久保史緒里&上田誠インタビュー「上田さんの描く時間の渦に混ざれるワクワク感がありました」(久保)映画「リバー、流れないでよ」

特集・インタビュー
2023年06月23日

久保史緒里&上田誠インタビュー

京都の貴船を舞台に、繰り返す2分間のループから抜け出せなくなった人々の混乱を描く映画「リバー、流れないでよ」が6月23日(金)に公開。この度、物語のカギを握るヒサメ役で友情出演する乃木坂46の久保史緒里さんと、ヨーロッパ企画代表で今作の原案・脚本を担当する上田誠さんのスペシャル対談が実現。2021年に上演された舞台「夜は短し歩けよ乙女」などでもタッグを組んだ2人が、本作への思いや撮影裏話などを楽しく話してくれました。

◆今日は、あえてお2人をかわいらしい世界観で撮影させていただきました!

久保:上田さんがこちら側(アイドル側)に来ていただくことってなかなかないので。嫌だったらどうしようと思いました(笑)。

上田:いえいえ、非常に楽しい撮影でした。

久保:よかった~!

上田:今日いくつか取材していただいて、最初の方は汗が止まらなかったんですけど(笑)。

久保:縫いぐるみが近くにあったりしましたからね(笑)。

上田:こういうのもなかなか楽しいものですね。

◆おかげでステキな写真が撮れました。ところで、お2人がお仕事をご一緒されるのは舞台「夜は短し歩けよ乙女」、『サマータイムマシン・ハズ・ゴーン「乙女、凛と。」』(共に2021年)以来かと思います。お互いのお仕事ぶりや作品の向き合い方に対してどんな印象を?

上田:僕はこの前、乃木坂46さんの3期生ライブを拝見させてもらったんです。これまで女優さんとしての久保さんを見させてもらってきましたが、非常に何と言うか…。

久保:ふふ…(照)。

上田:全然違う話ですけど、僕も自分の劇団の公演をやるときはやっぱり特別な気持ちがあるんです。何か久保さんのそういったものを見ることができて、心を奪われてしまいまして。

久保:うわ~、うれしい!

上田:アイドルの活動もそれ以外の活動も、両輪で輝いてらっしゃるなと思いました。それぞれの活動にはきっと通底しているものがあると思いますが、僕はそこに物語というか、尊いものを感じました。

久保:うれしいです。上田さんとはお芝居のお仕事ではご一緒させていただいてましたが、ライブ中の姿を見ていただくことが今までなかったので。どう思われているんだろうっていう緊張感はありました(笑)。それこそ初めて舞台でご一緒させていただいたときとかは、一人の人間としてのパーソナルな部分を先にお見せしているので。その状態でアイドルの部分を見てもらうっていうのが…(笑)。

上田:あ、順番が逆か(笑)。

久保:そうなんです(笑)。だからお芝居の現場でご一緒した方にライブを見ていただくときは、家族に見てもらう感覚に近くて。

上田:確かにそうかも。だからより不思議な感覚というか、あまり味わえない感覚なのかな。“お芝居のときと全然違うじゃん!”“僕、この人と一緒に仕事したっけ…?”みたいな(笑)。

久保:あはは(笑)。

上田:それぐらい輝いてました。

久保史緒里&上田誠インタビュー

◆久保さんから見た上田さんの印象は?

久保:上田さんはご自身で脚本を書かれているので、誰よりもその展開を知っているはずじゃないですか。そんな上田さんが、舞台の稽古を重ねていく中で、文字だったものが形になっていくという過程を誰よりもワクワクされてるんです(笑)。「夜は短し歩けよ乙女」の劇中劇の「プリンセスダルマ」のシーンは、私は最初かなり控えめに演じてみたんですけど。上田さんが楽しそうにしてくださるから、もっとやっていいんだと思って(笑)。

上田:ははは(笑)。

久保:そういうふうに一番楽しんでくださるので、ご一緒させていただくとすごく刺激的で、私自身も同じぐらい楽しむことができます。

上田:学生劇団がやるようなチープな演劇を熱演してもらったら、その写真が舞台写真として世の中に出てしまって。劇中劇だからチープなのに、そういう作品だと思われないかという不安がありました(笑)。

