滝藤賢一インタビュー「セミがミンミン鳴く中でのカーボンヒーターは地獄でした(笑)」 新春プレミアムドラマ『家電侍スペシャル ストップ!忠臣蔵』

特集・インタビュー
2022年12月28日
©BS松竹東急/PROTX

江戸時代の貧乏浪人・兼梨四十郎(滝藤賢一)の元に、現代の最新家電が届くというSFコメディ『家電侍』。2022年4月期に連続ドラマとして放送された本作が、早くもスペシャルドラマとなり、2023年1月4日(水)に放送。テーマは家電侍×忠臣蔵。果たして四十郎は家電の力を使い、歴史を変えられるのか? 四十郎を演じた滝藤さんが撮影エピソードとともに、新居の自宅の暮らしぶり、2023年への展望などを語ってくれました。


◆『家電侍』がスペシャルとして帰ってくると聞いたときの感想を。

感慨深かったですね。連ドラのときは厳しい条件下での撮影でしたので、「同じ状況だったらできません」と本気で訴えましたから(笑)。真冬の雪が積もる日光江戸村で浪人だからペラペラの衣装。出ずっぱりだったので、撮っても撮っても終わらない。僕が今までやった作品で一番過酷だったと言っていいぐらいの撮影でした。しかも設定は夏だったから、出てくる家電はエアコンの冷房だったりして。逆にスペシャルは忠臣蔵だから、撮影は真夏でも、設定は真冬なんです。だからセミがミンミン鳴いている中、登場する家電はカーボンヒーター。これはこれで地獄でした(笑)。

◆スペシャルの脚本はいかがでしたか?

相変わらず、よくできた台本でしたね。なるほどなぁとうなりましたよ(笑)。

◆想像していた忠臣蔵とは違いましたか?

それはそうですよ。何しろ家電が出てくるんですから(笑)。ただ、吉良上野介が浅野内匠頭に意地悪をして、江戸城の松の廊下で刃傷沙汰を起こすみたいな、基本的な流れはちゃんと描かれているんです。しかしですよ、それが史実だったかと言えばそうでもないというのは、『家電侍スペシャル』の前日に放送する特番『新春号外!日本史スクープ砲 滝藤賢一見参!〜これが忠臣蔵の真相だSP〜』でぜひ! 僕らが知っている忠臣蔵は、赤穂事件を基に「仮名手本忠臣蔵」として書かれたもので、実際はだいぶ違ったらしいですね。

◆長屋に住む貧乏浪人の兼梨四十郎を再び演じるにあたり、意識されたことは?

キャラクターに関しては連ドラでできあがっているから、何か違うことをしようとはしませんでした。主演をやらせてもらうときはいつもそうなんですけど、共演者の方たちにリラックスして楽しんでいただきたいので、積極的にコミュニケーションを取るようにしています。ただ正直、本宮(泰風)さんにはビビってました(笑)。ここでは書けないような、数々の伝説を聞くじゃないですか? 怒られるなコレ(笑)。吉良家家臣の清水一学というコワモテで陰険な役柄なんですが、本宮さんが演じるとなんだかかわいくて憎めない。カメラがまわってなくても、いつも笑顔で周りに気を配っていらっしゃる。いろんな話をしてくださって、逆にリラックスさせていただきました(笑)。

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◆大石内蔵助役を尾上菊之助さんにというのは、滝藤さんの要望だったとお聞きしました。

菊さんとはもう何年も、『オリガミの魔女と博士の四角い時間』(Eテレ)という番組をやらせてもらってます。ご一緒しているうち、いつか時代劇でご一緒できたら幸せだなって、勝手に思っていたんです。それで今回、大石内蔵助を菊さんがやってくださったら作品の質も大きく変わり、『家電侍』を超えた本格的な忠臣蔵になるんじゃないかと。

◆今回、共演してみていかがでしたか?

