福田雄一インタビュー「舞台のグルーヴ感を映像に切り取れた」『宇宙の仕事』

特集・インタビュー
2016年09月28日

Amazonオリジナル「宇宙の仕事」がAmazonプライム・ビデオで配信中。監督・脚本は、10月スタートのドラマ『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系)、12月上演の舞台「ナイスガイinニューヨーク」、17年公開の映画「銀魂」など、ドラマ、舞台、映画に大活躍の“今最も多忙な演出家”福田雄一監督。福田組のキャストとともに送る「宇宙の仕事」へのお話、配信だからできること、さらにはハリウッド進出まで伺いました。

舞台のグルーヴ感みたいなものをまんま映像に切り取れた

福田雄一インタビュー

――「宇宙の仕事」は福田監督の劇団「ブラボー・カンパニー」が2007年に上演した同名舞台が基になっています。今回、Amazonオリジナルでドラマ化した経緯を教えてください。

『宇宙の仕事』は僕らの劇団がTHEATER/TOPS(シアター・トップス)でやらせてもらったときの勝負作だったんです。任意で無作為に選ばれた人たちが地球防衛軍となって地球を守るために宇宙人を説得して追い返すっていう話で。舞台は2時間のお芝居なんですけど、来る宇宙人の事情が違えさえすれば、10話は作れるなっていう感覚があったんです。今回、Amazonさんがコンテンツを作ろうとしていて、それなりに予算もある。その中で物珍しいものを作りませんかというお話を頂いて、一番最初に浮かんだのがこの企画でした。
僕はもともとバラエティの作家なんで、自分がこれをやりたいっていう企画前提で進めるよりも、どちらかというとメディアのほうに合わせていく考え方をするんですよ。例えばテレ東(テレビ東京)さんでやるんだったら、テレ朝(テレビ朝日)さんでやるんだったらみたいにやらせていただける状況によって変えていくことが多いんです。

――ムロツヨシさん、菅田将暉さん、賀来賢人さん、西野七瀬(乃木坂46)さん、池谷のぶえさん、橋本じゅんさんと福田作品にこれまで出演されていたキャストの皆さんが地球防衛軍のメンバーです。

今回の作品は映像じゃなくて舞台としてやらなくてはいけない作品だと思ったので、実際に、10、20分の場面は頭からずっとカメラを回しているんです。まずはこの20分がっつり撮ることから始める。でもこれは映像の役者さんにはとんでもないアレルギーになるらしんですよ。勘弁してくれよっていう。
例えば『勇者ヨシヒコ』の冒頭の盗賊のコーナーは、わけのわからない盗賊が来て、戦いがあってからオープニングになるっていうのは毎回決まりで、その盗賊の方っていうのはゲストの方なんです。当然のことながら盗賊のくだりっていうのは頭からケツまで撮り切りで1発全部撮るんです。それがゲストの方に“何で!?”と思われることもあって。
やっぱり映像の役者さんは、カットカットで割っていって、ひと言、ひと言の撮影に慣れているところがあると思うんです。でも僕はまず引きで撮らせてくださいと。僕にとって、僕のドラマや僕の映像は引きの醍醐味があって、まずは引きが面白ければ成立するという考えが頭にあるんです。どう考えてもやりとりの間とか、やりとりの強弱みたいなのは引きが一番ですから。
それはやっぱり舞台をやっている方たちだと当然のごとく、入ってきてくれるんです。じゅんさんやのぶえさん、賀来賢人も舞台の経験が豊富ですから、同時に舞台における化学反応っていうことも理解されていて、1人がポンと上がると一緒に上がらなきゃいけないっていうのをすごく臨場感として持っている方たち。いわゆる映像という役者さんよりは舞台の人たちで、古い言葉ですけど、舞台のグル―ヴ感みたいなものをまんま映像に切り取りたかったので舞台を中心に活動している人をお呼びしました。

コーンヘッズとミスターニュートロンをミックスさせた笑いを意識

Amazonオリジナル「宇宙の仕事」

――2話のムロさんと佐藤二朗さんとのやりとりはずっと見ていたい場面ですね。

永遠に見ていられますよね。あの2人の間合いだったり、呼吸の感じは僕も編集で手を加えたりしていないんです。結局、地上波だと尺があるので削ったりしなくちゃいけないんだけど、配信だと尺を気にせず、合わせなくて済む。それは非常にありがたかったです。
ただ編集していた段階で、ひょっとしたらテレビの地上波のOAに乗せるかもしれないって言われたんです。でもそれは勘弁してくれって言いました。例えば、今回37分ぐらいの尺の回もあるんですよ。それを28分尺でとなったときに、どこがどう切れるのかちょっと想像つかなくて。切ることで作品がよくなることもあるんですけど、『宇宙の仕事』に関しては切ってよくなることはないなという気がしたので、これはAmazonさんだけのものにしておきませんかってお話をしました。