久保:ありましたね、そんなこと(笑)。

上田:でもあれは面白かったです。ちょっと特殊な感覚かもしれないですね。劇作家というのは何かテーマを持って“これを伝えたい”というイメージがあると思うんですけど。僕はわりとカラオケに近い感覚でやっているというか。例えばカラオケに行ったら、友達が歌っている姿がすてきに見えたりするじゃないですか。それで「この曲歌ってよ」ってリクエストする感覚で、役をやってもらっている感じです。演じてほしかったり、セリフを言ってほしかったりすることを僕が脚本に書いて、やってもらっているのを間近で見ることができているような感覚なんですよ。もちろん、テーマや伝えたいこととかも後々載せていくんですけど。自分が見たいキャラクターや、それを役者の皆さんが演じる姿を見ることができるのはうれしいですね。

◆(「夜は短し歩けよ乙女」のメインビジュアルでもある)まさに久保さんに鯉を背負ってほしかったということですよね?(笑)

上田:あれはよかったですね。原作にあるもので、自分では到底思いつかないようなビジュアルだったんですけど。どう考えたって演じにくいですよ、あんな大きなもの背負って(笑)。

久保:あはは(笑)。

上田:しかも後半の、運動量も段取りも多いシーンで出てきて。

久保:正直ちょっと動きづらいという(笑)。

上田:そうそう(笑)。けど、あれはよかったですよ。

映画「リバー、流れないでよ」
映画「リバー、流れないでよ」

◆では、ここからは最新作の「リバー、流れないでよ」について聞かせてください。上田さんはどういう発想からこの物語を生み出したんでしょうか?

上田:京都の貴船を舞台にした物語にしようということで、僕自身も京都出身なので。地元の人たちを僕らの劇団員が演じて、そこに他者がやってきて何かを巻き起こしたら面白いんじゃないかと。例えば旅先に車でやってきてエンストしたみたいな存在がいたら、物語が動きそうだなということから着想しました。それで、ふたを開けてみたら、こんなSFのような作品になってしまったんですけど(笑)。

◆久保さんに出演をオファーされた経緯は?

上田:僕は映画に関しても、劇団の演劇活動の延長のような気分で作ってることが多いんです。それで、思いついたとしても実際にはやらないような試みを実現させたいと思っていて。チームが実現させようと奮闘すること自体も僕は好きなので。そういった意味でハードルの高いものをやりたがるんですね。なので、まず自分が信頼していて、且つこういった特殊なことを面白がってくださりそうだなっていうところが参加条件みたいになってくるんです。そう考えたときにまず久保さんをお誘いしたいと思いました。それで、藤谷(理子)さんとのペアが僕は好きなので、久保さんにそういう役をやっていただいて、物語的にも響き合うことができたら最高だなと思って。それでお願いした感じですね。

◆藤谷さんと久保さんの掛け合いが見たかったと?

上田:そうです。ミコト(藤谷)とヒサメ(久保)って、キャラクター的にも呼応し合っているというか。何かエールを送り合っているような感じがして。あ、でもそれが一番好きかも。そういう役ばかりやってもらってるような気もするから(笑)。

久保:あはは(笑)。

久保史緒里&上田誠インタビュー

◆オファーを受けて久保さんはどう思いましたか?

久保:本当にうれしかったです。ヨーロッパ企画の皆さんは、本当に楽しみながら作品を作られていて。その中に混ぜていただくというのを2回経験させていただいて、自分もすごく楽しかったというのがずっと私の頭の中にあったんです。それで、“今後何年かかってもいいから、絶対にまたご一緒させていただけるようにお芝居を続けていきたい”と思ったタイミングで、この映画のお話を頂けて。“また皆さんにお会いできる!”と、とびっきりうれしかったです。あとは、上田さんの脚本ならではの時間をテーマにした作品ということで。その時間の渦というか、世界観の中に自分が混ざれるというワクワク感もありました。

◆上田さんは久保さんのお芝居を見ていかがでしたか?

