広瀬アリス、女優生活10年「ここまで続くとは思ってませんでした」映画「巫女っちゃけん。」

特集・インタビュー
2018年02月02日

女優の広瀬アリスさんが、主演映画「巫女っちゃけん。」(2月3日(土)全国公開)で口も態度も悪い巫女のしわすを演じ、新境地を切り開いている。年に2回だけ現れる絶景「光の道」で知られる福岡県・宮地嶽神社を舞台に、無口なイタズラ少年との出会いによってしわすが成長していく姿を描いたコメディ作品。女優生活10年、心境の変化を明かしてくれました。


しわすのだらしない感じは、実は私とそっくりなんです(笑)

広瀬アリス

◆しわす役は、オーディションだったそうですね。この役のどんなところに惹かれたんでしょうか。

巫女というのも新鮮でしたし、すごくパンチのあるキャラクターで面白いなと(笑)。オーディションを受けるからには、絶対私が演じたいと思っていました。

◆広瀬さんのイメージとはおよそ似つかないキャラクターですが、そのギャップがとても面白かったです。

でも、私もがさつなところは多いですよ。しわすほどひどくはないですけど(笑)、気にしなさすぎて、結構雑なタイプなんです。例えば私もすぐ足を開いちゃったりとかしますし。だから、分かるところは分かるなと。だらしない感じは、実は私とそっくりなんです(笑)。

◆となると、すんなりと役に入り込めましたか。

そうですね。宮地嶽神社に行きっぱなしだったのもあってすっとしわすになれました。とにかく気をつけたのは、巫女から一番かけ離れたようなしぐさをしていようと心がけながら演じました。ただ、しわすがそういう性格になったのには、幼いころに飯島直子さん演じるお母さんに捨てられてしまったという悲しいトラウマがあるからなんです。

広瀬アリス

◆だからしわすは、母親の虐待を受けて口も心も閉ざしたイタズラ少年・健太にシンパシーを感じて、ほおっておけないわけですよね。

しわすにはお母さんに育てられたあまり記憶がないから、最初はどう接していいのかが分からところもあったんだと思います。そんな2人の心の交流にも注目してほしいです。

◆健太を演じた子役の山口太幹君には、どんな印象がありますか。

事前に監督から言われたことは100%できているし、私から何かアドバイスするようなことも全くなく。私があのくらいの年齢の時なんて、鼻水垂らして鉄棒で遊んでました(笑)。それに比べて、太幹君はすごくしっかりしているなと。

◆撮影の合間にはどんなコミュニケーションを取っていたんですか。

お菓子をくれたり、逆に私があげたり、追いかけっこしたり。2人でわーわー言いながらずっと遊んでいました。太幹君、すごく無邪気でピュアなんです。しゃべると地元の宮崎弁が出るのがまたかわいくて。長く一緒にいたから、お母さんみたいな気持ちになっていましたね(笑)。


この先もお芝居さえできていれば、もうそれで十分

広瀬アリス

◆撮影期間はどのくらいだったんでしょうか。

おととしの夏、オール福岡ロケで3週間ちょっとくらいで撮りました。私はクランクイン前に福岡入りして、巫女の所作や踊りの練習から始めて。1日、2日で簡単に習得できるものではないので、そこは時間をかけました。すごく難しかったです。

◆博多弁はどのように練習されたんですか。

私のマネージャーさんが福岡出身なんです。だから、いろいろとレクチャーしてもらいました。身近に先生がいて、助かりました(笑)。

◆宮地嶽神社での撮影はいかがでしたか。

神社に着いたら何よりもまず先に参拝をして、それからメークをして撮影するというのが日課でした。普通の人では入れないようなところまでこの作品のために貸していただいて、すごくいい経験になりました。

◆ちなみに、広瀬さんが今、神頼みしたいことはありますか?

うーん、何だろう…「健康」ですかね。仕事でもプライベートでも、体調を崩していたら何もできないですから。そう 考えたらやっぱり健康が一番かなと。20歳を過ぎて、よりそう思うようになってきました。

広瀬アリス

◆映画「死にぞこないの青」(2008年)で女優デビューして10年。この月日を振り返って、どんなことを思いますか。

ありがたいことにたくさんのお仕事をさせていただいて、その中で、今だから言えますけど、いろんな失敗もしてきました。だけど、それはそれでいい経験になっていて、だから今の自分がある。10年前は、ここまで続くとは思ってませんでした。

◆そうなんですか?

はい。当時、まだ小学生でしたから。スカウトしてもらった時、正直、そこまでやる気があったわけではなく、つまらなかったらすぐやめればいいやっていうくらいの考えでこの世界に入ったんです。

◆そういう意識が変わり始めたのは、いつごろからですか。

20歳を迎えたころからですかね。やっぱり大人になったんだと思います。今はもう23歳になって、同世代もみんな社会人になったので、それぞれの仕事の話を聞いていると私ももっと頑張らなくちゃって刺激をもらいます。

◆今は女優という仕事のどんなところに魅力を感じていますか。

やっぱり、いろんな人になれるところです。1人ひとり違った価値観や人生があって、それを体験できることは純粋にすごく楽しいです。今回のしわす役もまた、今までとは全然違うタイプのキャラクターで、女優として一歩も二歩もステップアップできたかなと思います。

◆では、この先の10年はどんなふうに歩んでいきたいですか。

こうなりたいというのはないんですけど、このお仕事は続けていきたいです。私、現場にいるのが大好きなんです。お芝居さえできていれば、もうそれで十分。年齢を重ねれば、頂ける役も違ってくるでしょうから、その変化を楽しんでいきたいと思っています。

 

■PROFILE

●ひろせ・ありす…1994年12月11日生まれ。静岡県出身。AB型。2008年に映画「死にぞこないの青」で女優デビュー。雑誌「セブンティーン」のオーディションでグランプリに選ばれ、同誌の専属モデルとしても活躍した。近作に映画「新宿スワンII」「氷菓」(2017年)、ドラマ『釣りバカ日誌~新米社員 浜崎伝助~』(2015年、2017年)など。現在、NHK連続テレビ小説『わろてんか』に出演中。

 

■作品情報

映画「巫女っちゃけん。」映画「巫女っちゃけん。」
福岡先行公開中/2月3日(土)全国公開

監督:グ スーヨン
出演:広瀬アリス、山口太幹、MEGUMI、飯島直子、リリー・フランキーほか


●photo/関根和弘 text/甲斐 武