いや、美しかったですね。日本酒を盃でぐっと飲むしぐさひとつ取っても、本物は違うなと思いました。はかまを履いたときの立ち振る舞いも、僕なんかはすぐしわを作っちゃうんですけど、菊さんは最初から最後までビシッとアイロンが入ったかのようにキレイなはかまで。自分は今まで時代劇で何をやっていたんだろう、どうやったら菊さんみたいになれるのかと、ずっと菊さんばかり見てました。絶対なれませんけどね(笑)。

◆菊之助さんとはどんなことを話されたのですか?

世代が近いし、菊さんもお子さまが多いから、子どもの話はよくしたかな。菊さんは劇中、こうしたほうが良いんじゃないかというアドバイスをくれるんです。しかも気を遣いながら。僕は菊さんに絶大な信頼を置いているので、そういうのを全部、監督に報告してました。「菊さんがこう言ってるから、変えよう」って(笑)。おかげで作品にリアリティが生まれたと思います。

◆滝藤さん自身も『家電侍スペシャル』の台本を読んで気づいたこと、当時は大変だったんだなと感じたことはありますか?

時代が違うから、それはたくさんありますよね。なんで吉良(岩松了)は浅野(平岡祐太)にあんな意地悪するんだろう、なんで桂昌院さま(田島令子)は気づかないんだろうとか(笑)。犬に石を投げただけで打ち首になるなんて、すごい世の中だと思います。実際、四十郎も連行されちゃいますからね。そう言えばあのシーン、『家電侍』の主題歌を歌ってくれているビッケブランカさんが出てるんですよ。ビッケさんとの芝居も楽しかったなぁ。僕、あそこは結構アドリブ入れまくってたんですけど、全く動じず演じられてましたからね。ぜひ、見つけてみてください。

◆『家電侍』の現場ならではだなと感じることは?

現場に家電があることですね(笑)。だから調理道具と食材を持って行って、マネージャーさんに調理してもらってました。近くにご飯屋さんもないですから、ありがたかったです。朝はみそ汁や卵焼き、昼はチゲのスープや、豚汁。厳しい現場ほど食が大事になるんです。

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◆四十郎は積極的に家事をしますが、滝藤さんはいかがですか?

洗濯は結構、僕がやることが多いです。仕事から帰ると洗濯機回して、干して。乾いている洗濯物をたたんでから寝るっていう。ただ、「幹太くん」という乾燥機を買ったら、ビックリするぐらい早く乾くんですよ。だから今、とても家電のお世話になってます(笑)。あと、お風呂掃除も毎日やってます。

◆そうすると、家事を頑張る四十郎の気持ちが分かるところも?

感覚的にはちょっと違うかもしれないですね。四十郎は奥さんを助けるために家事をやっているけど、僕は家族みんなで過ごしてるんだから、家事は共同作業って感じなので。家族が多いと、その分汚れます。子どもが散らかしたら、自分で片付けなさいって必ず言いますし。まぁ、片付けないですけど(笑)。

◆ちなみに今、滝藤さんが買いたいと思っている家電は?

買うかどうか迷っているのは、ビデオカメラ。今、ハンディタイプが2台あるんですけど、新しいほうが壊れちゃって。修理代を払うぐらいなら新しいのを買ったほうがいいのか、スマホやタブレットで撮ったほうが後々見やすいのか。ズームはハンディカムのほうが良いんだろうし。でも4人子供がいるとものすごい時間まわすから、手がプルプルしてくるんですよね(笑)。とはいえ、ちょうど先日、録った映像をテレビで流してたんですけど、やっぱりちゃんと映像で残っているといいなと思いました。結局どっちがいいんだ!……って話です(笑)。

◆最後に、『家電侍スペシャル』の見どころをお願いします。

日本人なら誰もが知っている忠臣蔵がベースの話ですから、親しみやすいと思います。そこにまた『家電侍』ならではのオリジナリティも入っているし、当時の時代背景をイラストで説明してくれるから、歴史の勉強にもなる。放送当日には連ドラの『家電侍』も午後2時から一挙に放送するので、併せて楽しんでいただきたいです。

◆『家電侍スペシャル』の放送直後には、初主演映画「ひみつのなっちゃん。」も公開を迎えます。こちらも地方ロケがメインでしたが、印象的だったエピソードはありますか?

