『最愛』新井順子Pが語る作品へのこだわりと制作秘話「姓名判断をしまくりました(笑)」

特集・インタビュー
2021年10月21日

『最愛』第1話

10月15日にスタートした『最愛』(TBS系 毎週(金)後10・00~10・54)を手掛ける新井順子プロデューサーにインタビュー。作品へのこだわりや、制作の裏側などを語っていただきました。

『最愛』は、殺人事件の重要参考人となった女性実業家・真田梨央(吉高由里子)と、彼女を追う刑事で梨央の最愛の人でもある宮崎大輝(松下洸平)、梨央の会社で梨央を支える弁護士・加瀬賢一郎(井浦新)の3人を中心に、15年前の失踪事件から現在の連続殺人事件へとつながる謎に迫る、完全オリジナルのサスペンスラブストーリー。

スタッフには、2017年4月期の金曜ドラマ枠で放送された『リバース』と同じ顔触れが集結。脚本は奥寺佐渡子氏と清水友佳子氏、新井順子氏がプロデュースを務め、演出は塚原あゆ子氏が担当している。

◆本作はどのように生まれたのでしょうか?

『わたし、定時で帰ります。』で、吉高由里子さんが演じた結衣が倒れた晃太郎(向井理)を起こすシーンがあったんです。その吉高さんの芝居を見て、「吉高さんでサスペンスをやったら面白いだろうな」と浮かびました。しばらくサスペンスはやっていなかったので、また『リバース』と同じチームでサスペンスをやりたいなと思ったんです。今度は原作ものではなく、オリジナルで挑戦できればと思った時に、「主人公はどうしよう」となって、“吉高さんでサスペンスを見てみたい”という私の思いとうまく合致して、吉高さんへオファーをする前から吉高さんをイメージして、企画書を作っていきました。

◆当初の企画書から何か変わったところはありますか?

紙面上は語呂がいいなと思っていた名前も、言葉にすると言いづらいと思って変えたりしました。原作があると、名前は既に決まってるので考えなくていいんですけど、オリジナルだと一から考えないといけないので、姓名判断をしまくりましたね(笑)。実は梨央も最初は違う名前だったんですが、“りお”にしようとなって、“りお”という漢字の組み合わせを何通りも調べたんです。

◆どういう基準で名前を選んでいるんでしょうか?

私が調べているものでは、総画が大大大吉や大吉になったりと、いろいろあるんですが全部が大吉にはならないんです。総画以外が凶になったりして。そうして決めた名前を「私のベスト3です」と言って、全部書き出して脚本家に送ります。“こういう名前にしたい”と思ってやってると時間がかかってしまうんですが、そこはこだわっています。

『最愛』新井順子プロデューサーインタビュー

◆新井さんが手掛けた『MIU404』や今作の『最愛』でも陸上部が出てきますが、もしかして新井さんは役者さんを走らせるのが好きだったり…?

私、箱根駅伝がすごく好きで、駅伝のシーンがやりたいっていうことだけで陸上部にしました(笑)。“陸上部で梨央と大輝を恋仲にするためにはどうしたらいいだろう”と考えた時に、高校野球も好きでよくドキュメンタリーを見るんですが、その時に寮母さんが自分たちの家を改造して学生たちにご飯を食べさせているところを見て、これ使えるなと。寮に主人公がいれば恋仲になるんじゃないかと思って、「こうしたいです!」と提案しました。ですが、周りからは「何で陸上なのよ、撮影が大変なのに」と言われたので、「盛り上がりますから」と説得しました。走ってる姿がカッコいいんですよね。現場にはアナウンサーの方にも来てもらって、実況をしながら撮ったんです。そうしたら、その実況でみんなテンション上がっていました(笑)。

『最愛』第1話

◆吉高さんが新井さんから「今までにない吉高由里子を見せたい」とオファーを受けたとお話されていたのですが、実際に演じられているのを見ていかがでしたか?

1話の血だらけの服を燃やすシーンは、吉高さんの表情がすごかったですよね。何がすごいかって、直前まで「ハハハハハー」と笑ってるんですよ。それで、「よーい、はい!」となった瞬間、ポロっと涙がちょっとずつ流れて。“どうしたら、そうなるんだろう”と思いましたね。あと、とある言葉に反応して、ぴくっと眉毛が動くんですけど、そういう細かな表情がうまいなって思いました。

『最愛』新井順子プロデューサーインタビュー

◆松下さんはいかがですか?

