前山剛久「とても繊細で、魅力たっぷりの舞台だと自信を持って言えます」ミュージカル「ゆびさきと恋々」

特集・インタビュー
2021年10月05日

聴覚障がいのある女子大生・雪と大学の先輩・逸臣との恋模様を描いた人気コミック『ゆびさきと恋々』が待望のミュージカル化。主人公の一人である逸臣を演じたのは『刀剣乱舞』をはじめとする2.5次元の舞台や帝国劇場での大作ミュージカルなど、舞台を中心に幅広く活躍する前山剛久。10月に衛星劇場で初放送されるオンエアを前に、稽古中の思い出や作品への思いをたっぷりと語っていただきました。

◆『ゆびさきと恋々』は手話も交えたミュージカルでした。公演を終えた今のお気持ちを教えてください。

難しい作品だったなと思います。ヒロインの雪が言葉を話さない分、2人のシーンでは僕が一方的に語りかけるだけの時もあり、いつもとお芝居の作り方やテンポ感がまるで違ったんです。でも、そこが新たな挑戦で、楽しい部分でもありました。それに僕が演じた逸臣も、きっと雪と出会ったばかりのころは、いろんな戸惑いがあったと思うんです。そうした感情をリアル体験しているようで、役作りにも生かすことができた気がします。

◆難しさが面白さや楽しさに変わっていったのは、稽古のどのタイミングだったのでしょう?

終盤くらいでようやくといった感じでした(苦笑)。稽古の中盤あたりまでは本当に試行錯誤の連続でしたから。先ほどもお話ししたように、いつもの舞台のテンポ感で考えたらありえないような間(ま)が生まれることもあり、それをいかにスピーディーに見せていくかをみんなで検討し合ったりしていました。

◆自分たちの中で、どうリズムを作っていくかに苦労されたんですね。

はい。それに、僕がいつも舞台でお芝居をする際に心がけているのが、ステージ上では普段の1.25倍くらいの速さで動くということなんです。そうすることによって、お客さんの思考や想像よりも少しだけ先回りできるんじゃないかと思っていて。でも、今回は手話を取り入れた演技もありましたので、丁寧に見せようと思って普段より0.75倍くらいの動きになっていたんですね。その結果、自分の中でリズム感がおかしくなっていたところもあります。ただ、稽古を重ねていくうちに、どんどんとみんなのテンポもよくなっていって、ようやくしっくりとくるようになったのが稽古の終盤あたりだったんです。

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