少し特殊な役というか、カギを握るただ事ではない役なのですが、久保さんだからこそ頼めた役だったなと思いました。俳優さんの特質っていろいろあると思うんですけど、こういう変わったことを頼める女優さんだなと。撮影方法もそうだし、役もそうなんですけど、きっとウチ以外ではあまり頼まれないような役だと思うんですよ(笑)。で、率直に言うと僕の劇って、俳優さんに出てもらうのに苦労するというか。エチュードで芝居を作るようなこともあったり、撮影や演出が特殊だったりするので、実はちょっと構えられたりすることも多いんですね。逆に、ちょっと物好きな人だったり、変わったものを作りたい人だったり、何か面白そうって思ってくださるような方が合っていると思うんです。久保さんはもちろん女優さんとして正当にキャリアを積まれていますけど、こういうことも面白がってくれるんじゃないかと思ってオファーしました(笑)。

久保:面白くて仕方がなかったです(笑)。撮影方法も2分間の長回しを積み重ねていく作業で、スタッフさんたちも含めて全員の全てがかみ合わないと2分の映像が撮れなくて。撮り終わってみんなで映像を見返して、監督のOKが出た瞬間の一体感が不思議でした。何て言ったらいいんですかね…その都度クランクアップの瞬間を迎えるという感じというか(笑)。

上田:確かに(笑)。普通の映画だと、淡々と撮って「はい、OK」でどんどん進んでいくことが多いけど、この現場では監督が「OK」って言うとみんな「よっしゃー!」ってね(笑)。

久保:そうなんです(笑)。そんな大変なことに敢えて挑戦するというのがすごくすてきだなと思って。撮影中はもう楽しくて仕方なかったです。

上田:これは基本的に全員がお芝居をちゃんとできる人じゃないと成立しないんです。誤解されがちなんですが、2分でセリフが言い切れたらそれでいいかと言ったら、そういうわけでもなくて。演技としての質が高くないとそもそも成り立たないから、そこの時点で結構ハードルが高いんですよね。これをカットで割って撮っていったら、質はある程度安定すると思うんですけど。2分間の連続で演じているので、みんなすごい集中力だと思います。

映画「リバー、流れないでよ」
映画「リバー、流れないでよ」

◆上田さんは脚本を書く段階で、現場がこうなることも想定していたんですよね?

上田:もちろん想定していました。僕ら演劇人が映画を撮るときって、映画人が撮るものとは同じベクトルではかなわないというのが重々あって。演劇人がやれることは何かっていうと、やっぱりカットを長く回すことだったり、ちょっとカメラを引いた中で群像として画を作ることだったりするのかなと。そういうことは、このヨーロッパ企画が映画を作るならやるべきことかなと思っていたので。あと、撮影が楽しかったりエキサイティングだったりすることは、僕の中では上がりの良さと同じぐらい結構大事で。昔は作品主義で成果が良ければいいとかいろいろ考えてましたけど、それって結局よく分からないですよね。もちろんうまくいってお客さんに愛してもらえたらいいけど、まずは作っている人たちにとって、その作っている過程が思い出深くなることが大事なんじゃないかと思うようになってきて。そういう現場になるべくしてなった脚本かもしれないです。

◆現場が楽しくなるのを見越して書かれているのはすごいですね。

上田:劇団を25年やっていますけど、やっぱり楽しくないと続かないので。仕事として効率のいいものってあるかもしれないけど、やっぱり僕はその作る過程の楽しさや面白さを大事にしたいです。

久保:ヨーロッパ企画さんの撮影現場は本当に温かくて、自分に対しての心配や不安はあっても、現場に対しては全くなかったです。とにかく自分の役目を全うするのみだという気持ちで現場にいることができました。なのでヒサメとして…具体的なことはネタバレしてしまうのであまり言えないんですけど(笑)…貴船の皆さんとのやり取りを私自身ひたすら楽しませていただきました。

久保史緒里&上田誠インタビュー

◆では今後、もしまたお仕事でタッグを組まれるとしたらどんな作品を?

上田:今日いろいろ久保さんと話しながら思ったんですけど、何か物を作る人とかの役をやってもらいたいと思いました。壁にペンキ絵を描く人、小説を書く人、彫刻を作る人とか。何かそういう役をやってもらったら面白いんじゃないかと。

久保:すごく興味があります! そういうお仕事自体にも興味があって、職人さんとか、手先で物を作ったりする作業が個人的に大好きなんです。1つ1つにバーッと打ち込む人っていいなと思いますし、私自身も多分そっちのタイプの人間なので。

上田:よかった。じゃあ次は「漆塗りコメディー」でいきます!

