

テレビ情報誌「TV LIFE」で、今後さらなる活躍が期待されるネクストブレーク俳優の魅力を紹介する連載「#今旬コレクション」。WEB版では、本誌に収まりきらなかったエピソードを紹介します。第110回は劇場用実写映画「秒速5センチメートル」に出演中の青木柚さんが登場です。
「#旬コレ 7seconds CHALLENGE」青木柚
◆新海誠監督の代表作として知られる劇場アニメーション「秒速5センチメートル」の実写版として制作された本作。まず、松村北斗さんが演じる主人公・遠野貴樹の高校時代を演じると聞いた時の心境を教えてください。
劇場アニメーションは学生時代に見ていたので、僕が感じた当時のとりとめのない思いを演技に投影できればと思いました。特に貴樹の高校時代はアニメーションでは第2話の『コスモナウト』と呼ばれる種子島が舞台のパートで。そこは自分の学生時代を重ね合わせるようにして見ていたところでもあるので、その時の記憶や体験の全てを詰め込みたいという思いで役に臨みました。
◆貴樹を演じるにあたって、奥山由之監督からはどんなリクエストがあったのでしょうか?
会話のシーンでは「きれいにしゃべらないでいいよ」と演出していただきました。スラスラと会話が成り立つ感じではなく、言葉がよどんだりする部分を大事にしたいから「自分の言葉で話してほしい」と。「本当に伝えたいことがある時は、ちょっと間ができるよね」といったヒントを頂き、監督が会話のテンポを導いてくださる場面もありました。人が演じるということは、言葉以外にも体や目の動きがあるわけで。実写版ではそういったものを大切にしたいという監督の思いを感じる場面が多くありました。
◆青木さんは、主に貴樹に思いを寄せる澄田花苗を演じる森七菜さんとのシーンが多かったと思います。現場の様子はいかがでしたか?
僕の中で花苗のイメージと森さんが既に結びついていたので、相手役が森さんと聞いてすぐに「そうですよね」と返した覚えがあります。クランクインの日の撮影が1日中二人でバイクに乗るシーンだったんですが、その瞬間から森さんがあまりに花苗だったので、“やばい。僕はこの花苗と並ぶ貴樹でなければいけないんだ…”と思ってものすごく焦りました(笑)。ただ、森さんが「貴樹は誰になるんだろう」と前から話していたと明かしてくれて。「私は青木君かなと言っていたから、実際にそうなってすごくびっくりした」というようなことを言ってもらって、肩の力を抜いて撮影することができました。
◆特に印象に残っているシーンを挙げるなら?
全てが印象的です。花苗が一人で懸命にサーフィンに取り組むシーンもですし、俳優としても人としても心を動かされる場面がたくさんありました。一つ挙げるとするならば、貴樹と花苗が原っぱに並んで座って進路の話をするシーンでは、そこから見る種子島の景色が信じられないほど美しくて一生忘れられないと思いました。原作の「秒速5センチメートル」の空気感も肌で感じましたし、間違いなく“奥山監督の作品の中にいる”という雰囲気も感じ取れたのですごく感動して。
◆演じるにあたってロケーションに助けられた部分もあったのでしょうか。
本当にそうですね。種子島に着いてから得たものがたくさんありました。新海さんもアニメーションを描く時にこの景色を目の当たりにしていたのだろうなと感じましたし、おこがましいですが、そのほんの一部に自分も触れられたという思いになって感激でした。映画を見てくださる皆さんにも、ぜひあの風景の美しさを感じていただきたいです。
◆劇中のワンシーンにちなんで、青木さんが宇宙に残したい言葉といったらなんでしょう?
なんだろう…。“へんてこ”ですかね。なんか響きがいいし、ちょっと惹かれる言葉だなって。角がなくて好きなんですよね。
◆今後、出演したい作品のジャンルや演じたい役柄はありますか。
もう少し歳を重ねたら、学生の背中を押す役とかやってみたいですね。これまではたくさんの大人の方々に見守ってもらってたので…。先輩役はやったことがあるんですが、相手を陥れるような役だったので、今度は頼れる近所の兄ちゃんを演じてみたいです。
◆最後に本作の注目ポイントを聞かせてください。
新海さんの繊細なアニメーションの世界と“人物を撮る”奥山監督の演出によってキャラクターの息遣いが伝わる作品になったと思います。それぞれの季節を感じる映像が美しいけれど、あるべくして四季が存在しているというか。種子島はもちろん、あらためて日本の風景の美しさも感じられます。劇場で見ていただきたいです。
PROFILE
●あおき・ゆず…2001年2月4日生まれ。神奈川県出身。主な出演作はNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』、映画「飛べない天使」など。現在、ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)に出演中。
●photo/干川 修 text/土屋華夏 styling/杉浦優 hair&make/天野紘一