広瀬すず×是枝裕和監督インタビュー「すずには女優としての大器感を感じた」『三度目の殺人』

特集・インタビュー
2017年09月08日

オリジナル脚本による法廷心理ドラマ「三度目の殺人」で、「海街diary」以来、約2年ぶりに広瀬すずさんをヒロインに起用した是枝裕和監督。女優として、ひと回り成長した広瀬さんに対する思いとは? そして、再び是枝組に戻ってきた広瀬さんの是枝監督への思いとは?

広瀬すず×是枝裕和監督インタビュー

◆「海街diary」以来、約2年ぶりとなるコラボですが、是枝監督が女優として開花させた広瀬さんを、最新作のヒロインに起用した理由は?

是枝監督:「海街diary」でいい出会いをしたこともあって、僕は広瀬すずを成長とともに撮り続けたいと思っているんですよね。単純に女優としてのポテンシャルの高さをもっと引き出したい。すずに「もう是枝さんはいいかな」と言われない限り…(笑)。

広瀬:そんなこと言わないですよ(笑)。「海街~」の時は、ちょうど高校に入るときで、今回は卒業するタイミングだったんですよ。是枝監督の現場は、どの現場よりも「この感覚は今しかないんだ!」と思わせてくれる現場なので、今回お話を頂いて「やったー!」と思いました。

◆この2年間の広瀬さんの活躍を、是枝監督はどのようにご覧になっていましたか?

是枝監督:とにかく女優さんとしての大器感を感じてました。演出家として、そういう欲をかき立てさせる対象になっている。だから、いろんな監督が撮りたいんだと思うんだけど、もう階段を3段抜かしぐらいで駆け上っている感じがするよね。僕のほうがもう息が上がって置いていかれそうだけど(苦笑)。

広瀬:(笑)。是枝監督の現場はとにかく安心感というか、構えなくていい感じがするんです。「海街~」の時は、私だけ「次にどんなシーンを撮るのか、どんなせりふをしゃべるのか」を知らないまま、フラットな状態で撮影したんですが、それが自分に合っていた気がするんです。今回は先に台本をもらったんですが、そのフラットさみたいなものは前とあまり変わらなかった感じがしました。

広瀬すず×是枝裕和監督インタビュー

◆今回、広瀬さんが演じた咲江は、役所広司さん演じる容疑者に“父親を殺害された娘”という役で「海街~」とはかなり異なる役でした。

是枝監督:今回は爆発させない内面に抱え込んでいる感情の複雑さというか、“黒すず”を出したかった。でも、せりふの語尾だけで観客にいろんな感情を感じさせなきゃいけない難しい役だったと思うけど、それを見事に表現していたよね。というか、完璧だから今回僕は何もしなかった。「大変です」とか弱音を吐かないし、僕に何も聞いてくれないし、せりふが全部入っているというか役が入っているから、現場で全く台本を開かない!

広瀬:え、見られていたんですか! せりふは多分、覚えるのが得意なんだと思います。でも前は一回やってダメだったら、監督は何か言ってくれたのに今回は何も言ってくれなかったんですよね。私、今まで自分の考えをあまり口に出さなかったり、どこか抑えている役があまりなかったんです。もともと自分の性格がそうなので、明るい性格の役を演じたときのほうが役から抜けなかったりするんです。だから今回の咲江は自分に似てるというか、咲江の感覚がよく分かりました。

是枝監督:最初に、「斉藤由貴さんが演じた母親は被害者意識でできているのに、娘の咲江はむしろ加害者意識がアイデンティティ」という話をしたぐらいしか、役について話した覚えがない。斉藤さんは毎回違う感情でお芝居される方なので、それを受けるすずは大変だったと思うけど、僕が「これだ!」と思う芝居が出てくるし、懐が深い、という印象です。この若さで。

◆今回、初共演された福山雅治さんとはいかがでしたか?

広瀬:福山さんは普段カメラが回っていないときにわいわい話していたこともあって、カメラが回っても、どこか同じ目線で話してくださるような感覚でした。だから、私をすごく見られているような感じもありましたし、大人の男の人というブレないものもあって、そういう距離感が不思議な感覚でした。

是枝監督:福山さんとの薬局のシーンで、棚越しに、すずを撮ったんだけど、そこですずが見せるしぐさのタイミングみたいなものが素晴らしかったんだよね。天候とか、自然現象を味方に付けることはあるけど。カメラと、すずと、棚のコラボでも、棚さえ味方に付けてしまうんだよね(笑)。

広瀬すず×是枝裕和監督インタビュー

◆心理ドラマでもある本作の見どころを教えてください。

是枝監督:元気なすずも、魅力的だけど、「こんな役もやれるんだ」というところを見てもらいたいですね。それに「咲江は、今どんなことを考えているんだろう?」と、いろいろ想像することが、とても面白い映画なので、そこを楽しんでほしいです。

広瀬:実は大人の世界も、人間同士のつながりで作られていて、私たちとあまり違わないと思ったんです。私と同世代のお客さんには、この映画でそういった大人の世界を見ることで、これまでと別のものを感じ取れるかもしれないし、どう受け取ってもらえるのか楽しみです!

是枝監督:そして、次はすずが20代になった時に、また、撮らせてください(笑)。

 

■作品情報

「三度目の殺人」「三度目の殺人」
9月9日(土)より全国公開

<STAFF&CAST>
監督・脚本:是枝裕和
主演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、吉田鋼太郎、斉藤由貴、満島真之介、市川実日子、橋爪功

<STORY>
三隅(役所広司)が放火殺人の容疑で起訴され、死刑はほぼ確実。だが弁護士・重盛(福山雅治)は、無期懲役を目指し調査を始める。調査を進めるにつれ、被害者の娘・咲江(広瀬すず)と三隅の接点が浮かび上がる。

公式サイト:http://gaga.ne.jp/sandome/

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●photo/干川 修 text/くれい響 hair&make/佐々木博美(広瀬) styling/梶原浩敬(広瀬)