土村芳「人の温もりが感じられるすてきな物語です。ご覧になる方の心に、何か一つでも残せたら」ドラマ『ライオンのおやつ』

特集・インタビュー
2021年06月27日

◆余命を宣告され、それでも自分を成長させたいと行動を起こせる雫は強い女性だなと感じます。

いざ、自分が同じ立場になったらどう考えるのかと思うと、とても難しいですよね。役を演じるに当たっていろいろと勉強をさせていただいたのですが、余命を告知された方々のその後の行動や感情には段階があるそうなんです。自己否定をしたり、自暴自棄になったり、死に抗おうとしたり。そうやって少しずつ現実を受け入れていくそうですが、でもそれもあくまで統計的なことだけであって、きっといろんな感情が何度も行ったり来たりしながら、一人ひとりがその人にしか見えない答えを見つけて出していくんだと思います。中には答えを見つけられない方もいるかもしれませんが、果たして雫は最後にどんな感情に行き着くのか。その過程も大事にしながら演じていきたいと思っています。

◆宣告を受けた後の行動という意味では、自分の病気を知った雫が、それを家族に伝えるかどうかで悩む姿に共感しました。

私もやっぱり悩むだろうなぁと思います。これは撮影前に医療監修の先生の下で体験したことなのですが、何枚かの紙を渡されて、そこに自分が今大事にしているもの…例えば「家族」や「友達」「家」などを書いていくという作業をしたんですね。そして、書き終わった後、とある患者さんによる自分が亡くなるまでの日記の内容を先生が少しずつ読み上げていき、一つ終わるたびに、私自身が本当に残したいと思っているもの以外を順番に破り捨ていくということをやらせてもらったんです。そうしたら、後半になればなるほど絞れなくなっていって。私としては「友達」が最後の方まで残るかなと思っていたんです。でも、日記に書かれた内容に触れていると、“友達には自分が弱っていく姿を見せられないかもしれない”と思い、中盤の方で破る決意をしました。しかも、その破るというアクション一つとっても、ただの紙なのに躊躇してしまうんです。自分の中の大事なものが一つずつ欠けていくような、大切なものと決別していくような感覚をそこで味わって。そうした体験があったからこそ、雫が家族に病気のことを伝えるかどうかで迷う心境がより理解できましたし、家族に限らず、彼女がさまざまなことを決断していく重さも強く感じました。

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