュ・バーンデッド役)、『地獄楽』(画眉丸役)、『SK∞ エスケーエイト』(馳河ランガ役 )など。

作品情報

『葬送のフリーレン』
『葬送のフリーレン』©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

『葬送のフリーレン』
日本テレビ系 毎週(金)後11・00~11・30
『FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)』にて放送

<STAFF&CAST>
原作:山田鐘人、アベツカサ(小学館「週刊少年サンデー」連載中)
監督:斎藤圭一郎
音楽:Evan Call
アニメーション制作:マッドハウス
オープニングテーマ:YOASOBI「勇者」
エンディングテーマ:milet「Anytime Anywhere」
声の出演:種﨑敦美、市ノ瀬加那、小林千晃、岡本信彦、東地宏樹、上田燿司 ほか

©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

●text/図司 楓