ケラリーノ・サンドロヴィッチ×緒川たまきの“ケムリ研究室”新作舞台「砂の女」が開幕【コメントあり】

エンタメ総合
2021年08月24日
「砂の女」撮影;引地信彦
「砂の女」撮影;引地信彦

劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチと、女優・緒川たまきの演劇ユニット「ケムリ研究室」による新作舞台「砂の女」が、8月22日(日)に開幕した。

本作は、1962年に安部公房により書き下ろされた傑作小説を原作とし、KERAが上演台本と演出を担当。緒川、仲村トオル、オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲が出演する。

昆虫採集に来た男が、たどり着いた砂丘の果ての村。男が宿を借りた砂丘の底の家には、女が一人住んでいた。外界との唯一の往来手段であった縄ばしごを外され、今にも砂に埋もれそうな家に女と二人、男は閉じ込められる。

緒川と仲村の、刻一刻と変わっていく、ヒリヒリするような関係性。廣川、オクイ、武谷、吉増が、村人や、砂の象徴“砂子”などさまざまな役を演じ、作品の世界を豊かに広げる。さらに、上野洋子のインプロビゼーションの演奏が、砂の流動性と、女と男の心の揺れを体感させる。

不条理な閉塞状況の中で、スリリングで焦燥感にあふれた、そしてエロティックな男女の関係。それを覗き見しているような濃密な世界観が広がる。芝居、ステージング、音楽、映像、照明、全てが綿密に編み上げられた劇空間が、力強く立ち上がった。

初日を迎え、「ケムリ研究室」主宰のケラリーノ・サンドロヴィッチと緒川がコメントを寄せた。

ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント

初日が開けて取りあえずホッとしてます。開幕できるか、稽古中はずっと不安でした。
観客がいる劇場のありがたさ。ご覧になったお客様がどんなふうに感じたか知りたいですね。
同じコロナ禍での上演でも、昨年の「ベイジルタウンの女神」は多幸感あふれるエンタメ作品でしたけれども、今年は安部公房ですからね。180度違う。今回は辛辣な芝居です。照明もずっと暗めだし、明るいことはあまり起こらない。娯楽要素はありつつも、いわゆるエンタメとは異なる舞台を目指しました。けれども、砂の谷底の小屋で繰り広げられる男女のドラマは、きっとさまざまなことを感じさせてくれるでしょう。
安部公房は明らかに理数系の作家ですが、今回僕は、それを無理やり文系の作品にねじ曲げたのかもしれません。自分のモードでやるしかないし。
岸田國士さんの時は一作やって大ファンになったけれど、安部公房さんはまだまだ近づくには怖い所がある。やっぱり理数系だからかな。これから時間をかけて徐々に仲良くなれるといいなと思っています。
劇場入りしてからはバタバタで、ともかく幕を開けることで精いっぱいでした。明日からは少し客観的になれるのではないかと。スタッフ、キャストが皆同じ方向を向いている素晴らしい座組なので、なんとかこのまま完走できるよう、祈るばかりであります。

緒川たまき コメント

このようなご時世ですから、本当に幕を開けることがかなうのかどうか、カンパニー全体、かなりドキドキしながら、覚悟をして稽古をしておりましたが、おかげさまで無事初日を開けることができました。
カーテンコールでお客様の姿が照らされたとき、これはつい数時間前まで行っていた舞台稽古の続きではなく、お客様に見ていただけたのだとあらためて信じられないような思いでした。
同時に、何か重い責任を負っているような気持ちで、その場に立っていました。
このような状況の中、演劇を、ケムリ研究室の「砂の女」を、観ようと思ってくださり、実際に劇場に足を運んでくださった事に、まずは深い感謝を申し上げるとともに、ご期待に添えたかどうかは分かりませんが、皆様の思いを無駄にしないよう、明日以降もブラッシュアップして、少しでも良いものをお届けしたいと、祈るような誓うような気持ちでおります。

公演概要

ケムリ研究室no.2「砂の女」

原作:安部公房
上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

■東京公演
2021822日(日)〜95日(日)
シアタートラム

■兵庫公演
202199日(木)〜910日(金)
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

公演詳細:https://www.cubeinc.co.jp/archives/theater/kemuri_no2

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