『階段下のゴッホ』演出・プロデューサーからの手紙　第1回：〜好きに、生きろ。ってなんだろう〜

TBSの深夜ドラマ枠「ドラマストリーム」で9月20日から放送開始した『階段下のゴッホ』（TBSほか　毎週火曜　深夜0時58分〜1時28分）。本作は、自分らしく生きるために邁進し、強くたくましく夢にも仕事にも向き合い進んでいく主人公・鏑木都の姿を通して、生きやすいようで生きにくい令和の時代を闊歩する女性たちにエールを送るヒューマンラブストーリーだ。
大手化粧品メーカーに勤める“高収入バリキャリ女子”で、ある絵画に出会ったことで一念発起し、画家になるという夢をかなえるべく東京藝術大学を目指す主人公・鏑木都をSUMIRE、都が美術予備校で出会う6浪中のミステリアスな青年・平真太郎を神尾楓珠が演じる。
そんな本作でプロデュース兼全話の演出を担当する小牧桜さん（TBSテレビ）による連載が、TV LIFE webでスタート。本作に込めた想いから撮影の裏側まで、演出・プロデューサーという立場ならではの視点でお届けしていきます。

拝啓、皆様。

初めまして。TBSで現在放送中の深夜ドラマ『階段下のゴッホ』の演出・プロデューサーの小牧桜と申します。このたび皆様にほんの少しだけドラマのことを知ってほしくて、寄稿させて頂くことになりました。お付き合い頂ければ幸いです。

第1回：〜好きに、生きろ。ってなんだろう〜

1話で主人公の鏑木都が藝大を目指す理由は、“一枚の赤い絵と出会った”というとても些細なたった一つの出来事、それだけに終始しています。突拍子もない展開だということも充分に思うところではありましたが、人が一歩を踏み出す理由は、意外ととても呆気ない簡単なことだったりする部分があるのではないかと思っていて。だからこそ、自分の振り幅を決めることは安心できることかもしれないけれど、とにかくまずは好きにやってみようよと。

そういうところが、作り手側の共通認識にもなったりしました。

例えば映像。今回は全体のルックを流行りに乗ったものではなく、美術を扱う作品だからこその絵画的要素や色彩を意識して作っています。特に撮影の加藤十大さんは、物を見る目が人と全然違って面白いんです。とにかく固定観念にとらわれないような撮り方をしようと話し合いながら撮影を進めていきました。都が“藝大を目指す”と宣言するところも、これが決めなんだ！と意識するような形ではなく、せりふより彼女の世界が変わっていくことを重視して、人物の格差を感じるようなアングルを作っていきました。

出演者の皆さんにも、基本は自由にお芝居をその場で組み立てて頂いた気がしています。
例えばSUMIREさん。ありのままの彼女の目線で、美術の世界やドラマを描くことに意義があるように感じていて。雰囲気や間をなるべくダイレクトに落とし込むようにして作っていきました。
神尾さんは仕草や芝居のアレンジが真太郎そのものだなと最初から感じていましたし、立ち上げの時点から真太郎は神尾さんでしか考えられなかったので、信頼してお任せした部分が多かったです。実はとてもアイデアマンな方なので。ただ、物語の構造上どうしても繊細に話し合わなければならない部分についてはその時々でお話ししました。
そして、もうひと方。その人のことを語るのは、少々先になりそうですが。

挑戦的ではありながらも深夜の連続ドラマにおいて、全てを見た時に初めてピースが揃うような、人間愛の物語を作る。自分の思うままに描き続けることの素晴らしさを伝える。荒んだ世の中でも、きらきらと輝くものはある。それはいつでも貴方の傍に在って、とても普遍的なものなんだ。それが伝えたいだけの始まりだったように今では思っています。

次は第2話について綴らせて頂きます。また次回もお付き合い頂けますと幸いです。

PROFILE

小牧桜
こまき・さくら…1989年4月14日生まれ。東京都出身。
TBSテレビ　コンテンツ制作局ドラマ制作部。
『ルーズヴェルト・ゲーム』、『99.9〜刑事専門弁護士〜』、『凪のお暇』などの演出部を経験し、2020年『この恋あたためますか』でGP帯監督デビュー。以降は『リコカツ』、『持続可能な恋ですか？〜父と娘の結婚行進曲〜』などのドラマの演出を担当。
9月20日より毎週火曜深夜0時58分からTBS系にて放送中のドラマストリーム『階段下のゴッホ』（出演：SUMIRE・神尾楓珠ほか）で、初プロデュース兼全話演出を担当。