小芝風花・笠松将インタビュー「緊張感の中で舞台に立つような感覚」『事件は、その周りで起きている』

特集・インタビュー
2022年07月27日
『事件は、その周りで起きている』左から)小芝風花、笠松将 ©NHK

8月1日(月)より4夜連続で放送のコメディードラマ『事件は、その周りで起きている』(NHK総合 午後10時45分~11時00分)に出演する、小芝風花さんと笠松将さんにインタビュー。

『事件は、その周りで起きている』は、NHKのコント番組『LIFE!』の制作チームが手掛けるコメディードラマ。刑事ものは数あれど、このドラマは事件を一切解決しない。その代わりに、事件の周辺で起こる刑事たちのトラブルや“小事件”にスポットをあてたストーリーを、1話15分で放送する。

あらゆることを全て自分ひとりの力でなしとげたい、人に頼ることが苦手な刑事・真野一花を演じるのは小芝風花。そして、そんな真野とバディを組むのは、笠松将演じる宇田川和人。宇田川は真野とは正反対の性格で、合理的で効率重視、人に頼み事をすることにためらいがない。本作は、そんな相反する性格の若手刑事2人組が時に周囲をまきこみながら繰り広げる、新感覚のコメディードラマとなっている。

初共演でありながら、撮影初日から軽妙なかけあいシーンを息ぴったりで演じたという小芝さんと笠松さん。『LIFE!』チームが作るドラマや演じたキャラクターの印象、そして撮影を通して感じたことをお話しいただきました。

小芝風花・笠松将 インタビュー

◆まず、最初に本作のお話を聞いた時の印象を教えてください。

小芝:私は以前『LIFE!』に出演させていただいたことがあったので、そのチームでドラマを作ると聞いて“どんな感じになるんだろう”とすごくワクワクしていました。撮影に入ると、登場人物の雰囲気も、全て一連で撮っていく撮影のスタイルも『LIFE!』そのもので。やっぱり『LIFE!』らしい独特な世界観のままドラマを撮影できるというのはすごく楽しかったです。

笠松:僕は『LIFE!』に出たいなって(笑)。でも、本作に出演できてうれしいですし、こういったクスッと笑えるような作品に出る機会がこれまではあまりなかったので、僕の中では難しいものを扱うような感覚で出演しています。

◆台本を読んでどんなことを感じられましたか。

小芝:面白かったです! そして、登場人物が少ないからこそ、各々のキャラクターが立ちすぎているんですね(笑)。キャスト陣にも個性的な役者さんが多いので、どういう感じで来られるんだろうと現場に入るまで全然読めなくて。それこそ、笠松さんもコメディのイメージがあまりなかったので、どういう宇田川さんになるだろうとワクワクしていました。

笠松:僕もすごく面白いなと思いました。本作では“噛み合わない会話の面白さ”が1つの魅力になっているんですけど、日常生活で人ともめたり、仲良くなったりする原因ってこういうことなんだなと。日常生活と照らし合わせて「コメディーみたいにうまくいけば」「笑えればいいのにな」と思いながら、読んでいました。

◆今回お2人が演じているキャラクターについて教えてください。

小芝:一花はまともに見えて少しずれている…そんな人物だと思っています。屁理屈やちょっとイラッとするようなことを言ってくる宇田川さんに対して、怒ったりつっこんだりしている真面目な人間かと思いきや、お礼やごめんなさいが言えない意地っ張りな一面があって。このドラマはちゃんとした人が出てこないんですよ(笑)。一番まともに見えて、実は独特なところがあるので、どうやったら面白くできるかなと考えながら演じています。
そして、本作の撮影では5ページに渡る長いシーンもカットをかけずに撮っていくので、ちょっとした間や表情が編集ではいじれないんです。本当に相手のお芝居をちゃんと受け取って出していかないと、後悔しても撮り直せないので、緊張感の中で舞台に立つような感覚で。そんなことを大事にしつつ、出来上がっていくものが面白くなればいいなと思いながら挑んでいます。

