伊藤万理華「私が時代劇を見て感動したように、未来に残る作品になってほしい」映画「サマーフィルムにのって」

特集・インタビュー
2021年08月06日

映画製作に青春をささげる高校生たちの奮闘を描く映画「サマーフィルムにのって」がいよいよ8月6日(に公開! 映画初主演となる伊藤万理華さんに、作品の見どころや撮影エピソード、また自身の高校時代の思い出などについてたっぷり聞きました!

◆作品の印象はどうですか?

淡い世界観で刹那的な物語ですが、心に残る作品だなと思いました。こんなにいろいろな要素が詰め込まれたエンターテインメント映画なのに、それぞれが丁寧に描かれているところもすてきだなって。何かに熱中することの尊さというのを、一番ダイレクトに感じられる作品だと思います。皆さんにも同じように感じていただけたらうれしいです。

◆演じた役どころについては?

ハダシはとにかく真っすぐで、何の装備も付けず、まさに“裸足”で駆け抜けちゃうような女の子で。とにかく好きなことに向かって全力で走ったら、周りのみんなも自然とついて行きたくなる、不思議な存在だと思います。大好きなことについて話が止まらなくなるところは、私自身とも共通しているので共感しました。好きなものに熱中している人、モノ作りをしたい人って、感情の振り幅が激しいんですよね。そういう部分はそっくりだなと思いました。

◆演じるにあたって監督から何か言われたことは?

シンプルに「髪を切って」ぐらいでしたね。最初のイメージはポニーテールだったようで、そのためにしばらく髪を伸ばしていたんですけど。“やっぱり私はショートだな”ってなって、バッサリ切りました。あと現場に入る前、監督がみんなにお手紙を書いてくださったのがうれしくて。そこに、時代劇や映画に夢中になるハダシの気持ちを芝居で伝えてほしいということが書いてあったんです。その気持ちを一番に考えながら撮影していました。

◆時代劇が好きという部分には共感しますか?

私はこの作品に入る前に「座頭市」や「椿三十郎」を見させていただいて、初めて時代劇に触れました。決して避けていたわけではないのですが、今までどうして見てこなかったんだろうと思うぐらい、私の年代が見ても面白くて。画面から伝わってくる作り手の皆さんの熱量にとても感銘を受けました。ハダシが時代劇に魅了された理由がすごく分かりましたし、私も勝新太郎さんの生い立ちが気になって自分で調べたりしました。同じように、この「サマーフィルムにのって」も未来に残る作品になったらいいなと思います。

◆ハダシにとっての“勝新”のように、今尊いと思っているものはありますか?

洋服ですね。服が好きと言うと、おしゃれに聞こえるかもしれないですけど、私はそういう観点で服を見ていなくて。服以外もそうなんですが、“これはどんな人が作ったんだろう?”って掘り下げたくなっちゃうんです。調べてみると、“このデザインはあの人だったんだ”“じゃあ、あの人の作ったものをチェックしよう”みたいな発見があって楽しいです。

◆今回の現場は同世代のキャストが多かったと思いますが、どうでしたか?

まずはみんなと仲良くなりたいと思って、インスタントカメラと大量のフィルムを買って現場に持って行きました。自分が主演というのもあるんですが、この作品の一瞬一瞬って二度とないかけがえのないものになると思ったので。祷キララちゃんの誕生日をサプライズでお祝いしたり、満開の桜の下をみんなで走ったりしながら、いろいろな記念写真をみんなで撮り合っていました。すごくいい写真ばかりなので、スタッフさんがパンフレットか何かに使ってくださっていたらうれしいです(笑

◆キャスト同士でどんな話をしましたか?

