須賀健太&荒牧慶彦、初共演で互いに刺激「縁みたいものをすごく感じた」『奪われた僕たち』インタビュー

特集・インタビュー
2024年05月03日
須賀健太、荒牧慶彦

5月9日(木)に第5話が放送を迎え、いよいよ物語も佳境となる、ドラマフィル『奪われた僕たち』(MBSほか 毎週木曜 深夜1時29分~1時59分ほか/各種配信あり)でW主演を務める須賀健太さんと荒牧慶彦さんにインタビュー。ここまでの放送で印象的だったシーンなどを聞きました。

本作は荒牧さんが代表を務めるPastureとキングレコードとの共同企画によって制作された、衝撃のサイコスリラー作品。堺洋一(須賀)の元に届く1個の荷物。その荷物の中には人間の指が1本入っていた。その荷物の送り主は光見京(荒牧)。光見の策にハマるかのように事件に関与していく堺に待ち受けているものとは…。


須賀健太、荒牧慶彦

◆脚本を読んでの印象を教えてください。

須賀:攻めている内容だなと思いました。ある種、ド直球というか、ドラマでこの描写を避けずにしっかりとやりきったら、すごいものになるんじゃないかなと。台本の段階だとどういうふうに映像化されるのか、まだ分からない中でしたが、これをそのまま映像に落とし込みたいと思いました。監督やスタッフチームと話をしていてもその感覚が共通してあったので、いい戦いができる、挑戦的な現場になると感じました。

荒牧:僕が演じる光見の視点からは単純に恐怖というよりも、物語自体が美しいなと思いました。光見の思想は、ある意味、ウイルスではないですけど、光見のカリスマ性によって人に伝播していく、そして誰しもが共感できるからこそ、せきを切ってしまったら、そっちの方向に流れてしまうような感じがすごく美しいなと。これをいざ自分と健太君が演じて映像化した際に、血や殺人の描写なども出てきて怖いですが、現代に生きている方々に刺さる物語なのではないかという直感がありました。

◆演じられたキャラクターをどのようにとらえられましたか? またどんなところを一番大事に演じられたのでしょうか?

須賀:堺は光見と対極というか、すごく平凡な現状を過ごしていて、でも、堺はその平凡な現状に対してフラストレーションみたいなものをすごく感じているんです。それは自分がドキュメンタリーで賞を取った過去があるけれど、今はうだつの上がらない生活をしているから。それが光見と出会って、少しずつ自分の感情が変わっていって、光見の思想みたいなものに感化されていきます。意識したことは、堺は見ていただく方に一番近いというか、堺を通して作品の芯の部分が伝わると思ったので、素直に起きる事柄1つ1つにちゃんと目を向けて、そこで動くものを一番大事にしようと思って演じていました。

◆映像を撮るぞという堺の情熱は共感されましたか?

須賀:俳優として、カメラの前に立って、映像を作る仕事をしていますし、僕自身も物作りにとても興味があって、「いい画を撮りたい」みたいな感覚は少なからず分かるので、すごく共感できました。ドキュメンタリー映像を本当に自分でカメラを回して撮影をするシーンが多かったので、そういうところから堺になっていったように思います。撮りたい画みたいなのが自然と自分の中にも生まれてきました。もっとこうやって撮りたいみたいな気持ちから得るものがすごく多かったので、堺を演じていくうえで大切な手がかりになっていました。

荒牧:めちゃくちゃこだわっていました。健太君自身が「もう1回撮り直していいですか」とリテイクをお願いしていることもあって。

須賀:最初はどう撮るのかなと思っていました。普段は「そういう風」でカメラマンさんが撮ることが多い中で、打ち合わせの段階から「撮ってもらいます」と言われたので、結果的にすごくこだわっちゃいました(笑)。

◆撮っているときにどういうものを撮ろうと心がけられていましたか?

須賀:ドラマとドキュメンタリーのどちらもやられているカメラマンさんから、セオリーや、これはこうした方がいいみたいなところを聞きながら撮らせてもらいました。ドラマとドキュメンタリーでは、根本的に見せなきゃいけないものや、情報量などが違うと知りました。寄りたいなとか、これが見たいなというところに、どれだけ瞬発的に体が動けるようになるかも大事らしくて。なので、表情が見たいと思ったときにすぐ寄って、どう動いたら良いポイントに入れるのかなどは、やりながら少しずつ分かっていったところです。

◆カメラでの撮影以外にも共感できるポイントはありましたか?

