INORANインタビュー「“音楽を作ることを止めなくて良かった”という実感が一番大きい」

特集・インタビュー
2021年10月22日

「やっぱり、人と喜びを共有するほうが面白いから」

◆一度はあきらめの境地に至っても、その先に明るい未来を想像することで先に進んでいく。

その先に“ご褒美”があるから、頑張れると思うんですよ。(ミュージシャンという)職業柄、そういうことを強く望みたいし、“みんなに元気になってほしい”と思う部分もあって。(楽曲は)自分にとって大きな“鏡”だったりもするから、今年は特にそういう部分を強く吹き込むことが大事な時期だったんですよね。

◆そういう思考の結果として、今作の楽曲には開放感や明るさが漂っているんでしょうね。

今回は、そういうものしか選ばなかったというか。無意識かもしれないけど、自分でそういうものをチョイスしていたということでしょうね。

◆今作を通して聴かせていただいた時に、M-4「Live it Up」の曲名にもなっている“深く生きる(生きよう)”という言葉がキーになっているように感じたのですが。

そうですね。やっぱり生きていく中で“何か”はあるけど、それすらも愛おしいというか。例えば“雨だから嫌だ”とかではなく、逆転の発想をしてポジティヴに捉えていく。ハプニングやトラブルにも何らかの意味があると考える…それが“深く生きる”ということかなと思います。

◆まさに今のような環境においては、“深く生きる”ことが大事になるのかなと。

うん、強くなれる。

◆逆境をバネにして、前に進んでいくというか。逆にこういった環境でなければ、ここまでのペースで作品を生み出さなかったかもしれないわけですよね。

本当にそうだと思います。みんなも同じだと思うんですけど、これだけ活動を止められたり、自由を制限されたことは今までなかったと思うんですよ。そういう意味では、結果的にミュージシャンとして“動かされた”部分はありますね。

◆行動が制限された分、制作面では自由度が広がった部分もあるのかなと。例えばバンドサウンドだけに囚われず、1人で制作するということもそうだと思うんです。

「あるものだけで作る料理も、意外と美味しいよ」というか。そこも楽しめた部分はあります。

◆材料が限られるからこそ、工夫しがいもありますよね。

そんな中でも大事なものだけが残っていって、その大切さがわかったりもして。時間の使い方1つにしても、だいぶ変わりましたね。価値観が変わったというか。何気なく過ごしながらも得られた、そういう部分はこれからも生かしていきたいと思っています。

◆1人で作品を作ってきた中で、得られたものも大きいのかなと思います。

そうですね。でも今作も本当に1人で作ったわけではなくて、関わってくれたスタッフがたくさんいるわけで。どういった形にせよ、人と一緒にやるほうが面白いんですよね。やっぱり、人と喜びを共有するほうが面白いから。

◆楽曲に関しては1人で作られている分、最終形までイメージしながら作られているんでしょうか?

そうですね。曲作りの時点でほぼ完成しているので、その時の感覚は大事にしています。

◆それをまた実際にライブでやるとなった時に、そのためのアレンジを考えていくわけですよね。

それはまあ、追々(笑)。まだ考えてはいないです。そこはライブをやりたいなと思った時に落とし込み方を考える感じで、その先のストーリーに関しては今回はあまり考えていなかったかもしれない。それよりもその時に思った気持ちを(曲に)落とし込むことを優先して、制作した感覚はありますね。

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