いつも一緒にいたビート板(河合優実)とブルーハワイ(祷キララ)の2人とは、お互いに好きなものが似ていてそんな話をしていました。あと体育館のシーンの撮影中、隣にダディボーイ役の板橋(駿谷)さんがいて。脚本の三浦(直之)さんのことをよく理解している方なので、この作品への愛をすごく語ってくれたんです。私自身、知らないうちに主演の重圧みたいなものを感じて少し苦しんでいたのですが、そこで“一人じゃないんだ、みんな仲間なんだ”と思うことができて。ダディボーイには助けられました(笑。あと駒田役の小日向(星一)君とは、舞台で共演した後すぐこの映画の撮影に一緒に入って。同い年で何でも話せる仲なので、小日向君の存在も大きかったです。本当に愛にあふれた現場だったと思います。

◆ハダシと同じように映画を撮ってみたいという気持ちはありますか?

私自身モノ作りが好きで、個展も開かせていただいたりしていて。でも自分が監督をやるというのはなかなか想像がつかなくて。でも、もしオファーを頂けるならやってみたいです。今回、松本監督のお仕事を近くで見させていただいて、作品への熱量や現場でせわしなく動いている姿がすてきだなと思って。クリエイターの皆さんに対するリスペクトの気持ちが、さらにまた大きくなりました。

◆もし映画を撮るとしたら、どんな作品を撮ってみたいですか?

私は「エターナル・サンシャイン」のような、抽象的な表現の作品がすごく好きで。ああいった直接的ではない表現で人間の感情を伝えられたら面白そうだなって。今まで誰もまだやったことのないような映像表現に挑戦してみたいです。

◆ご自身の高校時代を振り返っていただいて、印象的な思い出はありますか?

私は1年生の夏からアイドル活動を始めたこともあって、実はそれほど深い思い出はなくて。文化祭や体育祭にちゃんと参加できなかったのが心残りです。高校の文化祭ってこの映画でも描かれていますが、模擬店を出したりモノ作りをしたり、すごく楽しそうで同級生のみんながうらやましかったです。でも1つだけ、3年生の最後の行事がダンス大会だったのですが、それは衣装も音楽も振り付けも自分たちで考えて。私が演出や構成を担当して、バレエができる子、映像が作れる子、音楽を作れる子など、まさにハダシのように仲間を増やしながら取り組んだんです。みんな同じ熱量で一生懸命やった結果、何と優勝することができました! それが私の高校時代の最大の思い出です。

◆今回ハダシを演じながら、そんな青春時代を追体験できたのでは?

できなかったことは全部回収できました!アイドル時代も青春でしたが、また違った青春を体験できたなって。それは、私自身もハダシに成り切ってモノ作りをしたいという気持ちがあったからだと思うんですけど。スタッフの皆さんともどんな衣装がいいかみたいなところから話し合うこともできましたし。映画という大きなプロジェクトで自分の意見を取り入れていただいて、とても貴重な体験をさせていただきました。

PROFILE

伊藤万理華
●いとう・まりか…1996220日生まれ。神奈川県出身。O型。最近の出演作にドラマ『夢中さ、きみに。』『東京デザインが生まれる日』、舞台「DOORS」など。現在、ドラマ『お耳に合いましたら。』(テレビ東京系)に出演中。

作品情報

映画「サマーフィルムにのって」
2021年8月6日(より全国公開

STAFF&CAST)
監督:松本壮史
出演:伊藤万理華、金子大地、河合優実、祷キララ、小日向星一、池田永吉、篠田諒、甲田まひる、ゆうたろう、篠原悠伸、板橋駿谷ほか

(STORY)
高校の映画部に所属するハダシ(伊藤)は、大好きな時代劇を撮れずにくすぶっていた。そんなある日、武士役にぴったりの凛太郎(金子)と遭遇。ハダシは仲間を集めて映画製作を開始し、文化祭でのゲリラ上映を目指す。だが、凛太郎には未来からやって来たという秘密が。

©「サマーフィルムにのって」製作委員会

photo/干川 修 text/橋本吾郎 hair&make/高橋稚奈 styling/神田百実