ディーン・フジオカ「それぞれの価値観や人生観が問われる作品」映画「海を駆ける」初日舞台挨拶

エンタメ総合
2018年05月29日

172716_01_R 第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門で審査員賞を『淵に立つ』で受賞し、今や世界の映画人が注目する深田晃司監督の最新作『海を駆ける』の初日舞台挨拶が行われ、主演のディーン・フジオカをはじめ、太賀、鶴田真由、阿部純子、セカール・サリ、深田晃司監督が登壇した。

深田監督は、2011年の東日本大震災の後に大学の研究チームの震災復興リサーチに参加。そこで、2004 年にスマトラ島沖大震災による津波で壊滅的な被害を受けつつも、今では完全に復興を遂げた町バンダ・アチェを訪れて本作のアイデアを想起したという。自然はときに豊かに美しく、ときに脅威となり人を飲み込み、また人間の生活は自然と共にあるというさまを、インドネシアの美しい海、そして国籍や宗教を越えて育まれる若者たちの友情を通して描くファンタジーだ。

舞台挨拶が始まり登壇後すぐの一言挨拶の場面では、映画の本編と関連付け、それぞれの役の言語で挨拶をすることに(セカールはせっかくなので日本語で、監督はインドネシア語で挨拶)。
ディーンは「自前で通訳します」と言い、「皆さん、こんにちは。私はラウです…っていうフェイントをかけながらも、ディーン・フジオカでした」と、流ちょうなインドネシア語で挨拶。会場からは歓声が上がった。続いて太賀もインドネシア語で「こんにちは。私の名前は太賀です。今日は見に来てくださってありがとうございます」と挨拶するが、ディーンから「『太賀』って言ってなかったよ?」とのツッコミが。太賀は「“太賀マンジャ”と言いました。“マンジャ”とは“甘えん坊”という意味です。インドネシアでは、あだ名で“太賀マンジャ”と呼ばれていました」と明かした。
鶴田は「こんにちは。鶴田真由です」とインドネシア語で挨拶したあと、「映画の中ではたくさんしゃべっていますが、もうすっかり忘れてしまいました(笑)」と告白。続けて阿部は英語で「本日はお越しいただきありがとうございます。今日はドキドキしているんですが、ディーンさん、深田監督、みんなと一緒に初日を迎えられてとてもうれしいです」と、セカールは日本語で「皆さん、こんにちは。私はセカール・サリです。どうぞよろしくお願いします」と挨拶した。深田監督はインドネシア語で「おはようございます。私は深田晃司です。ありがとうございます」と挨拶。その後、「最後に『テレマカシ』と言いましたが、『ありがとうございます』という意味です。現地でたくさん使った言葉です」と解説した。

続いて、雨をやませる祈祷師“レインストッパー”の話題に。ロケが多い撮影のため、深田組ではレインストッパーに依頼していたという。ディーンは「日本でレインストッパー業をやったら絶対成功すると思いますよ(笑)。普段はコーヒーを飲んで、たばこを吸ってるだけなんですが、雨雲が近づいてくると弟子と2人で来て、彼らが祈っていると雨雲がなくなっていくんです」とその力を語る。さらに「クランクインする前は1週間雨が降ってたんですが、撮影を開始した途端、ずっと雨降らなかったんですよ!」と明かした。深田監督も「本当にクランクインしたら降らなくなって、クランクアップしたら大雨が降ってきて!スピリチュアルなことは信じないけど、これは信じたほうが得だなと思いました」と、驚いた様子だったが、ディーンからは「『海を駆ける』はスピリチュアルの塊ですよ!(笑)」とツッコミが入っていた。

本作の撮影は、昨年の8月ごろ行われた。そこで、公開初日を迎えた今、撮影当時を振り返り、撮影スタイルが日本と違って大変だったことや面白い出来事、印象深い出来事などが尋ねられた。
太賀は「海を駆けるシーンですかね。このシーンで、実は、海の中に橋があるんです!本番前に服は濡れてはいけないので、ある程度の緊張感を持って撮影する段階だったんですが、橋に入る前に海にズッコケてダイブしちゃって、ずぶ濡れになるっていうのが印象に残ってますね(笑)」と、ハプニングがあったことを明かした。さらにこのシーンについて深田監督は、「海を駆けるシーンを最初の段階から書いていて、初稿のときからこのタイトルだったんですが、どうやって走らせるかっていうのをスタッフで議論していました」と裏話を。さらに「最初はルーランナーで走ってもらって合成しようかと思ったんですが、いろいろ試した結果無理だな…と。そこで実際に40メートルくらいの橋を作ってもらいました。海が満ちて橋が隠れたくらいのところで走ってもらって。だから満潮になってしまうとダメなんですよ。30分くらいのタイミングを狙って撮影し、このシーンは、CGは使ってない生の映像です!」と語った。
また、ディーンは「なかなかインド洋で海に向かって走って行くと、周りが全部海なので、今思っても不思議な景色、体験でした。振り返って頭から海に突っ込むってやったんですが、耳や鼻に水が全部入っっちゃって、衝撃でしたね。鼻から塩水を入れるのって耳鼻科であるじゃないですか。結構スッキリしましたね(笑)」と振り返った。

最後に、ディーンは「この作品は見た人それぞれの価値観や人生観が問われる作品だと思います。違う意見がエクスチェンジされる、そんなキッカケになる映画だと思います。日本、インドネシア、中華圏、フランスのみならず、この作品が海を越えて駆けていけるよう、ぜひ皆さん、応援をお願いします」とPR。
続けて深田監督が「いつもいい映画は何かと考えると、鏡のような映画が良いと思っています。見た人それぞれのインドネシアに対する考え方があぶり出されてくる映画になっていれば良いなと思います。バンダ・アチェに初めて行ったのは2014年で、そこから7年たって今日に至ります。バンドアチェで17万人の方が亡くなった災害のことを3.11に津波が来た直後の日本人の私が話を聞いたときに、津波の被害にあっている人はどこの国にもいるし、世界はバラバラなようだけど繋がっているともいえると当時思いました。この映画を世界のたくさんの方に見てもらっていろいろと感じてもらいたいと思います」と語り、舞台挨拶は幕を閉じた。

<作品情報>
映画『海を駆ける』 テアトル新宿、有楽町スバル座ほかで公開中
■ストーリー
インドネシア、バンダ・アチェの海岸で倒れている謎の男が発見される。片言の日本語やインドネシア語を話すが正体は不明。その謎の男にラウ(=インドネシア語で「海」)と名付けて預かることになった、災害復興の仕事をしている貴子と息子のタカシたち。その周辺で謎の男・ラウはさまざまな不思議な奇跡と事件を巻き起こしていく―果たしてラウは何者なのか…。
■キャスト
ディーン・フジオカ 太賀 阿部純子 アディパティ・ドルケン セカール・サリ 鶴田真由
【スタッフ】
監督・脚本・編集:深田晃司
■公式ホームページ
http://umikake.jp/