
漫画家の藤原カムイさんが、人気漫画『ドラゴンクエスト エデンの戦士たち』の正統続編となる新連載『DRAGON QUEST EDEN』を、2026年1月5日発売の「ヤングガンガン」にてスタートさせました。
2月5日にはゲーム『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』のリメイク版『ドラゴンクエストVII Reimagined(以下、リイマジンド)』が発売し、今まさに「エデン」の世界への注目が高まっています。
20年という時を経て連載を再開させた心境とは。また、AIの台頭など激変する環境の中でクリエイターとして何を大切にしているのか、漫画家という枠を超えて活動を広げる藤原さんを取材しました。
運命的なタイミング”で始動した続編
――『DRAGON QUEST EDEN』連載開始、おめでとうございます。やはり「リイマジンド」発売がきっかけでしょうか。
藤原:いえ、実は驚くほどの「偶然」が重なった結果なんです。スクウェア・エニックス ヤングガンガン編集部の担当編集が新しい方に変わったタイミングで、「また(エデンの連載)やりませんか?」とお声がけいただいたのが発端。そのとき僕自身も「そろそろエデンを完結させたいな」という気分でした。
それで連載再開を決めてから2週間後くらいに、リイマジンドの発売がスクウェア・エニックスから発表されたんです。同社と示し合わせたわけではなく、本当にたまたま。運命的なものを感じました。
「もう、ファンタジー作品は十分かな」なんて気持ちもあったんですけどね(笑)。これまで『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』、『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 ~紋章を継ぐ者達へ~』と2つの物語を描いてきて、“ファンタジー世界に引導を渡す”みたいな形で終えたつもりでしたから。
とはいえ、「途中のまま、描き切れていない作品をきちんと決着させたい」とも思っていたところだったんですよね。
――ファンにとってはたまらない再始動です。
藤原:ありがとうございます。ただ前作(漫画『ドラゴンクエスト エデンの戦士たち』)完結から 20年も経っているので、その続きからいきなりスタートすると『EDEN』から読み始める方にとっては少し不親切になるでしょうから、その点には気を配っています。初見の読者にもわかりやすいように描きつつ、5年くらいでしっかり完結させたいですね。
AI時代に問う「効率」と「生みの苦しみ」の価値
――前作連載時と比べ、クリエイターを取り巻く環境が大きく変わっていますよね。特に無視できないのが「AI」ではないでしょうか。
藤原:僕は、AIを否定も肯定もしていません。仕事で少し使うこともありますよ。シナリオ設定やデザインを相談する相手、という程度ですが。
最近は画像生成AIが珍しくなくなってきていますが、やっぱりパッと出力された絵よりは、肉筆で描いたもののほうが、伝わるものがあるんじゃないかなとは思っています。
漫画って本来、時間ばかりかかって効率が悪いことなんです。湧き出るものをキャンバスに叩きつけるとか、そういう職業ではない。下書きして、それをなぞって、ペン入れして……僕だって、作業的なことはつらいと感じます。
ただ一つ言えるのは、創作においては「効率がすべてではない」ということです。回り道も必要だし、物語やキャラクターを生み出すとき、いわゆる“生みの苦しみ”がないと愛着が湧かない。その愛着こそ、描き手としてキャラクターを立たせるための大事な要素だと考えています。
苦しんだ分の思い入れや感情、そしてそこから生まれるもの――みたいな、一連の流れを一旦経験してからでないと、本当に自分の満足のいくものは作れないんじゃないでしょうか。バラバラだったパズルのピースが、突然パチッと組み合わさる快感というか。それは、一度味わうと忘れられなくなる要素だと思います。
あとは作品をできるだけ細かく見てもらいたくて、隠しキャラをいっぱい仕込んだ経験なんかも……「効率的かどうか」という物差しで測ると、「とても効率が悪くて大変な作業」と言えます(笑)。でもそういうことが “創作の本質的な楽しさ”でもある。どんなにAIが進化しても代替できないところですよね。

――これからしばらくは『EDEN』の制作でお忙しくなりますよね。連載だけに集中する日々が数年続くのでしょうか。
藤原:連載漬けの毎日、というわけではなく、漫画家以外の活動もしていますよ。
実は愛媛県の水口酒造さんとコラボして、「神零(かみこぼし)」というオリジナル日本酒を2025年2月に作りました。僕がラベルをデザインして、限定本数各100本・シリアルナンバー入りのボトルで販売したんです。
発端は「Fujiwara Kamui Verse(カムイバース)」というプロジェクト。僕が手掛けた作品の世界設定をもとに、読者・ファンの皆さんと一緒にコンテンツを発展・進化させていこう、という取り組みです。「神零」を作るうえで、僕も田植えから参加しました。漫画以外でも、生みの苦しみと楽しさを味わえるとは!
他には、お酒と料理のマリアージュを紹介するYouTube番組にも出演しています。『ドリンククエスト』と言います(笑)。
――ちょっとニヤッとしてしまう番組名ですね(笑)。
藤原:仕掛け人は、マルチクリエイターの夢川閔巳(みんみ)さんです。彼から熱烈なオファーを受けまして、2026年3月に発足したクリエイター・タレント集団「□+ラボ(ハコタスラボ)」(代表:夢川閔巳)にも加わりました。
□+ラボにはイラストレーターや作曲家、フラワーアーティスト、ギタリスト、フォトグラファーなど多様なメンバーが所属していて、これから幅広い仕事依頼を受けていこうとしています。
十数年前のことですが、僕は「今後、『カラーリスト』という職業が出てくるんじゃないか」と予想していました。画一的でなく、作家の個性や絵のタッチに合わせて最適な色塗りができる専門職、みたいなイメージです。自分にピッタリなプロを紹介してくれるカラーリスト集団があったら、面白いのではないかなと。誰か作ってくれないかなあと思っていました(笑)。
□+ラボがやろうとしている試みは、その“カラーリスト集団”のアイデアと近しい気がして。それで「うまくいくかもな」と思ったので、参加したんです。

――藤原さんほどのベテランであっても、挑戦を続けているんですね。
藤原:積み重ねてきた技術や思いがあっても、世に出なければ埋もれてしまいます。誰かに見てもらいたい、共感してもらいたいから作るんです。その原点を忘れずに、外の世界と繋がり続けていきたいですね。人との縁が、きっと面白い場所へ運んでくれますから。
プロフィール
藤原カムイ
漫画家 / イラストレーター
主な作品「雷火」「犬狼伝説」「創世記」「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章」「福神町綺譚」「精霊の守人」「DRAGON QUEST EDEN」
●photo/鈴木謙介 text/藤原綾香