笠松:僕にも宇田川のように論理的だったり、合理的なところがあるので自分自身にすごく近い役だなと思って演じています。宇田川はそういった部分を誇張しているキャラクターなんですけど、僕は宇田川が一番まともだし、「(他に)まともな人がいないな」と思っています(笑)。
そして、現実世界の中での人間関係も、引きで見るとこんな感じなんだろうなと思います。だから、僕はそんなにぶっとんだコメディーという意識は持たずに、日常生活のボリュームを1、2個上げたぐらいの感覚で、普段と差異なくやっています。

◆本作はどんな「刑事ドラマ」だと思いますか。

小芝:本作は事件を解決しないんですよね。刑事ドラマと言えば犯人を追いかけたり、推理をしていったり、という作品になると思うんですけど、そういうのが全くなく、本当に日常に転がってる些細な口げんかのような感じで(笑)。

笠松:うんうん。でも、だからこそすごく楽しくやらせてもらっています。

小芝:撮影現場に警察指導の方が来てくださるんですけど、全く警察らしいことをしないので、来てくださったのに申し訳ないと感じることもあります(笑)。

◆お2人は本作に対してどんな感覚で向き合っていらっしゃるのでしょうか。

小芝:私の中では、ドラマというよりも『LIFE!』の感覚がすごく強くあります。ドラマだったら、撮影では「よーい…はい!」で撮り始めるじゃないですか。でも本作は「本番5秒前! 4、3…」という感じで始まるので本当にバラエティ番組みたいなんです。ドラマなので一応自分のホームではあるはずだから、『LIFE!』に出る時よりは緊張感が和らいではいるものの、少しドキドキしながら撮影している感じです。

笠松:僕は、すごく難しいなと思うのが、あれって1回見るから面白いわけじゃないですか。でも、僕らは何回も演じるので、正解がだんだん分からなくなっていくんです。これはふざけすぎなのか、逆にふざけてなさすぎなのか、どっちでいくべきなのか…というのを、監督と相談しています。不安ですね…僕が一番、放送怖いなって思っています(笑)。

◆『LIFE!』チームという笑いのプロと組んでみて気づいたことはありますか。

小芝:この作品で監督に「リズム感がすごくいい」と褒めていただきました。ただ、ずっとリズムが良いだけではなくて、間をとってみたり、崩すことができたらもっといいかもねと言っていただいて。これまでもコメディ作品に出演させていただいたことはありましたが、周りに個性的な人が多くて、その人たちに突っ込んだり、リアクションしたりというのが多かったんです。自分から間をとって仕掛けるというようなことがなかったので、そういった言葉をいただいてすごく大きな課題だなって思いました。今回も笠松さんや他の共演者の方がたくさん仕掛けてくるので、そういったことを演技でクリアする難しさを今、まさに感じてるところです。

笠松:僕はずっとお笑いが好きだったんですけど、コメディーって銘打って笑わせるのって、ホームラン宣言をしてホームランを打つことぐらい難しいことだと思うんです。でも、いろんなものを問われるからこそすごく良い機会ですし、たくさん学ぶことがあるだろうなと思って挑みました。あとは、演じるということに少し慣れてしまっている部分もあったので、初心に帰るという意味で、すごく前向きに、いろんなことをリセットする気持ちでやらせてもらいました。僕にとっては大切な作品です。

◆15分間のドラマ枠であることも、本作の特徴の一つだと思います。その印象や魅力を教えてください。

小芝:この作品に関しては15分で良かったなって思っています。1つひとつのシーンが長い上に一連で撮っていくので、1話1時間でとなったらせりふ量が大変なことになってしまうので(笑)。15分4本で良かったですねと話していました。あと、やっぱりテンポが速いので、1時間となると視聴者の方にとっても話についていくのが大変なんじゃないかなと。15分というコンパクトさが見やすいんじゃないかなと思います。

笠松:本当にシーンの変わるコントを見ているような感覚になると思うんです。だから、視聴者の方にも気軽に見ていただいて、また明日からも頑張ろうと思ってもらえたらうれしいです。

番組情報

コメディードラマ『事件は、その周りで起きている』
NHK総合
2022年8月1日(月)~4日(木)午後10時45分~11時00分

出演:小芝風花、笠松将、中野周平(蛙亭)、倉科カナ、北村有起哉
脚本:倉持裕(『LIFE!』「宇宙人総理」など)
演出:西川毅(『LIFE!』総合演出)

©NHK