前山剛久「とても繊細で、魅力たっぷりの舞台だと自信を持って言えます」ミュージカル「ゆびさきと恋々」

特集・インタビュー
2021年10月05日

◆また、今作は人気コミックが原作で、前山さんが演じた逸臣は王子様キャラでした。コミックのキャラクターを体現する上で、気をつけたことはありますか?

意識したのは相手役に対する行動です。コミックより少しアグレッシブな人物像を目指しました。というのも、これがもし映像なら、原作に忠実にしたほうが役は作りやすいと思うんです。特に逸臣はクールな印象もある男性ですから。でも、舞台でリアルさを出すのであれば、動きを大きくしたり、感情もやや過剰なほうが伝わりやすいのかなと思ったんです。とはいえ、王子様的なお芝居といいますか、女性がキュンとする動きなどは、演出の田中麻衣子さんに全面的にお任せしました。例えば、歌っている雪を逸臣が引き寄せるシーンがあるのですが、田中さんに「もっとグッとしたほうがいいね」とか、「雪が振り向くタイミングで引き寄せてほしい」と言われ、何度も稽古を重ねて(笑)。ただ、“そうか、急な感じで引き寄せたほうがいいんだ…”という動き自体は理解できたのですが、きちんと胸キュンしていただけたかどうかは最後まで不安でした(笑)。

◆(笑)。逸臣は意外と積極的な性格でしたよね。

そうなんです。そうした少し大胆な行動に出られるのは、逸臣が海外育ちだからなのかなと感じました。ハグが日常にある世界で生きてきたから、スマートに女性とスキンシップを取れるのかなって。また、彼は知的好奇心が強く、そこに純粋さがあるんです。特に言語に対してはすごく前のめりで、彼自身、英語やドイツ語をはじめ、いろんな国の言葉を話すことができる。そんな彼にとっては“手話も言語の1つだ”という感覚なんだと思います。だからこそ、雪に対しても、手話のことをもっと知りたいという思いが強く、結果、無意識のうちに行動も積極的になっていったような気がします。

◆前山さんが逸臣以外で気になった役はいますか?

雪と幼なじみの桜志はちょっとかわいそうな役だなと思いました。昔からずっと雪を見守ってきて、誰が見ても “雪のことが大好きなんだろうな”って伝わってくるのに、雪からはまるで相手にされてなくて(苦笑)。もしこれが現実世界のお話なら、桜志に感情移入する人が多いのではないかと思います。

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