――Amazonでの配信は、世界配信にもなります。

僕は『サタデー・ナイト・ライブ』が好きなんです。で、元をただせば結局何がやりたかったかというと、『サタデー・ナイト・ライブ』のコーンヘッズと、モンティ・パイソンの『フライングサーカス』のミスターニュートロンのミックスをしたかったんです。
ミスターニュートロンっていうコントは、『宇宙の仕事』のベースになっているんですね。宇宙ステーションみたいなところからコントが始まり、今宇宙からすごいやつが飛来していると大騒ぎなんです。どうやらそいつが核の力を持っていて、暴れるだけで地球が1発で滅びる可能性があるという前段のお芝居があって。次のカットでイギリスのどこの田舎か分からないような駅に電車が入ってきて、そこにミスターニュートロンっていうたすきをかけた男が電車が降りてくるんです。それからはミスターニュートロンの日常を描いていくんですけど、その1発目が、アイスを食べて当たりが出たんだけど、どうしていいか分からないっていうコントだったんです。で、次のコントが隣の家に住んでいる奥さんと不倫するっていう話なんですよ(笑)。
結局、核を持って地球を1発で滅ぼせる力を持っているやつが、田舎町で隣の主婦と不倫しているっていうギャップが面白くて。ミスターニュートロンが隣の主婦と不倫するっていうのはモンティ・パイソン的なとてもブリティッシュな考え方で、僕はモンティ・パイソンの側面と、『サタデー・ナイト・ライブ』の誰しもが分かるバカ一徹な笑いっていうものの融合系を取り入れたかったんです。

――世界共通の笑いを意識されていたのですね。

アメリカ人はコーンヘッズを見て笑うじゃないですか、何だよ、その形って。 “宇宙の仕事”という宇宙を相対しているのに、防衛軍のメンバーは会社の会議があるからって帰ろうとするやつがいたりとか、いかにも日本人らしくて。アメリカ人が見ても面白いんじゃないかなとか、世界配信をめっちゃ意識しています。

――海外進出も視野に…?

いろんなところで言っているんですけど、『スパイダーマン7』あたり俺が撮れないかなとか、そろそろオファーきてもいいんじゃないかなって思ってるんです。だって『HK/変態仮面』でそれこそニューヨークの映画祭で観客賞もらったんですよ。そろそろあいつ『変態仮面』を撮っているけど、『スパイダーマン』を撮れんじゃないかって目をつけてくれてもいいんじゃないかな。アメリカなんてバカ映画いっぱいあるじゃないですか。あいつなら撮れんじゃねって思ってくれないかなとか。50歳になる前にハリウッドからのオファーがきたらうれしいなぁ。

 

PROFILE

福田雄一インタビュー

福田雄一
●ふくだ・ゆういち…1968年7月12日生まれ。栃木県出身。A型。劇団「ブラボーカンパニー」座長。劇作家、放送作家、ドラマ・映画脚本家、ドラマ演出家、映画監督。10月7日(金)よりドラマ『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系)、12月7日(水)~12月27日(木)まで「ナイスガイinニューヨーク」(シアタークリエ)、2017年公開映画「銀魂」など作品が控える。近年にはドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズ、『ニーチェ先生』『アオイホノオ』、映画「HK/変態仮面」「明烏」「女子―ズ」など。


番組情報

Amazonオリジナル「宇宙の仕事」

「宇宙の仕事」

<STORY>
地球侵略に来た異星人から地球を救うため地球防衛軍に任命された男女6人が奮闘するコメディ。1話完結で毎回、宇宙人役でゲストが登場する。

<STAFF&CAST>
監督:福田雄一
出演:ムロツヨシ、菅田将暉、賀来賢人、西野七瀬(乃木坂46)、池谷のぶえ、橋本じゅん

Amazonプライム・ビデオにて配信中(全10話)
https://www.amazon.co.jp/ref=nav_logo

 
●photo/中村 功