ビスケットブラザーズインタビュー「コントの内容が分からんくても“何か見た目おもろいな”って思ってもらえたらそれでいいんです」

特集・インタビュー
2021年12月02日

ビスケットブラザーズインタビュー

「キングオブコント2019」では決勝進出を果たし、2020年、2021年にも大きな賞レースを制するなど、今勢いに乗るお笑いコンビ・ビスケットブラザーズ。インタビューでは、きんさんと原田泰雅さんに、あらためて受賞後の反響やネタ作りの裏側などについてお伺いしました。さらに来年1月に行われる単独ライブの見どころも!

 

◆「ytv漫才新人賞決定戦」と「NHK上方漫才コンテスト」での優勝おめでとうございます。あらためて、身に染みて反響の大きさを感じることはありますか?

きん:ありますね。特に「NHK上方漫才コンテスト」に出場した時は、地震の影響で放送が延期になってしまい、先に優勝者が発表されるという特殊な形だったのでいつも以上に注目度が高かったみたいで。結果を知った状態でネタを見ていただくのも初めてのパターンだったので、「何でこいつらが優勝やねん!」って危うく炎上するところだったと思いますけど(笑)、結果的に良い方に行ったんじゃないかなと思います。

原田泰雅:僕は岸和田出身なんですけど、久しぶりに地元に帰ったら近所のおばちゃんたちから「ビスケット君!」って呼ばれるようになっていて(笑)。昔は「泰雅君」って呼んでもらっていたんですが、恐らく放送を見た上でコンビ名に影響されたんでしょうね、原形がなくなっていました。

きん:歴史ある番組やから、影響力の大きさを感じるよな。

原田:そうそう。幅広い世代の方々が見てくださっていたんだなと思いましたね。

◆大きな賞レースで優勝を果たした後、勢いづいてきたなという実感は?

原田:正直ないんですよね。そもそも僕たちの同期が霜降り明星、コロコロチキチキペッパーズ、ニッポンの社長とかでみんな勢いがすごいので…。

きん:例えるなら、みんなが新幹線のような速さで行くところを僕らがチャリで「追いつけるぞ!」と思って必死になっているような感覚(笑)。もちろんチャリもいい乗り物だけど、それくらい差があるような気がしますね。

原田:ただ、めちゃくちゃ頑張って漕いではいるからバイタルは強くなってるかもしれないな(笑)。

きん:そうやな。ありがたいことに周りが優秀だからこそ刺激になる部分はあります。それこそ後輩がM-1の決勝に進んだりもしていますし、刺激を受けながら必死にやっている感じはしますね。賞という形で結果を残すことができた時に、あらためてせいやが「“上方”は僕らが取れなかった賞だからすごいな」って連絡をくれたり、粗品も「やったな!」って声を掛けてくれたりして。東京の同期はもちろん、大阪の同期も絆が強くて、先に売れて行った人たちが僕たちのように残った者にも手を差し伸べてくれるような温かみが感じられてありがたいです。

原田:そうですね。僕らも早く手を差し伸べられるようにならないとアカンなと。

きん:けど、そのころにはもう周りに誰もおらんかもしれへんよな。

原田:なんて言ったって新幹線やからな。じゃあ、かわいい顔した後輩だけに差し伸べるか…。

きん:恐いな! どこ連れて行くねん!

原田:この前、金の国の子に銭湯行こうって誘ってたやろ? あれのほうがよっぽど怖いで!

きん:顔がかわいいねんもん。もちろん性格もええけど。

原田:確かにめっちゃかわいいな。ネタもええし、顔もええ。

◆でもお2人もファッション誌のイケメン特集に出られていましたよね?

きん:そうなんですよ(ドヤ顔)。それはめちゃくちゃありがたいです。僕らも「イケメンですね」って言われたらイケメンの顔をするので。変幻自在なんです。

原田:今までイケメンと言ってくれる人が自分しかいなかったので、ファッション誌という強力な味方がついたような感じはします。そう言われてから、ちょっとでもシュッとなれるように常にダイエットしてますもん。

きん:せやな。成功はしてないけど果敢に挑むことはしてるなぁ。

原田:太ってていいことないもん。キャラ立ちはしやすいかもしれへんけど。

◆キャラといえば、2人の個性も魅力の一つですよね。ご自身ではどんなところが売りだと考えていますか?

原田:こんな容姿の2人でコントをやってる人たちはまずいないんじゃないかと思います。僕らがよく言ってるのは、安田大サーカスの団長さんがいないような感じ(笑)。ハマったらどこまでも受けてもらえるんじゃないかなと。逆に言うと、万人受けはしないから何をやっても無理な時は無理だと思いますけど。

きん:あと僕たちはデブってことを嘆いてますけど、2人でいる時も「あれがうまい」「これがうまい」っていう前向きな話ばかりしているんですよね。なので僕たちを見てもらえれば、痩せなくていいってって思ってもらえるかもしれないですね。この体型でいいことがあるかは別として。

原田:ラジオでもほとんど食の話してるもんな。作家さんも笑ってくれて安心するけど、その作家さんも太ってるという。

きん:そうやな(笑)。俺らの体重合わせると200kg超えるから、その数字のインパクトだけはあるかもしれないですね。

ビスケットブラザーズインタビュー

◆では、ビスケットブラザーズにキャッチコピーを付けるなら?