「なっちゃん。」は岐阜の郡上八幡で撮影だったんですけど、とてもいいところでした。食べ物もおいしいし、自然もキレイだし。ちょうど鮎釣りが解禁されたときだったから、みんな鮎釣りしていて。僕もいただいたんですけど、めちゃくちゃおいしかったです。

◆「ひみつのなっちゃん。」は、ドラァグクイーンのなっちゃん(滝藤)が葬儀に参列するため、仲間と共に地元へ向かうというストーリーですが、見どころを挙げるとしたら?

祭りのシーンは圧巻でした。本当は本物の祭りで撮る予定だったんですけど、いろいろな事情で開催されなくて。でも、エキストラの方が100人ぐらい集まってくれたから、祭りのシーンを成立させられたんです。郡上の方は本当にあたたかいし、みんなで撮ったシーンだから、思い入れもあって。結構、長い時間一緒に踊っていたから、本物の祭りに参加しているみたいな感じで、楽しかったです。

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◆2022年を振り返りがてら近況もうかがえればと思うのですが、滝藤さんは連ドラ『探偵が早すぎる 春のトリック返し祭り』の撮影時、引っ越しを考えているという話をされていて。その後、どうなったでしょうか?

無事、引っ越しました。ただ引っ越した途端に『グレースの履歴』の撮影に入って、ロードムービーだったもんだから、3か月ぐらい家にいなかったんです。だからいまだに、ガスの火のつけ方も分からない(笑)。

◆その際、家具をどうするか、特にダイニングテーブルを探しているということでした。

結局、作りました。ダイニングテーブルも、椅子も。ただ、もうテーブルにコップの跡がめっちゃ付いちゃってるんですよ。「直置きしないで!」「コースター使って!」「モノを大切にして!」って言ってるのに、誰も敷いてくれない。だから僕、ことあるごとにコップの跡をずっと拭いてます(笑)。取れないんですよね、あれ。

◆一番のこだわりは庭とも話されていました。

庭というか、木ですね。悩みに悩んで5本ほど植えました。たぶん、うちで一番豪華なのは木だと思います(笑)。割と若い木を植えたんで、5年10年たったときにどうなるか、楽しみですね。植えたスペースが狭いから、どこまで根が張ってくれるのか、ちょっと不安ですけど。

◆新居で過ごすどんな時間が一番お好きですか?

植物の世話をする時間かな。気温が低くなると枯れてしまう植物もたくさんあるから、それを室内に閉まって、冬用のを外に出すんですよ。大変ですけど、仕事を忘れられるんです。

◆2023年、個人的にしたいこと、楽しみにしていることはありますか?

家族で旅行したいですね。自分の親と奥さんの親、みんな連れて。おいしいもの食べたり、温泉入ったりしたいなと。一番、大変なのは予約なんですよ。うちの家族だけで6人いるから、なかなか泊まりたいと思ったところに泊まれなくて。場所としては日光辺りがいいかなと思ってます。『家電侍』のおかげでゆかりのある場所になって(笑)、知り合いとかもできましたから。みんなで華厳の滝を見たり、江戸村で遊んだりしたいです。

PROFILE

滝藤賢一
●たきとう・けんいち…1976年11月2日生まれ。愛知県出身。O型。現在、『趣味の園芸』(Eテレ)シリーズ「これ、かっこイイぜ!」に、レギュラーゲスト出演中。主演映画「ひみつのなっちゃん。」が、2023年1月13日(金)公開。『グレースの履歴』(BSプレミアム・BS4K)が、3月19日(日)〜全8話で放送。

番組情報

新春プレミアムドラマ『家電侍スペシャル ストップ!忠臣蔵』
BS松竹東急(BS260ch・全国無料放送)
2023年1月4日(水)午後9時~11時

『新春号外!日本史スクープ砲 滝藤賢一見参!〜これが忠臣蔵の真相だSP~』
BS松竹東急(BS260ch・全国無料放送)
2023年1月3日(火)午後9時~11時

●text/小山智久