森田剛「今この時代だからやる意味がある」橋本愛も涙ながらに思いを告白『アナウンサーたちの戦争』

8月14日（月）放送されるNHKスペシャル『アナウンサーたちの戦争』（NHK総合　午後10時～11時29分）の取材会に森田剛、橋本愛、高良健吾、安田顕、演出を手掛けた一木正恵が登壇した。

太平洋戦争では、日本軍の戦いをもう一つの戦いが支えていた。それは、ラジオ放送による「電波戦」。ナチスのプロパガンダ戦に倣い「声の力」で戦意高揚・国威発揚を図り、偽情報で敵を混乱させた。行ったのは日本放送協会とそのアナウンサーたち。NHKスペシャル『アナウンサーたちの戦争』では、そんな戦時中の彼らの活動を事実を基にドラマ化し、放送と戦争の知られざる関わりを描く。

出演は、森田剛、橋本愛、高良健吾、浜野謙太、大東駿介、藤原さくら、中島歩、渋川清彦、遠山俊也、古舘寛治、安田顕ら。脚本は『PICU 小児集中治療室』『今際の国のアリス』などで知られる倉光泰子、音楽は『アバランチ』『インフォーマ』の堤裕介、語りは橋本が務める。

そんな本作の取材会が開催され、森田、橋本、高良、安田らが登壇。自身が演じた和田信賢アナについて、森田は「和田さんは何事も調べて自分の言葉で表現するという人で、そこに僕はすごく魅力を感じましたし、僕自身の仕事にも通じるのかなという思いでいました」と。

「戦争に左右され、影響されていく中で、みんなの信念と信念がぶつかっていく日々はつらかったですが、誇らしくもあり、最後は自分の言葉で責任を持って考えることができたので、すごく幸せな時間でした」と振り返った。

そんな和田の妻・実枝子役を演じた橋本は「今の時代よりも、女性であるが故の立場の弱さや社会での居場所といった葛藤が多い中、それでも強く生きている女性を演じられてとても幸福でした。そして、夫の信賢さんは、私にとっても実枝子さんにとっても心から尊敬できる方で」と。

「一番近くでそんな彼の姿を見守れたことは幸せではあったのですが、同時に彼の生きざまを左右できるのも自分だけなんじゃないかっていう、どこかでそういった責任もあったりして。信賢さんの表現に彼女はとても深く関わっていた女性だと思うので、私自身も信念を強く持って演じるべきだと感じていました」と話した。

高良は撮影の日々を「苦しかった」と話し、「自分たちも俳優なので、書いてあることを読むということが多いんです。でも、そのただ読むってことにすごく難しさを感じていて。館野さんをはじめ、この時代に生きたアナウンサーの方たちも、言葉の力であったり自分のやることを信じ、日本のことを思ってやっていたはずなのに、それがこういう結果になるのかっていう」と。

「戦争が起きてから恐ろしさを感じるのではなく、このようなテーマの作品を見て、この悲劇を繰り返してはいけないなと感じてほしいですし、2度とこういう過ちを犯してはいけないなと」と述べた。

そして、安田は「実在する方を演じる際は、より思いが深くなります。今回も、ご本人やご家族に対する責任を感じながら、いい意味で力が入る役でした。何より、今の日本放送協会が戦時中の日本放送協会を描くというのが、すごいことをやられたなと。そして、”もし戦争が始まったら、同じことを繰り返さない自信はありますか？”と聞かれた時に、“あります”と答えられる発信する側の人間がどれぐらいいるのだろうと、胸に突き刺さる作品だと思います」と語った。

また、演出を手掛けた一木正恵は、「このようにハードなネタですので、私自身が“この方だ”と信じた方々に、資料を作って一人一人丁寧にご説明をして、今回のご出演がかなったのかなというふうに思ってます」とキャスティングについて説明。

「そんな方々が現場に立ち、これらの役を演じてくださっているのを見て、自分の人生のピークだなと思いながらやっていました。ただ、現場では日々必死に模索していて、皆さんのお芝居を堪能できるような余裕はなかったのですが、ここ数日ぐらいでやっと“すごい皆さんだったな”と。本当にありがたかったですし、一緒にやれて幸せだったなと思っております」と感慨深げに語った。

また、撮影現場の雰囲気について、森田は「（一木）監督が“思ったことは思いっきりやって”ということを言ってくださったので、怖さもありながら、思ったことはいろいろやってみようという意識でいました。皆さんと関わるシーンでは、思いが一緒だからこその難しさを感じながら演じていました」と。

いっぽう、橋本は涙を流しながら「私はこの作品を演じている間に少し心がやられてしまって、（撮影から）時間がたった今も癒やされない傷があって…。当時を生きた方々からするとまだまだ弱いものだと思いますが、森田さんが本気でぶつかりながら信賢さんを演じられている熱意を感じ、私が今受けているこの傷は間違いではないと、逃げてはいけないと思いながら演じていました」とコメント。

最後は森田が「今この時代だから、やる意味があると僕は信じています。今日ここ（NHK）に来る時も、代々木公園を眺めながら、ここにいる人たちは彼らのことを知らないんだろうなと。それは幸せなことでもありますがやはり悔しい気持ちもあり、より多くの人に届けたいので、ぜひ見ていただきたいなと思っています」と呼びかけ、会見を締めくくった。