久保:漆塗りコメディー!?(笑)

上田:ろくろを回していると、タイムリープしちゃうみたいな(笑)。

久保:一生、お椀が出来上がらないですね(笑)。

上田:ははは(笑)。そういう、ひたむきに何かをする役をやってもらいたいです。

◆最後に、せっかくの機会なのでお互いに何か聞きたいことがあれば…。

上田:いろいろあるけど…久保さん、いいことしか言ってくれないからなぁ。

久保:じゃあ、悪い返ししますよ(笑)。

上田:え、何言われても悪い返しする?

久保:絶対にします!

上田:藤谷理子さんは好きですか?

久保:そう来ましたか(笑)。

上田:ははは(笑)。でも本当に藤谷さんと久保さんって、僕の中で演出のアプローチも近いんですよ。何かムチャなお願いをしても、2人共ちゃんとそれをバネにして意地でも応えてくれようとするので。僕にとってはすごくありがたい存在です。

久保:私、何でも楽しみますので! あと理子さん、大好きです!!(笑)

久保史緒里&上田誠インタビュー

PROFILE

●くぼ・しおり…2001年7月14日生まれ。宮城県出身。乃木坂46・3期生。主な出演作に映画「左様なら今晩は」、舞台「桜文」「夜は短し歩けよ乙女」など。現在、大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合ほか)に出演中。また、『乃木坂46のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)のメインパーソナリティーを務めるほか、「Seventeen」専属モデルとしても活躍中。今年3月に行われたWBCの侍ジャパン壮行試合では始球式を務めた。映画「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」が6月30日(金)公開。舞台「天號星」が9月14日(木)より上演。

●うえだ・まこと…1979年11月4日生まれ。京都府出身。ヨーロッパ企画代表で、全ての本公演の脚本と演出を担当。最近の作品に映画「ドロステのはてで僕ら」(原案・脚本)、「前田建設ファンタジー営業部」(脚本)、劇場アニメ「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」(日本語吹き替え版脚本)、「四畳半タイムマシンブルース」(原案・脚本)、ドラマ『魔法のリノベ』(脚本)、舞台「たぶんこれ銀河鉄道の夜」(脚本・演出・作曲)など。

作品情報

映画「リバー、流れないでよ」
映画「リバー、流れないでよ」

2023年 6月23日(金)公開

<STAFF&CAST>
出演:藤谷理子、永野宗典、角田貴志、酒井善史、諏訪雅、石田剛太、中川晴樹、土佐和成、鳥越裕貴、早織、久保史緒里(乃木坂46)(友情出演)、本上まなみ、近藤芳正
原案・脚本:上田誠
監督・編集:山口淳太
主題歌:くるり「Smile」
製作:トリウッド ヨーロッパ企画(Victor Entertainment / SPEEDSTAR RECORDS)

<STORY>
舞台は、京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」。
仲居のミコトは、別館裏の貴船川のほとりに佇んでいたが、やがて仕事へと戻る。
だが2分後、なぜか再び先ほどと同じく貴船川を前にしている。
「・・・・?」
ミコトだけではない、番頭や仲居、料理人、宿泊客たちはみな異変を感じ始めた。
ずっと熱くならない熱燗。なくならない〆の雑炊。永遠に出られない風呂場。自分たちが「ループ」しているのだ。
しかもちょうど2分間!
2分経つと時間が巻き戻り、全員元にいた場所に戻ってしまう。
そして、それぞれの“記憶”だけは引き継がれ、連続している。
そのループから抜け出したい人、とどまりたい人、それぞれの感情は乱れ始め、それに合わせるように雪が降ったりやんだり、貴船の世界線が少しずつバグを起こす。
力を合わせ原因究明に臨む皆を見つつ、ミコトは一人複雑な思いを抱えていた―――。

公式サイト:https://www.europe-kikaku.com/river/
公式Twitter:https://twitter.com/river_europe

●photo/干川修 text/橋本吾郎 hair&make/宇藤梨沙(久保) styling/伊藤舞子(久保) 衣装協力/ánuans、ピッピシック、ココシュニック、エナソルーナ(以上、久保)

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<応募方法>
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<応募締切>
2023年6月30日(金)午後11時59分

※応募規約(https://www.tvlife.jp/present_rules)をご確認いただき、ご同意の上、ご応募ください。