須賀:僕も長くこの業界にいさせてもらっている中で、高校生、大学生ぐらいの時期に、堺とは少し質は違うのかもしれないですけど、現状やこれからに対してへのフラストレーションを感じたことはありました。それはすごく人間らしい感情だと思うし、その経験があったからこそ堺を理解できた部分もあります。

◆荒牧さんは光見をどのようにとらえられましたか?

荒牧:光見はたぶん誰しもが一度は思ったことがある部分を少しこじらせすぎた役どころなのかなと。こじらせすぎて、殺人という行動に向かってしまう。ですが、自分の信念のために芯を曲げずに行動していく姿は、方向性こそ間違っていますが共感を持てます。そういう芯を曲げないところはちょっと自分に似ている部分もあったので、光見という人物を作りやすくはありました。

◆どんなところが似ているのでしょうか?

荒牧:光見は僕とは全く違う間違った思想の持ち主なんですけど、その思想を完遂させるための工程というか。僕も物事に対して段階を踏んで考えていくタイプ。プロセスを踏んで考えるので、そういう部分は似ているなと。

◆光見の悪に対しての正義感みたいなものにも共感できましたか?

荒牧:どうしても相いれない人だって絶対いるし、悪に対する考え方もそれぞれで、その悪に対する自分なりの接し方もいろいろあるとは思いますが、そういう部分は僕も感じることがありますし、皆さんも共感できるのではないでしょうか。

◆一番意識したところはどこでしょうか?

荒牧:淡々としている中で、どこか狂気を感じるような、一見普通に話しているけれども、話しているうちに“この人、どこかおかしいんじゃないかな”みたいな雰囲気を醸し出せたらいいなと意識して演じました。

◆光見がピアノ講師ということで、実際に荒牧さんがピアノを弾くシーンもありますが、いかがでしたか?

荒牧:小学校3年から6年ぐらいまでのちょっと短い期間ですが、ピアノを習っていました。離れているとなかなか指が動かなかったりはするんですけど、ピアノを弾くのは楽しいです。今回、楽譜をいただいて、少し練習させていただく時間もあったので、思い出しながら練習しましたし、文武両道というか、何でもできるからこそみんなが光見に惹かれていくんだろうなという雰囲気を醸し出したいなと思っていました。

◆重いシーンも多い作品でしたが、現場で楽しかったことはありますか?

須賀:和気あいあいとした雰囲気の中で楽しく撮影できたことが一番良かったなと思います。作品に集中できる環境がすごく整っていましたし、この作品のことだけを考えて生活することを全員で共有できていた感覚があったので、期間全体が楽しかったです。あとはカメラで撮影することも楽しかったです。作品のエンドロールで撮影のところに須賀健太と名前を入れていただいて、自分で作品を撮りたい気持ちが芽生えました(笑)。

荒牧:拉致しているときは健太君のカメラで撮っていたのですが、全てを見せないけど、緊迫感があるみたいなアングルがすごかったです。

須賀:自分で撮っているメリットとして、演者同士だからこそ入り込める距離感で撮影できたシーンもあるので、より臨場感を出せたのかなと思います。

荒牧:あと光見が殺していく相手役を演じたのが僕の友人や後輩なんです。なので僕が滝沢役の廣野凌大の首を絞めているところを、竹下役の福澤侑が見ているというシーンは、僕らの関係値を知っているファンの方からしたらきっと面白かったのかなと思います。

◆道徳とか倫理とか、哲学的な部分もある本作ですが、感情の作り方や心の揺れを作るために苦労した点はありますか?

荒牧:光見的にはたぶん日常なんです。自分自身は何も間違っていないと思っていますし、それこそコーヒーを飲むぐらいの勢いで、淡々と実行していくというのは意識しました。淡々と無表情のまま殺していくのでなおさら怖かったと思います。

須賀:僕は目の前で起こることに対して、正直にリアクションして、その場で動くものを大事にしていました。今回、スタッフの皆さんが作り込んでくれていたので画がいいんです。僕はモニターで逐一確認しながら、どのくらいの強弱でやると一番伝わるのかを考えながらやっていたので、すごく映像に助けられました。

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