前山剛久「とても繊細で、魅力たっぷりの舞台だと自信を持って言えます」ミュージカル「ゆびさきと恋々」

特集・インタビュー
2021年10月05日

◆では、演出面で印象的だったことはありますか?

興味深かったのが、今作は演出の田中さんだけでなく、脚本家の飯島早苗さん、音楽を担当してくださった荻野清子さん、それに振付の前田清実さんと、女性のクリエイターが多い現場だったんです。だからこそ、少女コミックの世界観を崩すことなく、見事にミュージカルとして成立させられたのかもしれません。皆さん、この作品に対してものすごく深い愛情をお持ちでしたし、繊細にシーンの1つひとつを作られていて。僕がこれまで多く経験してきた2.5次元の舞台は“考える前に動け”という根性論みたいなところがあったりしたので(笑)、すごく新鮮でした。もちろん、根性論も大好きなんですけどね。

◆オープニングでいきなり展開されるコンテンポラリーダンスも魅力的でした。

今回はいくつかダンスシーンがあるのですが、アグレッシブな動きのものが多くて楽しかったです。音楽自体はおとなしめだったり、かわいい曲調のものが多くて、原作の世界観ともすごくマッチしているのですが、前田さんの振付はそれをいい意味で超えてくる(笑)。また、ダンスの動きがきっかけで、次のシーンのお芝居の演出が決まっていくこともあり、芝居とダンスの両方の視点から総合的にステージ全体を作っている感覚がありました。僕たち役者もみんなでアイデアを出し合って振付を考えて、それを前田さんに見ていただくこともありましたし、すごくクリエイティブな稽古場でしたね。

◆また、前山さんはミュージカル作品で舞台デビューを果たしたのち、その後も舞台『刀剣乱舞』や『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stageなどの話題作にも数多く出演し、現在はミュージカル『王家の紋章』『マイ・フェア・レディ』と2作連続で帝国劇場のステージに立っています。前山さんにとって舞台はどんな存在になっていますか?

もはや、僕にとっては欠かせない場所ですね。作品ごとに求められるものが大きく異なるので、そこにもすごく楽しさを感じています。例えば、ひと言でミュージカル作品と言っても、この『ゆびさきと恋々』はキャパが400人に満たない本多劇場で、その次の舞台が今おっしゃっていただいた帝国劇場の『王家の紋章』でした。劇場の大きさが違えば歌い方や表現の仕方も大きく変えなければいけない。そうしたところにも面白さを感じます。

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