お笑いトリオ・トンツカタンの森本晋太郎さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、『ネタパレ』の勝ち抜きショートコントバトルに出演した話。(TVLIFE 2025年10月29日発売号より転載)
「あの日僕らも優勝していた」
今でこそバラエティ番組に出させていただく機会も増えてきたが、僕がまだ駆け出しのネクストブレイク芸人だったころはテレビに出られる唯一のチャンスがネタ番組だった。オーディションを通ることさえできれば、どんなに無名でもネタ中は自分たちだけを映してもらえる上に、スタジオでテレビスターの方たちに見てもらえる。そんな夢のような体験を手繰り寄せるため、なるべく多くの宝くじを買う感覚でネタ作りに励んだ。ありがたいことに賞レースで目立った成績を残していない割にはいろんなネタ番組に拾っていただき、そのおかげで心が折れずにネクストブレイク道を歩み続けることができた。
その内のひとつがフジテレビの『ネタパレ』で、この番組のおかげで普段行けないお台場に何度も通うことができた。しかし、今まで深夜に放送していたのが少し前から土曜日の夕方に枠が移動したことにより、今までほど若手が出る機会がなくなってしまったように感じた。
そんな矢先、ネタパレが芸人9組を集めて行う『勝ち抜きショートコントバトル』という企画のオファーをいただいた。島田珠代さんやトレンディエンジェルさんなどの超売れっ子から僕たちのようなネクストブレイク芸人までごちゃ混ぜのラインナップで、深夜時代のスピリッツを感じざるを得ない。時間帯が変わっても、ネタパレはネタパレのままだったんだ。変わったのは、ひねくれていた僕の方だった。番組への罪悪感を抱えながら、もちろんありがたく出させていただくことに。
せっかくリニューアルしたネタパレに出演するのだからと、今の僕らが揃えられるもっとも強いショートネタを4本用意した。当然勝ち抜くつもりではあるが、我が芸人人生において勝ちよりも圧倒的に負けの経験が多いため、「勝ち続けることはないだろう」なんてうっすら思ってしまっていた。
しかしながらいざ本番を迎えると、審査員である観覧のお客さんと相性がよかったのか、あれよあれよという間に最終決戦まで勝ち抜き、用意した4本のネタすべてを披露した上に最後は島田珠代さんとフルーツポンチさんを制して優勝することができた。いつぶりの勝利だろうか。周りの芸人たちに祝福されることが照れ臭くも新鮮で嬉しかった。
最近はネタ番組も減ってきている中でショートネタを4本やって優勝する姿を放送してもらえるなんてこんな素晴らしいことはない。しかも放送時間的にも初見の人に我々の勇姿を見てもらえるに違いない。ワクワクしながら改めて放送日時を確認すると「10月11日(土)18:30〜」と書いてあった。
キングオブコントとまったく同じ時間だった。
今このコラムを執筆しているのが10月14日。SNSを開くたびに僕のタイムラインはキングオブコントで持ちきり。様々な考察や裏話、後日談にファンアートと、話題が尽きる気配がない。
あれ?勝ったはずなのに、大きく負けた気がする。
森本晋太郎
●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」も好評。初の書籍「ツッコミのお作法」(KADOKAWA刊)も好評販売中!