松下さんには、好青年の感じは残しつつ、15年前は恋に奥手なタイプだけど好きとはっきり伝えられるところがあり、いっぽう現代では少し無骨な、粗っぽい感じで演じてもらっています。松下さんご自身はそんなにスポーツがお得意ではないと聞いていたんですが、陸上をやっている役を演じるということで、青山学院大学に通ってかなり走り込んでくださったみたいです。3日間、陸上のシーンを撮ったのですが、走るシーンでもフォームが崩れることなく、陸上部っていう感じがちゃんと出ていました。あと1話の車の中で光石(研)さん演じる梨央の父親から「おまえらそんな関係だったんか」と言われるシーン、松下さんのお芝居は婿にきてほしい、旦那にしたいナンバーワンの表情をしていましたね。松下さんと光石さんの関係がいいっていうのも相まって、とてもよいシーンになりました。台本で読むとさらっとしたシーンになんですが、映像で見ると“すごいな”という、本当に生々しいお芝居でよかったなと思います。

『最愛』新井順子プロデューサーインタビュー

◆では、井浦さんはいかがでしょうか?

井浦さんは、『アンナチュラル』の時の中堂がちょっと偏屈な役だったので、今回は癒やし系でいこうと思っていました。仕事をビシッとやっている時と吉高さんの前では心を許している感じを演じ分けてもらって、優しい感じでお願いしたんですけど、癒やされますね、加瀬さん。女性スタッフにも人気で、視聴者の皆さんは大輝と加瀬さんどっち派が多いのかなって(笑)。1話は出番が少なかったのですが、徐々に「梨央のこと、どう思っているんだ?」「社長に好きなんて言えないよね」みたいな感じのシーンが出てきます。火曜ドラマみたいに分かりやすいキュンではないんですけど、そういう大人キュンは、「あれしていこう」「これしてみよう」と打ち合わせで提案しているので、楽しみにしていただけたらと思います。

◆今回、主題歌を宇多田ヒカルさんが担当されています。「君に夢中」を聞いた時の印象を教えてください。

初めて聞いた時は、「最先端!」という感じの曲ですごいなって思いましたね。宇多田さんらしいというか、とにかくカッコいいんです。一方で、曲をかけるタイミングが難しくて…。AメロBメロサビの作りが複雑なんですよ。監督もすごく悩んでいたんですけど、1話は2人のラブのところにかかったので、はまりはいいのかなと。いわゆる分かりやすいラブストーリーとは違った味わいになったかなと思います。宇多田さんから見たらそういう感じなんだっていう、吉高さんと真田梨央のことを想像されたような歌詞になっているなと。

実は、以前にも宇多田さんに主題歌のオファーをしたことがあって。タイミングが合わなかったりと、これまでご縁がなかったんですが、“今回は絶対主題歌は宇多田ヒカルしかいない”と思って。企画書を書いている時もずっと、「SAKURAドロップス」を流しながら書いていました(笑)。吉高さんも宇多田さんがお好きということで、主題歌が宇多田さんに決まった時は、2人でテンション上がってましたね。

PROFILE

『最愛』新井順子プロデューサーインタビュー
新井順子
●あらい・じゅんこ…2001年にTBSスパークルに入社。2008年からプロデューサーとして活動。これまで手掛けた作品は『Nのために』『アンナチュラル』『わたし、定時で帰ります。』『MIU404』『着飾る恋には理由があって』など。

番組情報

金曜ドラマ『最愛』
TBS系
毎週金曜 後10・00~10・54

『最愛』第2話
<第2話(10月22日放送)あらすじ>
思わぬ形で15年ぶりに再会した梨央(吉高由里子)と大輝(松下洸平)。大輝は梨央に任意同行を求め、遺体で発見された昭(酒向芳)との関係や、昭の息子・康介(朝井大智)の遺留品について尋ねる。
会社に戻った梨央に、専務の後藤(及川光博)はフリー記者・しおり(田中みな実)から入手した写真を見せ、昭との関係を追及。梨央を心配した弁護士の加瀬(井浦新)は、今後は一人で警察と会わないよう約束させる。
一方、捜査資料から、梨央が今も変わらずに新薬開発の夢を追いかけていることを知る大輝は、刑事として今回の殺人事件と15年前の事件のつながりを調べ始める。
さかのぼること14年前の2007年――。真田家での生活になじめずにいた梨央。兄・政信(奥野瑛太)との対立や弟の優(柊木陽太)と自由に連絡が取れないなど、慣れない生活を送っていた。そのような中でも加瀬の支えによって何とか大学には通っていた梨央だが、ある衝撃的な真実を知ることに…。

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