きん:“性格のいい動物園”かな。

原田:おお、ええキャッチコピーやね。

きん:せやろ? 普段ポーズなんてしない、見た目も特別かわいくないゴリラとかカバがサービス精神旺盛に良いポーズをしてくれるみたいな。

原田:分かる気がするわ(笑)。じゃあ僕は“臭そうなお花畑系コント師”で。臭そうなって言うのがポイントですね。

きん:それ嫌やろ! 人気出ぇへん。

原田:実際人気に関しては今も出てへんから(笑)。お花畑だけやったらきれいすぎるから、汚しを入れていかんとなと。ちなみにYouTubeにアップされている「井戸端会議」のコントでも臭い臭い言ってますけど、あれとは関係ないです(笑)。

◆「井戸端会議」もかなりクセが強いネタですよね。いつもネタの着想はどこから?

原田:僕が昔読んでいた漫画や子供のころ見ていたファンタジー映画が影響しているような気がします。登場人物のキャラクターの人形を使って遊びながら自分なりに物語を考えたりもしていたので、自然と発想が豊かになっていったのかもしれないです。今コントを作る時も、見る人を笑かそうと思いながら作っているわけではなくて。「このキャラクターなんか面白そうやな」っていうのを一から考えて、キャラクターありきでストーリーを考えています。

きん:人と被らないっていう意味でも、原田のネタは斬新な発想が多いんですよね。そこで新たな面白さみたいなのものも生まれると思うし。あと僕らは体型を生かして見た目も面白くしてるんですよ。だからコントの内容が分からんくても「何か見た目おもろいな」って思ってもらえたらそれでいい。各々の楽しみ方をしてもらえたらうれしいなって思いますね。

原田:たまになんですべってんねやろ? って思う時もありますけどね。こんなメイクして変なせりふの言い方して、変わった動きしてるのにウケなかった時は「なんでなん! どっかしらおもろいやろ!」って。

きん:せやなぁ。僕らは悪い癖で“しつこさ”を異常に面白がってしまうので。同じことをずっと言ってしまうし(笑)。それがハマらんかったら地獄の時間になるだけやねんけど。

原田:見てくださってる方からしたら地獄の時間やけど、俺らだけは面白いっていう。
きん:もうちょっとやったらハマるかもって淡い期待を込めて永遠に続けてしまうんですよね(笑)。

原田:出番が終わった時に「何やってんねんお前ら」ってツッコまれるくらいのほうが正解なのかもしれないなって思います。

◆1月には単独ライブも開催されます。

きん:はい、そうなんです。大量の新ネタを見ていただける機会なので気合入りますね。

原田:僕らが単独の時に意識しているのは、どんどんネタを濃くしていくということ。一本目だけは「これは確実にウケるやろうな」っていう内容にすることを心掛けてるけど、それ以降は好きなことしかしない。なので僕らのライブの見どころは一本目で終わってます。

きん:(笑)。一本目だけウケてあとは全部スベったこともあったしなぁ。

原田:あったな~。全部がウケるとは思ってないけど、どこかしらにツボにはまってもらえる部分があるかもしれないから、一本目以降も諦めずに見てもらえたらうれしいですね。今はちょうど新しい設定とか見たことのないようなものをやりたいと思って、試行錯誤しているところです。

きん:テレビだと「こっちのほうがいいかな?」って考えながら選んでしまう時もありますけど、単独はいい意味で何も考えず自由にできる絶好の機会ですからね。自分たちらしさを前面に出せるというか。何かしらのチャレンジは変わらずしていきたいなと思っています。

◆では、あらためて今後の目標を教えてください。

きん:芸人として愛される存在になれたらいいなっていうのは思いますね。

原田:そうやね。例えるなら敵だとしてもポケットモンスターのロケット団が嫌いな人はいないと思うし、ヤッターマンのトンズラーとかボヤッキーが嫌いな人もおらんと思うんですよ。何だかんだで愛らしさがあるというか。

きん:かわいらしいもんな。

原田:僕たちは王道ではない分、悪さはしてしまうと思うし(笑)、むしろ“触るな危険”みたいなアウトローな部分もあると思う。でもそこも含めて「何かこいつら憎めないな」「つい見てまうな」っていう愛される存在になれたらうれしいですね。あ、でも一挙手一投足には期待せんといてほしいです。

きん:いや、そこはしてもらえるように頑張ろう。…無理か(笑)。

PROFILE

ビスケットブラザーズインタビュー
左から)きん、原田泰雅

ビスケットブラザーズ
●びすけっとぶらざーず…吉本興業大阪本社に所属するお笑いコンビ。2011年4月1日結成。

きん
●きん…1991年4月27日生まれ。香川県出身。A型。

原田泰雅
●はらだ・たいが…1992年1月10日生まれ。大阪府出身。O型。

公演情報


『ビスケットブラザーズ 第10回ネタ単独ライブ「ファ年玉」』
東京・ルミネtheよしもと
2022年1月14日(金)開場:後6・30/開演:後7・00/終演:後8・00
http://www.yoshimoto.co.jp/lumine/sp/schedule11.php

料金:前売り3000円/当日3300円
(チケット発売スケジュール)
2021年11月30日(火)~ 先行発売中
2021年12月4日(土)~ 一般発売
※配信なし ※未就学児入場不可

大阪・よしもと漫才劇場
2022年1月22日(土)開場:後7・00/開演:後7・30/終演:後8・30
http://www.yoshimoto.co.jp/manzaigekijyo/pc/schedule11.php

料金:前売り2500円/当日2800円/配信2000円
(チケット発売スケジュール)
2021年11月30日(火)~ 先行発売中
2021年12月4日(土)~ 一般発売
2021年12月11日(土)~ オンラインチケット発売開始
※配信あり ※未就学児入場不可

 

text/矢嶋咲良